第一章 第十一話
「ウンディーネ。私と契約してほしい!」
カミラが単刀直入に言う。
「私と契約ですか。なるほど。召喚士ですね。」
さすがに知っているのか。
それなら話は早い。
「私と契約したいというのなら、あなたたちの力を見せてください。」
ウンディーネの右腕に水が集まっていき、槍を形成する。
「え?戦うんですか!?」
慌てて俺が叫ぶ。
ウンディーネと言えばゲームでも相当有名な存在だ。
そんなやつと戦って、勝ち目何てないだろう。
「できれば戦う以外の方法で・・・。」
「問答無用です!さぁ、かかってきなさい!」
そうして、ウンディーネとの戦闘が始まった。
一番最初に動いたのは、カミラだった。
【イグニッション】の詠唱を始める。
「させません!【アクアバレット】!」
だが、それを見て取ったウンディーネが、妨害に走る。
「びえええええ!」
突き出した左腕から水の弾丸がマシンガンのように飛んでいき、それを見たカミラが必死で逃げる。
ウルファは魔族なのに身体能力が低い。
魔力は強いが使えず、かといって身体能力も低い。
あれではそのうち捕まってしまう。
「はっ!」
ウルファが投げナイフを、【アクアバレット】を放つ左腕に当てる。
「いっ!?」
なんと投げナイフが当たっただけで、ウンディーネの左腕が斬りおとされた。
投げナイフにそんな威力はないはずだが。
投げた本人であるウルファも予想外の結果に驚愕している。
だが、よく見ると血が一切出ていない。
「あらあら。ひどいことしますね。と言っても・・・。こうやって簡単に戻るんですけどね。」
なんと水が集まってきたと思ったら、それが左腕を形作り元に戻った。
これはどうやって倒せば良いんだ!?
こういうのって大体核があって、それを破壊したら復活できないってのがお約束だが、殺すわけにはいかないし、そもそもあるのかもわからん。
「お返しです。」
ウンディーネが、手に持った槍でウルファを突く。
ウルファはその攻撃を器用にダガーで槍を逸らして、回避する。
ウルファはなんとか回避できているだけのようで、段々息が上がっていく。
逆にウンディーネはかなり余裕なようで、片腕で槍を操り、もう片腕でカミラの詠唱を妨害する。
このままではウルファがやられてしまう。
「今助ける!【疾風】!」
【疾風】は、身体への負担は大きいので乱用はできないが、瞬間的に高速で動くことができるスキルだ。
これで距離を一気に詰め、ウンディーネに斬りかかる。
だが、後ろから斬りかかったはずなのに、まるで後ろに目があるように受け止められる。
「その程度で私と契約しようと言うのですか?それともまだ隠し玉があったりします?」
くっ・・・。
ウルファと二人で攻撃しているのに、完全に攻撃が捌かれている。
しかも、その上で【アクアバレット】でカミラの詠唱を妨害している。
むしろ二人で挟んでいるのに、こちらが攻められている気分だ。
困ったことにウンディーネの水の身体には【バインド】も【パラライズ】も効果がないらしく、ウルファが攻めあぐねているのが大きい。
いや、待てよ・・・。
あれなら効果あるか・・・?
俺はウルファに目配せすると、ウルファは理解してくれたらしく、大きく頷く。
「おや?何か作戦があるようですね。良いですよ。存分に力をお振るいください。」
余裕綽々ってか。
「ウルファやれ!」
その声にウルファが一気に後ろに下がる。
何か攻撃してくると思ったら、距離を取ったことに戸惑ったようで、動きが止まる。
「【スティール】!」
そう相手の武器を奪うスキル【スティール】だ。
ウンディーネが振るっている槍を奪えば、隙を作れる・・・。
「あらあら?【スティール】ですか。いささかつまらないですね。」
ウルファの手には何も握られていない、ウンディーネの手には槍が握られたままだ。
失敗か!
「当たり前でしょう?これは槍ではなく、槍の形をした水なんですから。」
そんなのありか!?
「喰らいなさい!【スプラッシュ】!」
今までとは違い大きな水流が、【スティール】の失敗で隙だらけになったウルファを襲う。
「かはっ!」
水流に押し流されたウルファが木に叩き付けられ、肺の中の空気を吐いてしまう。
「ウルファ!」
「あなたも隙だらけですね。」
ほんの少し。
ほんの少しだけ、叩き付けられるウルファの姿を目で追ってしまった。
その視界から外した隙にウンディーネは、槍を構え突進してくる。
「しまっ・・・!」
「これであなたも終わりです!」
ウンディーネの槍が、俺の目の前に迫る・・・。