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まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!【改稿版】  作者: 小林汐希
1章 泣かない約束
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3話 喜んでもらえたら嬉しいもん




「さて、みんなー、紙芝居を始めるよ。今日は何がいいかなぁ……」


 このキッズコーナーは土足禁止にしてあるから、みんなカーペット敷きの床で思い思いの姿勢で待っている。座っている子も寝ころんでいる子もいるけれど、それを注意するつもりはない。



 こんな感じの音読会は以前からも定期的に行われていたけれど、私が来てからは様子を見ながら随時行うことにしていた。



 昨年、お仕事を始めてすぐのこと。


 大人が一つ上の一般書階に行きたくても、子どもたちが騒ぐのが心配で実際には行けないという声を聞いたのがきっかけだった。


 そこで先輩や館長と相談して、親子の名前や携帯電話の連絡先などの規定項目を印刷したメモ用紙を用意した。希望者にはその用紙の記入と、その場で子どもにシールの名札をつけてもらえば、本棚を並べ替えて作ったキッズコーナーに限って未就学児の親子分離を認めてもらうお試しをすることになった。


 新米の一高校生が言い出した企画だけに、誰にも相手にされないかも……。


 恐る恐る始めてみると、そんな心配はどこへやら。子連れのお母さんたちに大当たりした。


 午後のほんの少しの時間だとしても、雑誌を読んだり育児から気分転換ができると喜んで貰えた。


 その取り組みの発案者が私だと知って、今では私が出勤する日を問い合わせる人も多いみたい。


 そんな実績を認めてもらって、最初の年から一人でこのコーナーを任せてもらえるようになった。


 放課後の時間は絵本の読み聞かせをしたり、学校の長期休みには読書感想文や工作本の相談も受けたりするから、こういう固定ファンがついてくれたのも嬉しい。



 この日の午後も、そんな子どもたちを相手に、絵本や紙芝居を読んだり、折り紙をしたりしながら、あっという間に時間は過ぎていった。


「さぁみんな、もう暗くなるから、気を付けて帰ってね」


 平日は午後7時までだけど、今日みたいな土曜日や休日は5時で閉館になる。



「お姉さん、ばいばい」


「はい、またね。さようなら」



 子どもたちが帰った後に、散らばった遊具を消毒したり、本を書棚に戻し掃除をしつつ忘れ物がないかの確認を済ませて事務室に戻った。


「お疲れさまでした。戻りました」


「お疲れさま。いつも花菜ちゃんのコーナーは大人気よね。春休みになるから小さい子どもたち多くて大変でしょう?」


「いいえ、子どもたち大好きですから」


「あのコーナー花菜ちゃんに頼ってばっかりで悪いね。春休み中は本当にお願いしちゃっていいの?」


 シフトを作ってくれるグループのリーダーさんからも声がかかる。


「はい。私が考えたことですから責任は持ちます。春休みだからと特に予定もありません。明日からは朝から入れますし、毎日お世話になるつもりです」


 人気と言ってもらえるけれど、いつも混んでいるわけじゃない。そんなときは自習をしても構わないとお許しをもらっている。


 春休みは年度替わりだから、課題も他の長期休暇に比べれば少ない。その分の時間は復習と予習に回す。


「じゃぁ、明日もまたお願いね」


「はい。お先に失礼します。お疲れさまでした」


 エプロンをロッカーに戻し、制服の上着を羽織った私はスクールバッグを手に図書館を後にした。



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