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まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!【改稿版】  作者: 小林汐希
7章 口に出せない呼び名
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29話 学校の中でのもう一つの接点?




 週が明けた月曜日の放課後。松本花菜は前と同じようにすぐに教室を出て行った。



 別に彼女だけを特別に追いかけているつもりはない。


 この週末に前年度からの各自の引き継ぎ資料に目を通しているうちに、このクラスの性格というのが何となく分かってきた。



 事前に言われていたとおり、3組のような体育会系の寄り集めのような特別に何かに秀でているメンバーが揃っているわけではない。


 彼らの名誉のために説明すると、どうしても試合などの都合上、授業に穴が空いてしまう。そのフォローをするためには、事情がわかっているクラスに集めているという合理的な理由からだ。


 5組は平たく言い換えてしまえば、みんな平均的なメンバーだ。これまでどおりに全体の授業をして、波風が起こらなければそれぞれ3年生へと無難な進路をひくことができるだろう。


 それが彼らが本当に望むことなのか。初日にあれだけの話をぶちまけた。あとはクラスの生徒たちが決める話だ。


 松本のプロフィールシートの所で手が止まる。やはり学力の維持は相当裏側で努力をしているのだろう。


 昨年担任だった木原先生からも、「松本さんはよく見てあげてください」と引き継ぎを受けた。そんな事を言われずとも、彼女があの「花菜ちゃん」だと判明した今、シートを見ずとも他のどの生徒よりも彼女のプロフィールは詳しく頭の中に書き出すことができる。


 ただ……、中学生時代の事を除いてはという条件付きだが……。




 今日から放課後は部活動の新入生の仮入部受付になるようで、部活に出る一部の生徒たちの着替えが始まった。



「先生と男子は早く出てってください。女子の着替えになりますから」


「おやおや、着替えは部室でやってくださいね」


 全く現金なものだ。先週までとは扱いが違う。


 苦笑しながら教室を追い出されて職員室に戻ると、すぐに呼び止められた。


「長谷川先生」

「あ、鈴木先生。どうも」


 声をかけてくれたのは、古典を担当してくれているベテランの鈴木先生だ。


「実は長谷川先生にご相談……というかお願いがありまして」


「はい?」


「突然で申し訳ないのですが、文芸部の顧問をお願いできませんかね?」


「は、はい……」


 あまりその後のことは覚えていない。気がつけば鈴木先生の後に続いて図書室に向かっていた。



 司書準備室の扉には、『文芸部にようこそ』という張り紙がしてある。


 扉を開けて、鈴木先生は先に入っていった。



「おや、岡本さんではなかったんですね」


「はい、先輩は急用だそうで、私が代わりです。先輩にご用でしたか?」


「そうでしたか、松本さんでも構わない話です」


 冷静を装いつつ、俺の登場に驚いた顔をしている松本。


 そうだ、松本は文芸部だったか。話の流れとはいえ、無防備で来てしまったと少し後悔する。


「では松本さんに。実は私の家で少々困ったことがおきまして、皆さんとの時間が取れなくなってしまいまして」


 ご家族の介護の関係で常勤講師から非常勤講師になられるということらしい。顧問の担当に特に規定はないが、鈴木先生の性格から生徒に迷惑をかけたくないと、担当を降りられるのが真相だとのこと。


 数ある部活動の中でも、文芸部は最も古株のひとつだから、顧問不在という異常事態は避けたい。そこで白羽の矢が立ったのが、新任で国語科目担当の俺だったというわけだ。


「それでは長谷川先生、あとはお願いしますよ。職員室側の手続きは私が行っておきますので」

「は、はぃ」


 鈴木先生は俺と松本をその場に残して帰って行ってしまった。


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