90話 反対されるわけじゃない…みたい
「さてと、松本さんは最近は落ち着きましたか?」
校長先生が、応接テーブルをはさんで私たち二人の正面に座って質問をしてきた。
「はい。あの時は本当に校長先生にも長谷川先生にもお世話になりました」
「よかった。無事に戻って来られたというので安心しました。あんなことがあってはしばらく休学かもしれないと思ってたのでね」
そう、お母さんを亡くして卒業までの学費などの奨学金などの手続きだけじゃない。珠実園への入園についても保護者や保証人の変更などがあるから、いろいろ手間をかけてしまったはず。
「大丈夫。松本さんが高校生活を楽しく過ごせるためには大人の協力というのが仕事です。進学のための受験も大事ですが、高校生活が灰色の勉強だけではもったいないのですよ」
あれ、なんだかこのフレーズをどこかで、しかも身近に聞いたことがある。
「ところで、この先の事で簡単な話は長谷川先生から聞いていますが、松本さんに不安や異論はありませんか?」
え、ちょっと、いきなり本題ですか? 私にも心の準備ってものが……。
でもね、今日はそれを話しに来たのだし。正直なところ何を言われても仕方ない覚悟は出来ている。
「は、はい」
そうだよね。忘れていた。この面会時間のスケジュールをお願いする時に大まかな経緯は伝えてあると先生は言っていたっけ。
本当ならその時点ですぐに呼び出されて騒動になってしまうことも考えられたのに、何故か逆の展開になっている気がする。
「そうですか。お二人が何か特別な関係にありそうだということは薄々感じていましたが……」
校長先生は、長谷川先生の方に顔を向けて、次の言葉を発したんだ。
「長谷川先生、この松本さんが『あの時の女の子』だったんですね」
「はい。松本花菜さんで間違いありませんでした」
『あの時の女の子』って、どういうこと? 校長先生は私の存在をずっと前から知っていたと言うことなの?
「そうかそうか。本当に良かった。それは話が早いわけだ。無事に彼女に再会できてよかったな」
なんだか話が私の頭を越えたところで進んでいる気がする。先生との事前打ち合わせではこんな展開になるなんて聞いていなかったよ。
「松本さん。種明かしをしますと、この長谷川君は私の高校時代の教え子なんですよ」
あまりの展開の早さと方向に頭がついていけない私。唖然としていたであろう顔に「驚くのも仕方ない」と笑っていた。
「長谷川君が、昔悩んでいたことはあの当時から知っていたからね」
「そ、そうなんですか……。先生の先生だったんですか……えぇっ?」
まさか……、そんなことってありなの!?
こんなところに、私たちの過去を知っている人がいたなんて……。




