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第一章 第五話

部屋に戻るとご主人様はすぐ寝てしまった。

今日は初めてクエストを受けて、初めてモンスターを倒して、初めて報酬をもらってと初めてだらけだったので疲れたのだろう。

ぐっすり眠っている。

もちろん私も走りまわってくたくただ。

だが、それ以上にご主人様と一緒に狩りができた。

その事実がウルファを高揚させる。

ウルファは狼の姿になって、ご主人様と同じベッドに入る。

ご主人様は私を別のベッドで寝るように、何度も何度も言ってきたが、絶対に一緒のベッドじゃないと嫌だと言っているうちにあきらめてくれたようだ。

寝ているご主人様の顔をペロペロ舐める。

「うぅーん・・・。」

その声に反応して、ピタッと舐めるのを止める。

もしかして起こしちゃっただろうか?

そう思ったが、ご主人様はすぐに寝息を立て始めたので安堵の息を吐く。

ご主人様の腕と身体の隙間に身体をねじ込み、私も横になる。

だが寝るのは怖い。

もし、朝起きたら、ご主人様が居なくなっているかもしれない。

そう考えると怖かった。

私はとある金持ちが道楽で飼っていた狼の子供。

私の両親も私以外の子供も白くないのに、何故か私だけ白い毛で生まれた。

それを気味悪がった飼い主が、寝ている私をダンボールに入れて捨てた。

ダンボールから脱出し、右も左もわからず、フラフラと歩き回っていた。

いつの間にか道路に出ていた私に気づかず、車が突っ込んできた。

あぁ、ここで死ぬんだ・・・と思っていたら、ご主人様が助けてくれようとした。

結果的には私を助けることはできなかったが、そんな優しい人が私と一緒に死ぬなんてひどすぎると思った私は、女神様にせめてご主人様だけは助けてほしいと懇願した。

女神様は快諾してくれて、日本は無理だけど、別の世界ならなんとかしてくれると言ってくれた。

「あなたも一緒に行ってらっしゃい。」

「一緒に?でも、私は・・・。」

「大丈夫。」

泣きそうな私をギュッと抱きしめて、女神様は言う。

「心配しないで、彼なら大丈夫よ。女神の私が保証してあげるから。」

女神様が頭を撫でてくれる。

「彼も確かに不幸かもしれないけど、生まれてすぐ捨てられて死んでしまったあなたは、もっと不幸なのよ。それに彼だけでも助けてほしいと願う優しさもある。だから、そんなあなたも幸せになるべきだと私は思うわ。」

私はその言葉にわんわんと泣いた。

私が泣きやんだ後、女神様はご主人様を蘇生した。

その後、ご主人様と女神様が色々お話をしていた。

話を聞いていると異世界ではモンスターというものが居て、ご主人様はそれが危険だと思っているらしい。

それならと、私は女神様にそのモンスターと戦えるようにしてほしいと頼むことにした。

助けようとしてくれたご主人様を今度は私が助けるのだ。

女神様はそれも了承してくれる。

そうして私は人の身体を手に入れて、異世界へ旅立った。

女神様が保証してくれたとしても、やっぱり捨てられるのではないかと怖い。

だから私はご主人様の為に働く。

今日も必死でフェアリーを倒した。

どれくらい頑張れば、ご主人様に捨てられないようになるのだろうか?

そんなことを考えながら、ウルファは眠気に負けて夢の世界へ誘われた。


数日後、俺とウルファは掲示板を見ながら、どのクエストにいくか相談していた。

ずっとフェアリーというわけにもいかないし、そろそろ別のモンスターとも戦ってみようとなったのだ。

「あ、これなんてどうなのです?」

「どれどれ?」

ウッドマン三匹の討伐。

三匹なのに報酬はフェアリーより多い、3万ガル。

逆に言えばそれだけ強いということかもしれないので、ステラさんに聞いてみる。

「うーん・・・。このモンスターはやめておいた方が良いですかね。」

「そんなに強いんですか?」

ウッドマンとは、どうやら身体が木でできた鈍重なモンスターらしい。

力が結構強く、攻撃を食らわないように注意が必要とのこと。

「問題は、物理攻撃への耐性が高いんですよ。」

俺もウルファも魔法は使えないので、ウッドマンと戦うのは非常に困難だ。

「解決策としては、マモル様が魔法を覚えるのが一つ目。」

これは現状できないので却下だ。

いくつか戦士用のスキルを取得したので、今攻撃魔法を覚えるスキルポイントがない。

それに魔法に関するスキルをいくつか覚えると、そのうち魔法戦士にジョブチェンジされるらしいのだが、それまで魔法の攻撃力はかなり低いという問題もある。

「魔道具を使うことのが二つ目。」

これも現実的ではなく、魔道具は使い捨てなのにかなり高価で、なりたての冒険者が購入するのは難しい。

そもそも、ウッドマン相手に使うと大赤字だ。

「最後は魔法を使える人を仲間にするですかね。」

これが一番現実的だが、正直仲間はまだ良いかなーと思うんだよね。

ウッドマンの報酬は3万ガル。

わざわざ仲間を増やして討伐しても、三人で分割すると一人1万ガルとフェアリー討伐と一緒なのだ。

だから、別のクエストを探すことにしようとしたところで、一人話しかけてきた。

「聞いたわよ!魔法使いを探しているんですって?私が仲間になってあげるわ!」

そう言って話しかけてきた人は、小さな女の子だった。


「えっと・・・君は?」

本当に冒険者なのだろうか?

少し暗めの金髪を赤いリボンでツインテールにしていて、目は血のように赤い。

黒いドレスのようなローブを羽織っている身長130cmぐらいしかないというかなり小さな女の子だ。

魔法使いというだけあって、手には木の杖を持っている。

「私の名前はカミラ。魔法使いよ。ウッドマンの討伐に行くんでしょ?なら、魔法使いである私が居れば余裕よ。あなたたちは私が呪文の詠唱をしている間、守ってくれるだけでいいわ。」

ふふん!と言った感じでカミラがポーズをとる。

ウルファがどうするんですか?という目でこちらを見ている。

どうするって言われても、断る以外の選択肢が思いつかない。

そもそもこのギルド内には仲間募集用の掲示板があるのだ。

冒険者は戦士や格闘家など前衛の人が多く、様々なランクで魔法使いや僧侶の募集がされている。

わざわざ俺らの会話を盗み聞きして、パーティに入ろうとする必要は全くない。

なんかものすごく怪しいし、ここは逃げるべきだろう。

「いや、やっぱりウッドマンはやめようとなってるんで、大丈夫ですよ。それじゃあ。」

俺は笑顔で片手をあげ、さっさと逃げようとする。

だが、カミラと名乗った女の子は、そんな俺の足にまるでアメフトのタックルのようにしがみついてくる。

半泣きになりながらも、カミラはこちらにお願いしてきた。

「お願いします!お願いします!私をパーティに入れてください!入れてくれたら荷物持ちだってしますし、冒険終わった後にはマッサージだってします!さらに今ならサービスでエロいことだってオッケーです!なんでもするから、お願いします~~~~~~!!!!!!」

その言葉を聞いて、ギルド内の冒険者たちがこちらを見ながらひそひそと話し出す。

「わ、わかった!とりあえず、一旦話を聞こう!だから、手を離せ!」

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