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まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!【改稿版】  作者: 小林汐希
24章 校長室での約束
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89話 放課後に校長室って!?




 2学期の期末試験も終わったあとの土曜日。もう他の生徒たちは帰ってしまっていて、学校内は閑散としている昼下がり。


「松本、そろそろ約束していた時間なので行くぞ」


「はい」


 一人、文芸部の部室で待機しているように言われていた私を、長谷川先生が呼びに来てくれた。


「緊張しますか?」


 廊下に出てからは、いつもの約束どおり、他の生徒に気づかれないように言葉が変わる。


「それはそうですよ。本当にやってしまうんですか?」


「大々と公表する必要はありませんが、一応校長先生の耳には入れておいた方がいいと思いませんか?」


「そうですけどぉ……」


 一般の生徒で校長室に入るなんて事が何回あるかなぁ? 校長先生って集会とか全校朝礼とか遠くで見ることがほとんどだし、それこそ個人的に会うなんてことは、よほどのことがなくちゃね。


 それに、これから校長先生の前で話すことを考えると、私の心拍数はさっきから上がりっぱなし。どうして先生は平気なのかな……。


「正直、ここが勝負どころだと思っています。ここを突破しておかないと、安心して松本さんを守れません」


「せ、先生……?」


 今日は何だろう。いつもとは違う迫力。


 それは、これから先のことは無茶苦茶なことだと思う。それを理解してもらえるか……。普通に考えたら余計にことが大きくなって、先生だって無事じゃすまない。


 それとも、何か作戦があるのだろうか……。


 私たち二人は校長室の前に着いて、先生がドアをノックした。


「2年5組担任の長谷川です」


『どうぞ』


「失礼します」


 先生が扉を開けて先に中に入った。


「松本さんも中へ入ってください」


「はい」


 扉を閉めて、応接セットの前に立った私たち。


「ふたりともそんなに緊張しなくていい。松本さんも顔が硬いな」


 仕方ないよ。だってこの先の話題は、どんなに緩く考えたって現役高校生としての限界(ボーダー)ラインを超えていることだと思うもん。


 でも、さっき廊下で話しながら来た時の長谷川先生の緊張感と気迫とは正反対。


 不思議なくらい校長室の中に緊張感がなくて、私の方が拍子抜けてしまっているのもまた事実だったの。


 校長先生は自分で三人分のお茶を淹れてテーブルに置いてくれた。


「長谷川先生も松本さんも、さぁ座って座って。立ったままできる短いお話ではないでしょう?」


「はい。仰るとおりです。松本さんのこれからに関わる大切な内容となります」


「それなら尚更だ。じっくり聞かせてもらいましょう。でも、この様子だと、松本さんには何も伝えていないのでしょう?」


「詳しいことはまだ話していません」


 どういうことなのだろう。


 隣の先生が肯いたのを確認してから、先に座った先生の横に私も腰を下ろした。



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