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プレイヤーが思っているより運営さんは忙しい  作者: 跡野 祭
1章.運営さんの華麗なる日常
3/11

アナザーワールド・オンライン.3


     ◇


 【アナザーワールド・オンライン】の制作室が一室。そこでは現在、緊急会議なるモノが開かれていた。

 薄暗い室内のモニターに映しだされているのは鎧を着込んだ勇敢なる冒険者達が剣を片手にモンスター達と戦っているシーンだ。画面内の冒険者達は一生懸命戦っているのに対して、画面を見ている者達は皆ため息を吐いていたり泣き崩れている者、額に手をあてて沈んでいる者や魂を口から吐き出している者達で溢れかえっていた。


 第三者が見ればこう思うだろう。ここは世紀末かよ、と。


 しばらくして映像が終了し、室内に電気が灯るとマイクを片手に慎也が声を発した。


「ヤバくね? ジャイアントウルフがめっちゃ袋叩きにあってるんだけど」

「こんな一方的になるとは思っていませんでしたね」


 慎也の言葉に優香が返答した。しかしその声に力はなく、放心状態といったところだろう。


「これって東のエリアボスですよね? え? あれ? エリアボスってあんな弱かったですか?」

「言いたいことはよく分かるがプレイヤーにも問題あるだろ。なんだよあの反射神経、ゲームの世界かよ。いや、ゲームの世界だけどさ」

「本当にいるんですね、あんな動きできる人。ゲームの世界だけだと思っていました。あー、これゲームの世界ですか」


 予想以上に心にダメージを負っているのか、頭の悪そうな会話をする二人だがその場で誰もツッコむ者はいなかった。全員思っていることは同じだった。


 何であんな動きができるんだよ。ゲームの世界かよ、と。


 通常、エリアボスはモンスターと戦う『戦闘組』と街で生産に勤しむ『生産組』が一定以上のレベルと街でのクエストをクリアしていないと勝てない仕組みになっている。


 事実、慎也達はエリアボスを作るにあたって状態異常を扱うモンスターや一定ランク以上の武器でないと倒せない。特殊ギミックを解かないとクリアできないなど、運営陣一同性格が悪いと罵られても仕方が無い戦闘システムを容赦なく組み込んだ。それを許可したプロデューサーにも問題があるのだが。


 プロデューサー曰く「全然Ok。むしろもっとやっちゃって。俺達の苦しみをプログラムに組み込んじまおうぜ」と。


 その言葉により一層製作者達はボス作成にのめり込んだ。鬱憤が溜まっていたのだろう、清々しい顔をしてクリアさせない発言をしていたのは運営だけの秘密になっている。


 運営陣の企みは成功し、プレイヤー達はジャイアントウルフの初見殺しの攻撃やハウリングの行動不能ギミックに敗走、撤退を余儀なくされた。その映像を見ていた運営陣一同は歓声を上げて飲み会を開いたのだが、そこで予想外の出来事が起こったのだ。最前線組が撤退した翌日、とある生産プレイヤーが組んだパーティーが戦闘に出掛けたのだ。運営一同この時はまだ笑っていた、ハッハッハ! 生産プレイヤーがエリアボスと戦闘とか流石に無理だろう……無理だよな? と。


 しかし、世の中は因果応報。九本の尾を携えた少女はエリアボスと接戦を繰り広げたのだ。


 リアルタイムで見ていた運営陣一同は声を大にして言った。「何でその攻撃避けれるの?」と。


 あまりの出来事にモンスターのキャラデザをした者や戦闘システムを組んだ者達は今回の映像を見て涙を流しながら嗚咽を漏らしていた。


「優香ちょっといいか?」

「どうしました?」

「あそこにいる奴らめっちゃ泣いてるんだが」

「あの人達はエリアボス担当の皆さんですね……自分達が手掛けたモンスター達を子供のように可愛がってましたから……」

「たしか今冒険者達ってジャイアントウルフの周回してたよな?」

「えーと、現在進行形で冒険者の解析班なる者達によって丸裸にされていってますね」


 優香の言葉に慎也は天を仰いだ。

 ――あいつら容赦なさすぎじゃね?


「言いたいことがある者はいるだろうが取り合えず今回は、『プレイヤーが運営の予想を遥かに超えてくる件について』話し合いたいと思う。といっても大よその目途はついているんだがな」

「奴らですか」


 先ほど涙を流していた一人の女性職員が嗚咽を漏らしながら口を開いた。


「あぁそうだ。一部のプレイヤー達が俺達の予想を超える速度で多数のギミックを解放している。優香あれを出してくれるか」


 慎也の合図に優香は手に持ったリモコンでスクリーンにプレイヤーの顔写真を映し出していく。慎也達が作った"良い方〟の戦犯リスト。所謂、彼らは運営に注目されている一定以上の行動を起こしたプレイヤー達だった。


 そのほとんどが一人の少女を中心に巻き起こっていた。


「こいつらが戦犯ですか?」

「こいつらが私達のウルフちゃんを!」

「ゆるせねぇ――ッ! 」

「攻撃ギミック組み込んで特殊モブとして平原エリアでKILLしてやる!」

「オークをけしかけますか?」


 エリアボス班の皆が仇を見るような目でリストを睨みつける。


「落ち着けお前ら。同じ運営としてお前たちの気持ちはよく分かる」

「なら、報復のチャンスを下さい!」

「あぁ、そこでだ」


 慎也はホワイトボードを回転させる。そこには『第一回イベントについて』と書いてあった。


「今回のイベントは始まりの街の防衛戦にしようと思う」


 慎也の言葉に会議室から感嘆の声が溢れる。


「理由は様々だが防衛戦は『戦闘組』と『生産組』そして『NPC』が協力しないと成り立たないイベントだ。それにVRMMOといったら防衛戦だろう、攻略掲示板にも様々な憶測が飛び交っている」


 スクリーンに掲示板が映し出される。そこでは様々プレイヤーが公式サイトに「Comingsoon」表示されたイベントについてスレットが盛り上がっていた。


「それと期間中は経験値も少し上昇させようと思う」

「それはいい案ですね! 確かにそれだと生産プレイヤー、戦闘プレイヤーともにレベリングに精を出しますね!」

「後はイベントランキングか。上位プレイヤーには報酬を出すか」

「それだと生産プレイヤーから非難の声が上がりませんか?」

「いや、そこは大丈夫だろう。戦闘報酬として生産陣が欲しがるアイテムをドロップさせる。戦闘組には必要ない物として生産組に流れるように手配する」


 VRMMOは皆で楽しく。

 それを第一に考えている慎也は事細かい資料を皆に配布していく。


「イベントモンスターはどうしますか?」

「そこはエリアボスチーム。お前たちに一任する。今回の鬱憤をしっかりイベントモンスターで晴らしてこいッ!」

「――ッ! はいッ!」

「どこまでOKですか?」

「エロいのは無しだ。それ以外はOKだ」

「了解です!」

「いや、ダメでしょう」


 その後、様々な予定が建てられていくなか、慌てた様子で扉が開かれ、一人の職員が駆け込んできた。


「ホノカちゃんがッ! ホノカちゃんがッ!」




「――精霊システムを解放しましたッ!」


 この瞬間、会議室に居た者達の声は重なった。


「「「え? マジで?」」」


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