第一章 第十二話
宿の食堂で食事中。
「ウンディーネさんすごいのです!」
森から街まで戻る際、ウンディーネがものすごい活躍をした。
さすがに三人を相手に圧勝できるだけあって、森の中のモンスターは全く相手にならないのだ。
バトルベアーですら簡単に倒していた。
これで冒険が楽になるな。
といっても明日は休憩しないといけないなー。
「ほら、ウルファあーんして。」
「あーん。」
俺はナイフでバトルベアーのステーキを切り分け、フォークでウルファの口に入れる。
ウルファは木に叩き付けられた時に腕を痛めてしまった。
回復魔法をかけてくれる病院みたいな場所があるので、そこにつれていこうと思ったのだが、ウルファが一日もあれば治る程度だからと何故か嫌がった。
本人が嫌だと言うのなら無理に行くのもあれかと思い、行かなかったのは良いが食べづらそうなので、こうしてウルファにご飯を食べさせることにした。
ウルファは今回頑張ったんだから、これぐらいはしてあげないとな。
「ご主人様に食べさせてもらっていると思ったら、ご飯がいつもより何倍もおいしく感じられるのです!」
間違いなくそんな効果は無い。
ついにでカミラが物凄くうらやましそうな目でこちらを見ているが、気にしないことにする。
「ご主人様、身体を拭いてほしいのです!」
身体を拭くお湯はいつもはウルファが持って来てくれるが、当然今日は俺が取りに行った。
金タライを持って、部屋に戻るとウルファが抱き着いてそんなことを言ってきた。
「ちょっとウルファ!?」
「だって、この手じゃ拭きづらいのです。これではご主人様に拭いてもらうしかないのです。」
いや、それはさすがにまずいって!
「さすがにそれは許可しないぞ!」
カミラが割り込んできて、ウルファを引っ張っていく。
「あー、せっかくチャンスがなのですー!!」
ふぅ・・・危なかった。
その日・・・夢の中で懐かしい人に再開した。
「異世界での生活、楽しんでいますか?」
「楽しんでますよ。それにしても、女神様と次に会う時は死んだ時だと思ってましたよ。」
「さすがにあそこまでしておいて、完全に放置というわけにはいきませんよ。」
女神様が苦笑する。
そこで俺は女神様にお願いをすることにした。
「お願いがあるんですが、俺をもっと強くすることはできませんか?」
「何故です?既にあなたの身体はかなり強くなりましたよ。そうでもなければ、剣をあんなに簡単に振り回したり、モンスターの攻撃を食らってもある程度は大丈夫なわけがありません。」
「そうかもしれません・・・。でも、今のままじゃウルファを守ることができません。」
ウンディーネと戦った結果、ウルファをケガを負った。
もし、ウンディーネが殺す気だったら、ウルファは死んでいただろう。
だからこそ、俺は力が欲しい・・・。
「気持ちはわかります。ですが、それ以上の力は人の領域を超えてしまいます。そんな力を手に入れたら、あなただけでなく、ウルファさんたちも傷つけることになるでしょう。本当にウルファさんを守りたいのなら、そのままのあなたで居てください。」
本当にそれで良いのだろうか・・・。
だが、どうにかできることもないか・・・。
「わかりました。」
「それでは、またいつかお会いしましょう。」
女神様がお別れを示すように手を振ると、俺の意識は急激に闇に消えていった。