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まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!【改稿版】  作者: 小林汐希
2章 絵本作者は目立たない文学少女
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9話 春休みの朝に感じた直感




「うーん! ……でも眠いかぁ……」


 学校が春休みに入った初日。

 

 職場でもある図書館への道は穏やかな春の日差しを受けている。


 授業はないから、いつもの「通学路に制服を着た生徒たちがいっぱい」という場面ではないところが違う。


 学校の校庭では運動部が各々の場所を陣取りして練習に入っているし、開け放した音楽室の窓からは楽器の音が聞こえてくる。


 そう言えば、今年の春は部活の応援に行くこともないから平和なものだと吹奏楽部のクラスメイトが言っていたのを思い出す。


「ふわぁ……」


 今日は1日中ずっと背伸びとかを繰り返して眠気を振り払っていなくちゃだめかな。


 ただでさえ、私の担当するキッズコーナーは小さな子たちが風邪をひいたりしないように館内空調だけでなくホットカーペットも敷かれている。


 あのぽかぽかに調整された中で居眠りしないようにするには、いろいろと工夫しなきゃならないだろうな……。


 そもそも、昨日の夜に原稿用紙に向かいすぎていて、気がついたら日をまたいでいたというのが今朝の失敗談の主な原因だから。


 自業自得と言えばそれまでの話なんだけど、まさか職場で大原なのはの正体とその醜態をさらすわけにはいかないし……。


 まだ出勤時間までは少しだけ余裕がある。


 眠気を振り払うために深呼吸を繰り返しながら、両腕を大きく振って、いつもの車道脇の歩道ではなく、川沿いの遊歩道に降りていく。


 この遊歩道は、岸から川の中に立ててあるフェンスまでの間は飛び石があったりと小さな子どもたちでも遊べる深さに調整されていて、夏休みは街中でありながら水遊びをする家族連れにも大人気の場所。


 私も小学生までは、この水場に何度も連れてきてもらった思い出もたくさんある。


 家から徒歩圏内という場所だから、中学生になってからは気持ちが荒んだときなどに落ち着かせるために使うことも多くなったっけ。



 そんな水辺の遊歩道から元の歩道に上がりながら上を見上げると、既に花を咲かせている桜の枝が目に入った。でもよく見るとまだ花芽はたくさん残っているようだ。


 この分なら、なんとか入学式の頃まで持ちそうかな……。


 4月初旬生まれの私には、桜の開花というのは毎年楽しみにしている季節の変化のひとつで、毎年自分勝手に開花予想を立てている。最も、最近は桜も早咲きが進んで卒業式のイメージが強くなってきたのだけど、今年は少し遅れているみたい。



 部活の子たちがみんな校内に入り終わって静かになっている高校の正門前を通ったとき、職員用の玄関前に何人かの人影が見えた。


 春休みだからといって、学校の先生たちは私たち学生と違って休んでいるわけではない。


 新年度の準備もあるだろうし、終業式の時に年度いっぱいで辞められる先生も挨拶をされていたから、逆にその空いた不足分を埋めるために転勤されてきた先生もいるはず。



 それでもなぜか気になったのは、その人影の中にどこか見覚えがある後ろ姿があったような……。


 なぜ気づいたと言われても、「直感です!」としか答えられない。


 立ち止まって戻ったときには、すぐに中に入ってしまっていて、もう一度見直して確認することは出来なかった。後ろ姿と言ったって、一瞬のことだから顔も見えたわけじゃないけれど、初めて会った人ではないように感じた。


「いけない、時間時間!」


 新しく着任された先生なら、新学年の始業式になればすぐに分かるだろうしね。


 その結果がまさかの展開となって、ましてや新学期の初日から私の人生が大きく変わることになるなんて……。


 その時の私には、まだなにも知らない平凡な春休みの朝の一瞬だった。



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