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まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!【改稿版】  作者: 小林汐希
6章 忘れられない名前
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25話 確かめてみるしかない!




 でも、俺が高校生になって薄々気がついていたことがある。


 彼女を異性として見始めていた自分になっていたことをだ。


 小学生も高学年になってくると、それまでの「女の子」から「少女」への羽化が始まってくる。


 男子よりも女子の方がその変化は着衣の上からでも分かりやすい。


 すらりと伸びた足、くびれが分かるようになってきた細いウエスト、そしてまだ決して大きくはないものの、少しずつ主張を始めた胸元の膨らみ。ヘアスタイルこそ「切りっぱなし」だったけれど、サラサラで艶のある黒髪……。


 これだけの材料を並べただけでも、花菜ちゃんの将来がある程度予想できる。


 もう少し背丈があれば、着ている物によってはもっと年上に見られるだろう。


 このまま彼女をいつまでも独占していたいとも思ったりするようにもなった。




 そしてある夜。俺は夢の中で彼女を抱いてしまった。我に返ってそれが夢だったことに、本当にホッとしたことを冷や汗の感覚と同時に覚えている。



 実の兄妹でないにしても、まだ小学生の彼女に恋心を抱くことは、さすがに年齢差に問題もある。


 この頃には、花菜ちゃんも家事はひとりでできるようになっていたし、思春期が訪れるのは女子の方が早い。


 このままではいつか間違いを起こしてしまうかもしれない。それが怖くてわざと遠くの大学を選んだ。


『お兄ちゃんがいなくなったら、私、寂しいよ』


 彼女に進学先の事を伝え、涙を流しながら抗議してきたときは、本当のことを伝えるか迷った。


『花菜ちゃんが好きで仕方ない。抱きしめてしまいたい。でもこのままじゃ花菜ちゃんを傷つけてしまいそうで怖いんだ……』


 その言葉を飲み込んで、彼女が泣きやむように小指を差し出した。


「休みの日は顔を出すから」

「本当?」

「約束だ」


 高校3年生と小学6年生の約束。普通に考えればその場を凌ぐためのやり取りにしか思われないかもしれない。


 それでも、しばらくして涙を拭った彼女は笑ってくれたんだ。


「お兄ちゃん、楽しみに待ってるからね」

「分かった」


 最初の1年目は約束通り、帰れるときは実家に顔を出した。過ごした時間で考えれば実家よりも彼女と過ごした時間のほうが長かったと思う。


 ところが、俺の実家の転居が決まり、これまでのような時間がなくなってしまうことを二人で悩み抜いた。泣いても仕方がないことだと中学1年の彼女は分かっていた。


「花菜ちゃん。必ず迎えに来る。約束しよう」

「本当に?」

「これまで花菜ちゃんとの約束を破ったことがあるかい?」

「ううん。……。うん、分かった。私待ってる。だから、必ず迎えに来てね?」


 俺自身も、半分はそんな約束が守れるとは思っていなかった。同時に彼女がそれを守ってくれる保障もない。


 仕方ない。彼女とは縁が切れてしまったのだと思うようにしようとした。


 それなのに…………。



 俺の頭の中では、いつも彼女が笑っていた。


 大学で友人も出来たし、その中には女性もいた。友人以上という関係に発展したこともある。でもいつも長続きはしなかった。


『お兄ちゃん、ただいま』


 彼女の笑顔が脳裏に焼き付いている。いつも嬉しそうに隣を歩いてくれている。少し目尻が下がっていて、そのまぶたの下には、どこまでも澄んだ、吸い込まれてしまいそうな黒い瞳は彼女の最大のチャームポイントだ。


「花菜ちゃん……、元気か? 昔のように虐められたりしていないか?」


 一人暮らしの冬、帰ってきたばかりの寒い部屋の中でそれを口に出したとき、ひとつの結論を出すしかないことに辿り着いた。


 再び彼女に会って、あの日の約束がまだ有効なのかを確かめるしかない。


 しかし、単純に会うのではなく、約束どおりに彼女を迎えに行ける自分が成長した姿である必要がある。


 学生同士ではあの当時と変わらない。反対される可能性も大いにある。いや、その方が確率としては高い。


 だから就職もして、きちんと自立した大人になってからにしよう。そこで彼女に判断してもらえばいい。


 彼女が手の届かないところに行ってしまわないか心配しながら、自分の成長を待つ時間。焦る気持ちをグッと抑えての日々を過ごした。


 高校の教員免許をとり、高校時代の恩師と再会した縁で、とんとん拍子にこの学校への採用が決まった。


 これで自分の準備は終わりだ。あとはこの場所で彼女と会う機会を待てばいい。そう思っていた。


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