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まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!【改稿版】  作者: 小林汐希
20章 ふたりの先生
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76話 先生に恋した大先輩だなんて!




「私のこといろいろ知りたいんでしょ? そうね、私は他の先生たちとは違うところが多いからね」


 結花先生は私の心の中が見えているよう。


 決して意地悪とかではなくて、柔らかい雰囲気に私は自然とうなずいていた。


「そうね……。花菜ちゃん、もう17歳になった?」


「4月3日の誕生日なので、毎年新学期が始まる前に年を取っちゃいます。今は17歳です」


「あ、そうだったかぁ。私は3月生まれだからいつも教室では最後だったの。そう、でも同じ高校2年生の時だった。私ね、病気をしたんだよ」


 早期の卵巣がんだったそうだ。片方を摘出して、学校を休んでの闘病生活。幸い転移や再発はしていないけれど、クラスから孤立してしまい、3年生の1学期で高校を退学したって。


「そんな、結花先生に悪いとこなんか何もないのに!」


「ちゃんと分かってくれる人は、みんなそう言ってくれるよ。でもね、『原田に近づくと病気がうつる』って言われてね。あ、原田っていうのは私の旧姓ね。だから、理由は違っても花菜ちゃんが独りぼっちになった気持ちは、すぐに想像がついたの」


「それで私のことを……?」


「それだけじゃなくってね」


 結花先生は本当に同い年の女の子のように可愛くウインクしたのを、思わず見とれてしまった。



 その当時に、体と心のリハビリを兼ねたお手伝いとしてやってきたのがこの珠実園だったという。あの副園長の茜音先生と結花先生のお母さんが友だちだったというご縁だって。


「そうそう、いつ本題に迫ろうかと思っていたんだけど、花菜ちゃんのことを連絡してくれたり、面談の時に同席してくれたのは学校の先生?」


「はい。担任の長谷川先生です」


「そうかぁ。同じような子、こんなところにもいたんだなぁ」


 結花先生は懐かしそうに私の方を見た。


「その長谷川先生なんだけど、花菜ちゃんには特別な人?」


「えっ?」


 油断したところにズバリと聞かれて思わず顔が赤らむ。これじゃ認めているのと同じだよね。


「気にしない気にしない。その長谷川先生ね、書類を届けてくれたときに花菜ちゃんのことをすごく細かく話してくれたの。あぁ、この先生は花菜ちゃんのことを大切に思っているんだなぁって分かってね」


「あの……、長谷川先生は私が小さかった頃に、いつも遊んでくれていた近所のお兄ちゃんなんです……」


「あ、なるほど! そうかぁ、すごく納得。懐かしいなぁ……」


 結花先生は不思議そうな顔の私に、驚く話をしてくれた。


「私と主人も、同じように生徒と担任の先生という関係だったのよ」


 結花先生と私、どこか似ていると思っていた。


 学校では目立たない存在。それが病気になって、さらにひどい噂を流されて復学できなくなってしまった。そんな中でも、担任の先生と一人の親友だけが励まし続けてくれた。


「幼児教室専門の斉藤(さいとう)千佳(ちか)先生って分かる? ちぃちゃんは私のたった一人の親友なの」


 託児室によくいる千佳先生は、彩花ちゃんのこともよく知っていて、私が時間に彩花ちゃんを迎えに行くとすぐに対応してくれる。そんな関係だったんだ。


「でもね、花菜ちゃんたちと違って、私たちは本当に最初から担任の先生と一生徒という関係でしかなかった。だから一度告白してフラれているの。そういう結果になることはお互いに最初から分かっていてね」


 学校を辞めて、リハビリを兼ねてアルバイトをしていたお店で、結花先生と今のご主人が再会した。


「驚いたよ。私が学校を辞めてから、先生も学校を辞めてしまった。私に責任があるって今でも思ってるよ」


 そこからは、もう一度やり直して気持ちをつなげて、19歳になる直前の春にご結婚をされたんだ。


「本当は誕生日にするって言ってたけれど、アメリカ在留ビザの関係で先に入籍が必要でね。挙式だけ誕生日にしてもらったの」


 元担任の先生と結婚してアメリカでの生活……。スケールが大きすぎる。


「花菜ちゃんの先生との絆、大切にして欲しい。私自身が経験してるもの。先生と恋人関係にある生徒だって、二人が本当に想い合っているのなら、私は応援しちゃうな」


 やっぱり偶然なんかじゃなく、私には結花先生以上にピタリとハマる支援担当者はいなかったんだ。そのくらい凄い人......いや、担任の先生と恋をして成就させた大先輩なんだ。


 おやつを作り終えると、今度時間があるときに私たち二人を結花先生のお家に招待していただけると約束してくれて団らん室に戻っていった。




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