第二章 第四話
「うぅ・・・腰が痛い。」
昨日はウルファとカミラに散々絞れられた結果、腰が痛い。
だが、カミラとウルファは俺から体力を奪ったかのようにものすごい元気だ。
カンッカンッカンッ!
え?またこの音?
今日もまた、入り口のドアが開いてレイカさんが中に入ってくるなり叫ぶ。
「昨日に引き続き、今日もまたモンスターの大群が攻めてきました!今回はオーガやゴブリンやオークの上位種も確認されています!ランクが低い冒険者の方はオーガなどには絶対に手を出さないでください!」
まじか!?
稀にしか起こらないことが二日連続で起こる。
これは完全に異常事態だ。
ギルド内の他の冒険者たちもその異常にざわめきだす。
だが、そうだとしても行かないわけにもいかないので、数多の冒険者が街から少し離れたところで集まり防衛線を築く。
昨日はオークとゴブリンと弱いモンスターしか居なかったため、そこまで苦労することはなかったが、今回はオーガなどがいる為、そうはいかない。
バリケードなどもしっかりと準備する。
オーガとはランクCの人型のモンスターで、体表は緑。
棍棒などを手に持ち、その腕で振り回される攻撃は岩をも砕く。
この街の最高ランクはBランクだ。
他にも大量にモンスターがいる現状だとBランクの冒険者では手に余る。
そこで今回はB、Cランクの冒険者で一気にオーガを攻撃し、邪魔をする周りの雑魚を駆逐するという作戦に出た。
それでも全くケガ人が出ないというわけにはいかない。
倒れた冒険者は他の冒険者が無理やり引きずって戻して、回復魔法をかけることでなんとか今のところ死者が出ていない。
俺たちはゴブリンやオークをガンガン倒す。
ウンディーネならオーガを倒すことは可能だろうが、ウンディーネは召喚主であるカミラからあまり離れることができないという弱点がある。
俺やウルファではオーガからカミラを守り切れないので、雑魚の殲滅メインとしている。
「ウルファ大丈夫か!?」
例え弱いゴブリンやオークだろうが、何匹も戦っていると疲れで集中力が途切れ、その隙をモンスターにつかれて少しずつ傷が増えていく。
「大丈夫です!」
カミラは無傷だが、長時間大量の魔力を消費しているので同じく疲れがたまっている。
それでも問題はないだろう。
少しずつ相手の数が減っていき、こちらが優勢となる。
このまま押し切れそうだ。
だが、事態は急変する。
「うへへへ。死ねやああああ!!!」
いきなり他の冒険者が笑いながら俺たちに斬りかかってきた。
「何をするんだ!」
剣を受け止め、はじき返す。
他の場所でもそれは起こったらしく、他の冒険者の間にも衝撃が走る。
「これはやばい!まともなやつは一旦撤退しろ!」
冒険者の一人が叫ぶ。
その声に反応した俺らは、一気にバリケードの後ろに撤退する。
頭がおかしくなった冒険者はまるでゾンビのように歩いて追ってくるが、その足は遅いので逃げ切れた。
大人数の魔法使いが魔法【ファイアウォール】で火の壁を張り、モンスターを近づけないように時間稼ぎをしている。
「あれは一体なんです?」
俺は他の冒険者に聞いてみる。
「あれは【魅了】の状態異常だ。だが、問題はオーガとかが【魅了】の状態にしてこれるはずがないんだ。しかもあれだけ大量にだ。おそらく・・・サキュバスがいるな。」
サキュバスといえば、淫魔とも呼ばれる魅力的な女性の姿をした魔族だ。
サキュバスの食事は人間の精気であり、人間を襲ってキスなどの粘膜接触をすることで吸収することができる。
「サキュバスだって?サキュバスたちが人間を襲うわけが・・・。」
同じ魔族だから知っているのだろう。
カミラがつぶやく。
「どうします?いつまでも【ファイアウォール】だけで防衛できるわけではないでしょう?」
操られているからと言って、殺すわけにはいかない。
今も弓矢や魔法での攻撃を防ぐために冒険者が最前線に立ち、【ファイアウォール】が消えるのを待っている。
魔法である以上、いつまでも【ファイアウォール】を維持することはできない。
「まずはあの冒険者たちをどうにかしないとどうにもならんな。」
「それなら私が何とかしよう!」
カミラが自信満々に前に出る。