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まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!【改稿版】  作者: 小林汐希
15章 文芸部を選んだ本当の理由
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55話 あの時間が戻ったみたいね




「はぁ、やっぱり体力は無くなったなぁ」


 水をかけあったりビーチボールで遊んで、ボチャンと波打ち際に足を投げ出して座り込む。


「やっぱり体を動かさなくなったからか? でもいろいろ仕事してるじゃんか? 図書館は重いものを持つから重労働だと思うぞ?」


「それはそうなんですけど……。やっぱりお仕事とスポーツじゃ疲れるところが違うみたいです」


 そう、それは切実に思った。いつも本を持ったりして力仕事にはある程度慣れているはずなのに、こうやって疲れがたまるというのとは別みたい。


 高校生になって体力が無くなっているというのが当てはまるのか、それとも違うのか……。


「そうか。あの当時はもっとガンガン動いてたじゃないか?」


「小学生と高校生じゃ、体力の使い方が違うでしょ? 小学生の時って、限界までフルに動いて、電池切れみたいにパタンと寝ちゃうから」


「確かにそういうところあるよな」


 立ち上がろうとしたとき、ふらりと体が傾いて、お兄ちゃんが慌てて腕を捕まえてくれた。


「大丈夫か?」


「ごめん、大丈夫。ありがとう」


「なにか適当に買ってきてあげるから、戻って休んでいなよ」


「うん……」


 売店の方に歩いていったお兄ちゃんを見送って、私は自分の足下を見つめた。





「少し早いけどお昼にしちゃうからな。夕方はお祭りにも行くことになるし」


「うん、ありがとう」


 なんでだろうね。この焼きそばと焼おにぎりのセットで、ジュースもつけてくれている。海の家ならではの、どこにでもあるメニューのはずなのに。こういうところで食べるから美味(おい)しく感じるんだろうね。



 ……本当にあの当時に時間が戻ったみたい。



 夏休みの市民プールで、いつもこうやって二人で遊んで、プールサイドや併設のお店、移動キッチンカーで軽食のお昼を食べてから帰る。特に変わったことはなかったけれど、それが毎年の楽しみだったのを思い出す。


 連れていって欲しくて、夏休みの前半に一生懸命に宿題をやって、毎日の課題も朝早くから取りかかった。


 それが毎年、私たちの夏休みの過ごし方だった。ご褒美はなくなってしまったけれど、課題を最初の方に終わらせてしまうのは今も同じ。


 でも、お兄ちゃんと離れて過ごす事になった中学時代の夏休みは本当につまらなくて……。


 それだからこそ、私は2年生の夏休みを使って『空の色は涙の色』の原稿を書き上げた。


 あの当時は私には暗黒の時代だったから、それをモチーフに書き上げたこともあって、とても生々しかったんだと思う。


 コンクールで優秀賞をとったものの、そのままではさすがに出せないと、何度も校正を重ねて、ようやく発表できるようになったのは3年生になっていたのだから。


 部活の時間だけでなく、家に帰ってから宿題の後にやるのは大変だったよ。でも、それでひとりの寂しさを紛らわせていたのも事実。


 もう二度と、あんな独りだけの時間は過ごしたくない……。


 こうしてお兄ちゃんと昔の記憶をなぞれるようになった今、それが私の心の奥底から叫んでいる気持ちだった……。


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