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まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!【改稿版】  作者: 小林汐希
4章 新しい担任は…えっ!?
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16話 同姓同名…じゃないよね?




 「もしかして……」

 「でも……、そんなことってあるの……?」


 頭の中でそんな自問自答を繰り返しながら体育館に移動する。



「花菜、たった今仕入れた情報! 今年の先生って新任らしいよ?」


「へぇ、そうなんだ?」


 新任……。それならクラス編成で持ち上がった謎の半分は解けた。


 問題は残りの半分。あの黒板の字の主が私の中にある「まさかの答え」と一致するかだ。


「かっこいい先生だったらいいなぁ」


「そうだね……」


 千景ちゃんとの会話も半分上の空になってしまう。


 誰が担任になってもきっと私のポジションは変わらない。今朝の、それもつい数時間前までそう思っていたはずだった。


 いつのまにか始業式が始まって、各教室の担任の発表に移っている。


「えっ……」


『2年5組、長谷川啓太先生。担当は現国です』



 「まさか……」

 「やっぱりそうだった……」


 私の頭の中でこのふたつの言葉がぐるぐると渦を巻いている。

 


 正直なところ気が動転していて、そのあとのことはあまりよく覚えていない。


 周りに流されるように再び教室に戻って、もとの席に座っている私がいた。




 やっぱり、あの春休みに感じたものは気のせいなんかじゃなかった。


 体育館では顔がよく見えなかったから、人違いとか同姓同名という可能性もある。


 でも……、あの春休みの日、あれだけ遠距離から、しかも後ろ姿だけで人を特定できるのは、心の波長で感じ取ったという方が自然なものになりそう。


 もちろん、もう会えないと思っていたお兄ちゃんだとしたら、また会えることが嬉しいというのは間違いない。


 別れの日に言ってくれた「迎えに来てくれる」という言葉も、私が泣きやむように言ってくれたのだったとずっと思っていた。


 それでも、「もしかして」と「やはり無理かもしれない」の結論を先延ばしにして、心のどこかで温め続けた3年半だった。





 中学時代も、高校生になった去年も結局一人ともお付き合いをしたことはなかった。つまり私の恋愛経験値はゼロと等しい。


 まわりでは同級生や先輩とデートなんて至極普通にありふれている話題だったのに。


 周囲の話題の中にはファーストキスの感想とか、デートスポットの話題。中には初めての経験なんて気の早い話題の子もいたけれど、初恋すらない私はそのどれにもついていこうとは思わなかった。


『松本さんは純情だなぁ』


『そう見えますか?』


『でも、そんな松本さんが好きになる人って幸せだと思う』


『そうそう、松本さんなら一途な大恋愛になるよ、きっと!』


 高1でその事を知った周囲から何度も言われて、寂しいとか馬鹿にされているようで悔しくなかったかと問われれば違ったと思う。


『私、そういう感覚が分からなくて。でも焦るつもりはありません』


『さすが松本さん。これじゃ男子も牽制しあいだね』


 表向きにこう答えるのがやっと。そこに返ってくるコメントであまりに酷い物言いには千景ちゃんが見張り役としていてくれたし、交際をしていく相手として「誰でもいい」とは絶対に思わなかったよ……。




 その正反対。「誰でも良くない」人が突然私の前に戻ってきた。


「もぉ……、どういう顔をしたらいいの……?」


 昔と同じ関係での再会なら悩むことはない。


 よりによって担任の先生と生徒ってことは、一番困るパターンなのに……。





 そもそも私とお兄ちゃんの気持ちはどうなんだろう。もしあの日の約束がまだ有効なら本当に嬉しい。


 でもきっとそれは難しい。先生に恋をしてしまう生徒、そんな話題はこれまでにも何度か聞いたことがあったけれど、例外なく断られたって後日談ばかりだったし。


 もしその理由が昔からの知り合いだったということだとしても、許されることなの? 隠しておいたっていつかは明るみに出てしまうと思う。そんなことになればお互いに学校に居づらくなってしまうだろうし……。


 並べ始めてしまうと、ネガティブなことばかりだ。


 無常にもチャイムが鳴って、とうとう最初のホームルームの時間が来てしまった。



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