幕間
「パンですか?」
ウルファが首をかしげる。
今日はウルファの腕のこともあるし、依頼はお休みだ。
そう伝えるとカミラは服が欲しいと出かけた。
ウルファは俺の傍から離れず、俺のしていることをボーっと見ている。
始めは楽しい異世界生活も、慣れるとやっぱり不満点が出てくるものだ。
その一つが、非常に硬いパンだ。
お風呂などでわかるように、この世界の文化は日本に比べると、かなり劣っていて、イメージとしてはかなり昔の西洋文化だ。。
それは食文化にも及んでおり、肉は大抵多少調味料で味付けして焼いただけ、パンはスープに浸さないと硬くてかなり食べづらいなど問題が多い。
最初は異世界の料理と楽しんでいたのだが、日本で生きてきた俺としては、毎日となるとかなり耐え難い。
そこでまず、毎日食べるパンをどうにしかしようかと考えたのだ。
その為、異世界の市場で色々探してみたのだが、興味深いことに砂糖など、日本と名前が変わらない物が結構あった。
名前を見て何なのかわからない果物や、野菜もいっぱいあったが。
一応、今の時代は男でも料理をするものだと親に色々仕込まれたので、簡単な料理ぐらいなら作ることができる。
今回は硬いパンへの対策としてフレンチトーストを作ってみることにした。
場所はアリステラさんに頼んで、宿の食堂を借りた。
俺は卵と牛乳を混ぜる。
ハンドミキサーなんてあるわけないので、泡だて器で混ぜる。
むしろ、泡だて器はあるのかと思わなくもないが、あるんだから仕方ない。
その混ぜたものにパンを浸して染み込ませ、フライパンに油をひいて焼く。
良い匂いがしてきたところで、ウルファが興味を持ったようで、こちらを尻尾をブンブン振りながら、こちらを見ている。
最後にバター加えて・・・焼きあがったものを皿に移す。
半分に切って、片方に蜂蜜、もう片方にバターを塗り、さらにそれらを半分ずつにする。
ウルファの目線が、フレンチトーストから離れない。
尻尾の振りもさっきより速い。
「とりあえずお試しで簡単にフレンチトーストを作ってみた。蜂蜜とバターのを一人一個ずつね。」
その言葉で待てを解除された犬のように、ウルファはすぐにフレンチトーストにかぶりつく。
「ご主人様おいしいのです!」
ウルファは満面の笑みだ。
こうも喜ばれると、作った甲斐があったって感じだな。
俺はウルファの頭を撫でながら、のんびりとした時間を過ごした。
なお、カミラの分を忘れていた為、後で散々怒られたのであった。