1話 〜生前〜
「嘘でしょ?!また満点?!」
先生のかなり驚いた声が響いた
私、星乃 美春は生まれてから今の高校三年生にになってまだ一度も満点以外を取ったことがない
「えーと、今回の5教科のテストの平均点は158.6点です。全国中の[上レベル]の問題でしたが、少し取れてなさすぎですよ。赤点の人多すぎです」
え?平均そんな低いの?いつもよりはほんのちょっと難しかったかも知れないけど…一応この学校は進学校なんで
「そんな中で星乃 美春さんはまた合計が500点です!!すごいですね!!」
すごいのか、いつも通りなんだけど
みんなの反応からしたらすごいことをしている気分になる
私はテスト勉強もしたことないし、実感ないなぁ
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チャイムがなると親友の真奈が近寄ってきた
「美春、やばくない?私でも368点だったよ、多分美春は学校内で一位確定だね」
真奈はクラスでも上の方の成績だったけど、368点か…難しかったんだな
そこでやっと実感した…が
「一位も取れるほどじゃないって、他にも500点の人がいるかもじゃん」
「いや、ありえないって いたら運動場逆立ちして100週回ってあげる」
本当にいたらどうするのだろう
そういえば、次って体育だっけ?
「真奈、次ってもしかして体育?」
そう聞くとあらかさまに驚いて
「本当だ!!早く着替えないと遅れちゃうよ!」
私たちが着替えて教室から出るとみんなが待っていてくれた
「急がないと遅れますよ、走りましょう」
みんなで走ったがついた頃に隣を見ると誰もいないかった
後ろを見るとはるか彼方にみんなが息を切らして走っている
「美春さん待ってください、早すぎですよ」
「美春ちゃん早すぎ、どうしたらそんな早く走れるのさ」
何も考えずに走っていたけど、もしかしておいて来ちゃった?
とりあえずみんなを待ってから走り出す
「「「急げー間に合うぞー」」」
なんて言いながら走る、私はみんなを置いていかないようにペースを合わせて
ギリギリで授業に間に合ったみたい
『今日は200m走でタイムを取るぞー早さはみんなの前で言うから全力で走れよ!』
え?!本当に?みんなの前で言うとかちょっとひどい
「上位10人だけでいいじゃんセンセー」
真奈が抗議していたが
『みんな平等だ!!さぁ走るぞ』
みんなは嫌々だったが、先生に促され出席番号1番順に走っていった。正直あんまり乗り気じゃないけど
次は私の番、先生の言う通り全力で走らないと!
私が走り終えると辺りがシンッと静まり返っていた
ちょっと静まりかえらないでよ、悪いことした気分になるじゃん
「こんなタイム見たことがない、どうしたらこんなタイム出せるんだ!?」
先生が目を見開いて言っていた。とりあえず今は続きの人のタイムを取るべきだと私は思う
その気持ちが届いたのか次の人のタイムを取り始めた
全ての人が走り終わった。
『では今から順位を発表する
一位 星乃 美春 21.25 これは先生も驚愕したぞ、悪いがあとで職員室に来て欲しい。話があるからな
ニ位 藤井 杏奈 26.49 三位 川上 真奈 26.58 四位 …』
私のタイムを聞いたみんなが私の方を振り返って見てきたけれど、私が一位って何かの間違いだと思う
先生にも呼ばれてしまったし、困ったな
とりあえずあとで、職員室に行かなくては
私はチャイムがなった後、教室に戻って制服に着替えた
着替えが終わったら真奈に職員室に行くと告げて教室を出た
廊下ってなんか冷たいイメージあるよね…あれ?前が真っ暗になって…
バタンッ
■
起きた時にはどうやら病院にいたようだった。
ふと振り向くと真奈たちが心配そうな目でこちらを見て
「目が覚めたの?!よかった!本当に良かった!」
真奈は泣きながら言った。
「わたし、どれくらい寝てたの?」
そう聞くと一週間の間ずっと目を覚まさなかったらしかった。
「どうして泣いているの?わたしが倒れたのって一週間前だよね?」
真奈はより一層泣いて、みんなも暗い表情になった
「ごめんね!!本当にごめんね!!」
■
どうして泣いていたのかすぐにわかった。
あの後医者に余命宣告をされたから。
わたしの余命はあと3日だった。
怒る気力も叫ぶ気力もなかった。ただただ怖くて、最初は理解ができなかった。あんなに元気だったのに、あと3日で死ぬなんてありえないと思った。
少し落ち着いてきた頃に聞いた。
「わたしなんの病気なの?それくらいは教えてくれてもいいでしょ…」
その病気は原因不明だった。なんの病気かさえもわからなかった。心臓の調子から後3日持てば良い方だと言われた。
真奈たちは毎日お見舞いに来てくれた。私は先生にあの時どうして呼ばれたかを聞いた。
世界記録となるほどの足の速さだったので、オリンピックに出るために頑張ってみないかと言う内容だったらしい。『異変に気づいてやれなくてごめんな』と言われたが、私にも気づかなかったため、先生には申し訳ないと思った。
はっきりって本人の自覚もまだ薄い。2日後に死ぬなんて嘘みたいに。
もし、私がずっとこの先も生きていられたらどんな未来が待っていたのだろう。
私のタイムリミットは明後日だ。もしかしたらもっと短くなる可能性もある。
明日みんなが来たら言いたいことがある。
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「先生、学、みんな話があるの」
みんなが緊迫した表情でこちらを見た。
「今までありがとう!!仲良くしてくれたことも、今まで助けてくれたことも…あと少しだけの命だけど、最期まで…精一杯生きたいの!!私の…わがままかもしれないけど…最期はみんなと一緒にいたい…わたし…死ぬのは怖いけど…みんなと一緒にいれば…安心できるから…!」
涙で途切れた切れになってしまったけど、気持ちは伝わったみたいで、頷いてくれた。
「もちろんだよ!最後なんて信じたくないけど。私たちだって美春にたくさんのものをもらったよ!感謝するのは私たちの方だよ!!だから、ありがとう!!」
わたし、まだ死にたくはない。でも、最高の人生を送ることができたと思う。私に未練なんてないよ!
これからの未来がなくなるのは不安だけど、もし次の人生があったのなら、今みたいな人生を送りたいと思う。前向きに生きたい。本当にそう思う
私はその日息を引き取った。
みんな、私な布団にもたれかかりながら寝ていた。
私もみんなも寝ている間にわたしは静かに逝った。