Ⅱ 「今」を救う?
「お待ちしておりました、川越優斗様」
「お、お待ちしておりましたぁ!?」
フルネームで突然見知らぬお姉さんに名前を言われ、さらにはお待ちしておりました。あまりに事態が急に進行するがあまり、川越は状況が呑み込めずにいた。
「申し遅れました。私はあなたの案内役を務めさせていただく、フィルシーです。以後お見知りおきを」
「は、はぁ……」
一方的にスクリーンの女性に自己紹介をされ、反応に困る。
「ん?フィルシー?なんかのゲームかアニメの登場人物か?」
ふと思ったことがポロリと口に出る。川越はにわかではあるが、知人からはアニメ通と呼ばれるぐらいだ。水色の伸ばした髪に、現実で聞かない名前。当然の反応かもしれない。
「んー、まあこれもゲームだと思って気楽に楽しんでくれるといいと思います」
「え、これって、今から何か始まるんですか?」
雲行きが怪しくなる。
「落ち着いたようですし、そろそろ本題に入りましょう」
会話が成り立たない。先行きが不透明すぎる。だが、もしやアニメで見るような世界に飛ばされるのではないかと、川越は不安と若干の期待を寄せて、次の言葉を待った。
「では、今から説明をはじめます。まず、あなたが何故この駅に連れてこられたかというと、無作為に抽出した代表者に選ばれたからなのです」
フィルシーはすまし顔で淡々と説明を始めた。
「代表者?」
「はい、その通りです」
「なんの代表なんです?」
川越は畳みかけるようにフィルシーに迫った。フィルシーは一息つくと、とんでもないことを言い放った。
「あなたの世界の現在を守るためです」
「はぁ!?」
川越は理解に苦しむ。自分の世界の現在?それを守る?自分がその代表者?とにかく訳が分からなかった。
「だから、あなたの世界の現在を守るためです」
川越の理解能力の低さに呆れるかのように、ため息をついて言う。
「自分の世界の現在を守るっていうことは、自分の世界の現在に何か危機が迫ってるってことか?」
半信半疑で聞く。もしそうだとしたならば、とんでもないことになりそうだ。
「まあ、そういうことですね」
聞きたくなかった答えが返ってきた。だが受け入れるしかないと悟った川越は、次の言葉を探す。
「じゃあ、何が迫っているんだ」
「簡単に説明すると、あなたの世界の過去が危機に晒されてて、もしその過去がねじ曲げられてしまったらあなたたちは存在がなくなってしまうの。その時間軸事ね。」
つまりはあれだ。過去が変わると自分たちが生まれてこないから消えてしまう。どこかで聞いたような話だ。
「で、連れてこられた俺にそれを守る義務があるというわけだな?」
「そういうことね」
「でもどうやって救うのさ」
すると、フィルシーは得意そうな顔をする。
「タイムスリップよ」
どうやら、21世紀のうちにタイムスリップできるようだ。






