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まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!【改稿版】  作者: 小林汐希
21章 新しい家を決めよう
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80話 結花先生のお家へ




 今日、二人で向かう先は同じ市内の、あの結花先生のお家だった。


 少し前に、今日の午前中の予定を話したとき、「じゃあ、そのあとに遅めのランチでもどう?」と私たち二人を招待してくれたんだよ。


 そして、そこに結花先生のご主人も同席していただけると。私たちと同じ関係だった大先輩のお二人と話をさせてもらえる。それだけでありがたかった。


 横浜駅でバスを乗り換える。結花先生は毎日彩花ちゃんを連れてこの通勤路を通っているんだ。それにもかかわらず朝早くからいつも笑顔でいてくれる結花先生には改めて尊敬してしまう。


 約束していたとおりにバスを乗り換えたことをメールで知らせると、降りるバス停で待っていてくれるとのこと。


「今度は私たち、どういう二人に見えますかね?」


 小さい頃、お兄ちゃんと一緒にプールや遊園地に行くためにバスや電車にも乗った。


 あの頃は誰が見ても兄妹と見えていただろう。


「そうだな。夏休みの制服の時とは違うのから、いろんな見方が出来るだろうな」


 途中までは二人とも少し緊張していた。理由はそのバスは学校の近くを通るから、誰かに目撃されてしまう可能性があったから。


 まさか私がこんな服を着てバスに乗っているなんて想定外だと思うけれど、用心に越したことはない。


 時間と下りのバスということも幸いして、その心配は杞憂に終わった。


 急行バスに揺られて20分ほどで、言われていた県営団地に着いた。




 バスから降りたところに女の子を連れた結花先生が待っていてくれた。


「こんにちは。お休みのところすみません」


「いらっしゃい。いいのいいの。お腹空いてるでしょ? もうすぐ出来るから。ほら、彩花(あやか)もパパのお手伝いするんでしょ?」


 団地の4階までエレベーターで上る。


 街中の新しい高層マンションとは違って、各棟の間に植栽も多くあって、窓を開ければ自然の風も通る。


「ここは、昔からある団地なんですけど、リノベーションされたときに子育て支援地域に指定されて、すごく住みやすく変わったんですよ」


 お部屋で私たちを迎えてくれたのは、結花先生のご主人の、小島(こじま)陽人(はると)さん。


 今は予備校の講師をされているけど、昔は高校の数学の先生だった経歴を持っているんだって。


「子どもっぽいメニューでごめんなさいね」


 3歳の彩花ちゃんも同じものを食べられるようにと、各自のお皿にはハンバーグ、つけ合わせにフライドポテトとマカロニサラダが載せてある。


 主食にパンかご飯を選んでくださいと言われて、先生がご飯、私がパンをお願いすると、焼きたてのように温かいカンパーニュを何枚もスライスして持ってきてくれた。


「凄いですね、結花先生がみんな作られたんですか?」


「ほら、花菜ちゃんに言ったことなかったっけ? もともと洋食屋さんでアルバイトしていたって。その頃にいろいろ教わったの。花菜ちゃんもこういうの覚えたい?」


「はい!」


 そうか、結花先生がよく珠実園の調理室に入っておやつを作っているのには、こういう腕があるからなんだ。


「まだ腕を上げるつもりなのか?」


「美味しいと言ってもらえるなら、努力は惜しみません」


「ふふふ、すっかり花菜ちゃんの味がお気に入りなんですね」


「料理は絶対にかないません。そこは素直に認めることにしました」



 お腹いっぱいになった彩花ちゃんは、眠そうに目をこすりながら、おままごとのセットが置いてある子ども部屋に行ってしまった。


 いつもそのままお昼寝に入ってしまうと言う。珠実園の保育室でもいつもお昼ごはんのあとはお昼寝だもんね。


「おやすみ彩花ちゃん」


「おやすみなさぁぃ……」


 お人形をかかえて、彩花ちゃんはお布団の上でお昼寝に入ってくれたんだ。


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