第二章 第三話
落ち着け・・・素数を数えるんだ!
1・・・2・・・3・・・5・・・。
あれ?1って素数に含めないんだっけ?
混乱している俺の首筋を、ウルファがペロっと舐める。
「うひゃあっ!」
変な声が出てしまった。
恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
「ご主人様・・・かわいい・・・。」
ウルファが舐めるたびに、まるで身体に電気が流れるようだ。
ずっとそうしていたい衝動に駆られる。
だが、そういうわけにもいかないので、ウルファの肩を押して俺から引き剥がす。
「ウルファ。こういうのは好きな人とだな。」
「私はご主人様のこと大好きだから、何も問題ないのです。」
ウルファの目が潤んでいて、よりこちらの劣情を誘う。
「そ、そうだとしても段階をだな・・・。」
「それならご主人様が絶対に生きていられるのはいつまでですか?」
ウルファが質問をしてくる。
「それは・・・。」
「今日だってモンスターに襲われて大ケガをしている人が何人も居ました。」
今回襲来したのはゴブリンとオークの大群、普通と違って一度に何匹も同時に戦わないといけない。
俺らはウンディーネが大半倒したから問題なかったが、ランクの低い冒険者の何人かは後ろからオークの槍に刺されたりして大ケガを負った。
あれがもっと強いモンスターだったら、当たり所が悪かったら死んでいただろう。
もし、オーガとかが混じっていれば、ウンディーネだけでは抑えきれなくてケガ・・・最悪死んだかもしれない。
俺たちは冒険者だからいつ死んでもおかしくない。
自分たちより強いモンスターと戦ったら、弱いモンスターでも油断したら、それどころかちょっと運が悪かったら、何かの事故で死んでしまうかもしれない。
「だから、万が一にでも死んでしまう前に、私をご主人様のモノにしてほしいのです。」
そう言って、ウルファは俺の顔に顔を近づけてくる。
「ダメー!!!」
「ひゃう!」
ウルファが誰かに突き飛ばされて、俺の上から落ちる。
完全に意識がお互いに向かっていたから気づかなかったが、一体誰が・・・?
上半身を起こして見てみると、そこにはいつの間にか目覚めたカミラが居た。
「うー・・・!!」
カミラが涙目で唸っている。
「何するのです!」
突き飛ばされたウルファが起き上がって、抗議する。
「眷属は私の眷属なんだから!」
カミラがまるで探偵が誰が犯人か宣告する時のように、指をビシッとウルファに向ける。
「違うのです!ご主人様は私のご主人様なのです!」
ウルファとカミラが喧嘩をし始めるのを見て、俺はため息をつく。
「こら!喧嘩を止めろ!」
俺はウルファとカミラの頭にズビシッとチョップをする。
ウルファとカミラが頭を抑えて、うずくまる。
やれやれ。
俺はウルファをギュッと抱きしめる。
「大丈夫だ。俺は死なないよ。女神様によると、俺とウルファの身体はかなり丈夫にしてくれてるらしいし。」
「ご主人様。でも、何か嫌な予感がするのです。」
ウルファが不吉なことを言う。
「えいっ。」
そのまま俺はウルファをベッドの上にぽいっと投げる。
さらにカミラもお姫様抱っこで持ち上げてベッドに入る。
「大丈夫だから、安心しろ。疲れたんだから、今日はもう寝るぞ。」
そういっていつものように俺が二人に挟まれた状態になる。
なんだかんだで、俺はこの二人が気に入っている。
この二人を守るためにも、俺は死ねないな。
「なぁ、ウルファ。ここは二人同時にというのはどうだろうか?」
カミラがガシッと俺の腕を掴む。
「それは良い考えなのです。」
反対側の腕をウルファがガシッと掴む。
あのー・・・。
ウルファとカミラが何度も俺にキスをしてくる。
ちょっと待って!
二人がかりで襲われたら全く抵抗できないから!