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第一章 第六話

「それで?魔法使いなら掲示板で募集いっぱいあるのに、なんで俺らのパーティに入りたいの?」

言ってて思ったけど、なんか面接官みたいだな。

いや、実際パーティに入れるかどうかの面接か。

入れる気はないんだけど。

カミラは言い淀んでいたが、やがてあきらめたように話し出した。

「実は私は吸血鬼なんです・・・。」

吸血鬼だって?

吸血鬼と言えばファンタジーではかなりメジャーなモンスターだ。

不死者の王で非常に強く、人間の血を食料とする。

弱点は作品によって違い、日光、ニンニク、流れる水、十字架あたりがメジャーかな。

この世界の場合はモンスターじゃなくて、魔族という亜人の一種らしいが。

「吸血鬼は人間を眷属にして、一人前と認められるのだけど、ずっと誰も眷属にできなくて。それで、痺れを切らした親に追い出されて・・・。仕方なく、色んな冒険者に私がパーティに入ってあげるから、眷属になってってお願いしたんだけど・・・。」

誰もなってくれなかったわけか。

既に大半の冒険者に断られて、俺らしかいないんだろうな。

「眷属になるとどうなるの?」

「毎日私に血を捧げるのと、私の為に働く権利をあげる!」

いらねぇ!

そりゃあ誰もならないだろ!

「じゃあ、これからも頑張って眷属とやらを探してね。」

俺は席を立つが、逃がさないとまたもや足にしがみついてくる。

「待って!もう大半の人には話しかけたの!もう、あなたたちしか居ないの!」

ちっ。

「ご主人様なんとかならないですか?」

何故かウルファもカミラの味方になっている。

ウルファとしては一人の寂しさを知っているからだが、マモルはそのことを知らない。

だが、少なくとも何かしら思うところがあったのはわかるので邪険にもできない。

「本当に一応眷属というだけで良いんで・・・。血もほんの少しで良いんで・・・。」

はぁ・・・。

なんかもう哀れになってきたんだが。

「わかったわかった。眷属になれば良いんだろ。ただし、血は本当に少しだけだぞ。」

その言葉にカミラがなんか泣くのと笑うのを同時にしてものすごい顔になっていた。

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

「もし、無理やり大量に血を吸おうとしたりしたら、パーティから追い出すからな。」

「大丈夫!魔族にとって契約は絶対です!それじゃあ、本当に良いんですね!?今更嘘とか無しですよ!」

今まで一体どれだけ契約失敗してきたのだろう。

ものすごい念押ししてくる。

「良いから何かするなら早くしてくれ。あんまりしつこいとやっぱり止めるぞ。」

この時、契約のやり方を聞いておけば良かったと、後悔することになる。

「わ、わかった。それじゃあ、ちょっとしゃがんでほしい。」

言われるままにしゃがむ俺に、カミラがテテテと小走りで近づいてきた。

そして、しゃがんでる俺の肩に手を置き・・・。

チュッとキスをしてきた。

「「!?」」

俺とウルファの時が止まる。

カミラが口を離す。

ほんの数秒程度のキスだったはずなのに、まるで何時間もキスをしていた気がする。

「これで契約完了だ。今日からお前は私の眷属だぞ!」

まるで、花が開いたような笑顔を見せるカミラ。

だが、俺とウルファの時は止まったままだった。

その後、少し時間が経過してからまず最初に復活したのは、ウルファだった。

俺が意識を取り戻した時、カミラはウルファに怒られていた。

どうやらウルファは俺にキスしたことに対して怒っていて、カミラがずっと謝っているようだ。

というかなぜウルファが怒る。

「俺は気にしてないから、いい加減許してやれ。」

「うー・・・。わかったのです・・・。」

まだわだかまりはあるだろうけど、ウルファは優しいから大丈夫だろう。

俺もあまりのことでフリーズしたけど、契約に必要だったというのだから仕方ない。

俺が契約の仕方をちゃんと聞かなかったのも原因だしな。

とりあえず、こんな場所でキスしたせいで回りの目が痛いし、早くクエストに行こう・・・。

カミラが入ったし、ウッドマンなんて楽勝だろう・・・。

「ご主人様の唇は私の物なのに・・・。」

待て、お前のじゃない。


「びえええええええん!!!」

カミラが泣く。

そんなカミラを俺は小脇に抱え、ウルファの後ろを全速力で走る。

さらにその後ろを熊のようなモンスターが追ってくる。

これも全部カミラのせいだ。

10分ほど前、ウッドマンを倒す為に、俺らは森の中に入った。

そして、少し歩き回ったら、ウッドマンを発見。

ウッドマンは木の幹に手足が生えたモンスターだった。

顔と思われる部分は丸い目と、笑ったような形で穴が開いている。

なんかちょっとかわいい。

しかし、かわいくても今回はこいつを倒しに来たんだ。

俺たちはそれぞれ武器を構える。

そして、戦闘を開始するまでは良かったんだがなぁ・・・。

カミラが魔法の詠唱を始めると、声に反応したウッドマンがこちらに向かってきた。

詠唱を妨害させない為に、俺とウルファが前に出る。

「はああああ!」

こいつは確か物理攻撃への耐性があると、ステラさんが言っていた。

剣で攻撃してみると、ウッドマンがその腕で防御してきた。

軽く切断できるだろうと思ったが、その太い腕を斬り落とすことができずに剣が止まる。

「なっ!?」

焦って剣を抜こうとするが、抜けない!

当たり前だが、普通の太い木をロングソードで斬るだけでもかなり困難だ。

なのにこの腕は物理耐性まで持っている。

なるほど。

これはステラさんが俺とウルファだけで討伐行くのを止めるわけだ。

そして、その隙をウッドマンは反対側の腕で攻撃してくる。

仕方ないので、剣を手放して回避する。

だが、これでは武器なしでウッドマンと戦わなければならない。

「【スティール】!!」

そう思っていたら、ウルファが盗賊のスキルを発動する。

【スティール】は相手の物を奪うスキルだ。

己の身一つで戦うモンスターにはなんの効果もないスキルだが、ゴブリンとかオークのように武器や防具を装備しているモンスターに使うと効果的だ。

スキルの発動に成功したウルファの手には、しっかりと俺の剣が握られている。

そして、素早く俺の横に移動すると剣を渡してくれた。

本当にウルファは有能な子だ・・・。

さて、俺もやられっぱなしっていうのは気に入らない。

ここは俺も習得したスキルを披露しようではないか。

「【飛燕】!!」

先ほど斬ったところを狙ってスキルを発動する。

これは近~中距離用のスキルで斬撃を飛ばすことができる技だ。

敵から距離が離れれば離れるほど、威力が減少するので、遠距離では使えないが、それでも離れたところを攻撃できるのは便利だということで習得した。

見事狙ったところに当たり、ウッドマンの腕が斬りおとされる。

「詠唱が終わったわ!」

その声を聞いた瞬間、俺とウルファはウッドマンからさらに距離を取る。

「【イグニッション】!!!」

杖をウッドマンに突き付け、呪文の名前を高らかに叫ぶ。

おぉ、すごい格好良い・・・。

そう思った瞬間、俺は爆風で吹っ飛んだ。

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