33話 あんな人に相談に乗ってもらいたいよ
翌日の放課後、私は授業が終わると部活には顔を出さずに職場でもある市立図書館に向かった。
今日は部室に行きたくなかった。昨日と交代した夏紀先輩が今日の受付。きっと長谷川先生は部長である先輩のところに行くだろう。
もしそこで二日連続で顔を合わせてしまったら。ただでさえ緊張している私の頭が持ちこたえられるか分からない。
昨日だけでも、お互いに《《再会》》した相手だとの認識は出来上がっている。
もう少し頭を冷やして、そして今の環境に私が慣れてからでもいいと思う。
どうせ今週は仮入部の期間だから、正式に人数が決まって活動方針が固まるのは来週後半だもの。それまでは交替で受付を担当することになるから、部室に顔を出さなくても大丈夫だ。
そんなことを考えながら、いつものように児童書フロアに向かっていたときだった。
「ゆかせんせー、この本読んでー」
「はい、分かりました。じゃぁ読むから座っててね」
平日の放課後、キッズスペースには若い女の先生とその子どもたちというグループが来ていた。
こういうことは珍しくはない。保育園や幼稚園、地区の児童センターなどがグループで訪れる。登録された市内の施設であれば、最大50冊まで貸し出すことも出来るシステムになっているから。
「あ、お仕事を邪魔しちゃってごめんなさいね」
その先生は本を読み終えると私に気づいて声をかけてくれた。
「い、いえ。大丈夫ですよ。みんな元気なんですね」
「本当はお昼寝の時間なんだけど、みんな行くって言うから連れてきちゃったのよね」
小さい子たちから引っ張りだこになっている先生。胸元の名札には小島結花と書かれていた。
無邪気な子どもたちと一緒になって笑っている結花先生を見ていると、私の悩みなんてバカバカしく見えてしまうのだから不思議なものだ。
あの子たち、みんな結花先生が大好きなんだろう。そして、それを行動で示せるからお互いの信頼関係が成り立っているのではないか。
「さぁ、みんなそろそろ帰らないと、学校に行っていたお兄さんお姉さんが戻ってくるよ。お片付けして帰りますよ」
「はーい」
「お騒がせして申しわけありませんでした」
「いえ、また来てくださいね」
連れてきていた子たちが片づけ終えたのを確認すると、結花先生は子どもたちと一緒に帰っていった。
なんて素敵な女性なんだろう。本当に短い時間見ただけだし、話したのもほんのわずか。
それだけでもベテランの先生だと感じられた。子供たちから先生先生と引っ張りだこになっていても、親のようにちゃんとひとりひとりのことを見ることが出来ていた。
あんな優しい先生になら、私のことも話した上で相談に乗って欲しいと思ってしまう。
また来てくれるかな。私はそんな結花先生にいつかまた会って、お喋りしてみたいと願いながら見送っていた。




