25 捜索依頼
ホテルに戻ったぼく達はまず大浴場に向かった。このリゾート地は敷地内に豊かな湯量を誇る源泉を持っているらしく、源泉かけ流しの本格温泉だった。大きな窓から見える海に日が沈んでいく光景は美しいと感じるより単に眩しい。露天風呂もしっかりと堪能した後で大浴場を出ると、よだかさんが待ってくれていた。コーラの壜を二本持っている。
「お待たせしました」
「ん」
まだ開けていないコーラを差し出され、ぼくは礼を言って受け取った。近くの壁に取りつけられていたボトルオープナーで栓を抜き、炭酸の弾ける舌触りを楽しむ。コーラを飲み終えた後は部屋に戻り、ルームサービスを頼んだ。さすがに高級ホテルなだけあって料理はどれも美味しかった。しかし綺麗になった皿を見下ろし、よだかさんは不満げに呟く。
「足りねえ」
「え、何がですか?」
「デザートだよ。上品ぶってるのか、質がよくても量がちっとも足りねえだろ」
今までタルト・タタンやピーチ・メルバといったデザートを全て注文しておきながら、何を言うか。彼の前に積み上げられた皿を見ながら心の中で訴えても、よだかさんは我が儘な子供のように椅子をがたがた揺らすだけだ。
「この際高級なものじゃなくてもいいから、アイスが食べたいな」
「タルト・タタンもピーチ・メルバもバニラアイスを添えてあったじゃないですか。いい加減にしないとお腹こわ――さないですよね、よだかさんは」
「だからバニラ以外のアイスが食べたいんだよ」
「そうですか」
「………………」
椅子を揺らしていた動きを止め、よだかさんはちらりと時計を見た。もうすぐ八時になる。依頼者がこの部屋に来て、依頼内容を話す時刻は九時。
「よし、行こう」
結局よだかさんはぼくを道連れに、もう暗くなっている外へと出た。ホテルから離れてしばらく夜道を歩いていると運のいいことにサーティワンアイスクリームの店舗が見つかった。さすがは世界最大級のアイスクリームチェーン店。隣にいたはずのよだかさんはもう店内に入っていた。
「愛織はどうする」
「ぼくは別に」
「上司に奢られるのは部下の特権だろ」
そう言ってよだかさんが微笑を浮かべた瞬間、近くにいた客数人が黄色い声を上げて倒れた。期間限定のフレーバーを味見させてくれた店員も、必死で気を保とうと唇を噛み締めているのがわかる。彼の美貌――それも異常なエネルギーじみた色気を振り撒く笑顔――を視界に入れれば何らかのショックを受けずにはいられない。例えるなら、零がいくつもついたダイヤモンドに目が眩むようなものなのだろう。
「じゃあ、コーンでレギュラーのポッピングシャワーを一つ」
「それだけでいいのか?」
「はい」
「じゃあ俺はチョコレートバナナブラウニー&アイスクリーム、アイスのフレーバーはオレオクッキーアンドクリーム。あともう一つ、ストロベリーベイクドチーズケーキ&アイスクリームでフレーバーはラブポーションサーティワンにする」
てっきりアイスクリームを注文すると思っていたのだが、よだかさんが注文したのはアイスクリームクレープのプレミアムだった。それも二つ。つい先ほど夕食を済ませ、デザートを何皿も平らげたばかりの人が注文するものじゃない。
「サーティワンに来てポッピングシャワーを注文しない人の気がしれません」
「なんだ、愛織。お前一つのフレーバーにこだわる奴なのか?」
「ポッピングシャワーは世界で一番美味しいアイスクリームですから」
「………………」
「神様がアイスクリームを作ったとしたら、ポッピングシャワーだけです」
「わかった。わかったから」
よだかさんのクレープは二つとも、サーティワンの店を出てからホテルの部屋に戻るまでの間に消えた。もうこれくらいでは驚かない。部屋の時計を見ると八時四十五分。よだかさんはワイシャツとクラップドパンツからいつもの喪服姿に着替えた。やっぱりあの服装は依頼者と会うためのものらしい。
依頼者であるこのホテルの支配人は九時ちょうどに訪ねてきた。五十歳前後と思われる茶色のストライプスーツを着た男で、十歳くらい若い女を連れて深々と頭を下げる。いかにも上流階級の人という雰囲気があった。
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。改めまして、当ホテル支配人の貝塚正午です」
「初めまして。妻の純香です」
「初めまして、請負人の黒喰よだかと申します。こちらは助手の哀逆愛織です」
名刺交換をしながら自然に名前を紹介され、とりあえずぼくも「初めまして」と頭を下げた。二対二で向き合うように居間の椅子に座り、よだかさんは最初にこのホテルや海の素晴らしさを訥々と喋る。それをしつこくない程度に切り上げ、依頼内容を訊ねた。
「実は、私達の一人娘が二ヶ月前から行方不明なんです。あの子は私達に内緒で交際していた青年と駆け落ちを計画していたようでした。しかし約束の日時を過ぎても待ち合わせの場所には現れず、不審に思った相手の青年が私達を訪ねてきたんです。携帯は繋がらず、娘の親しい友人に訊ねてみても全く情報が得られず……。警察はもちろん、これまでに五人の探偵と三人の便利屋に相談しましたが全て無駄でした」
「つまり身代金の要求はなかったということですか。営利誘拐の可能性は低いわけですね」
「はい。私達も身代金を求められると思っていましたが、今までそれらしい内容の電話や手紙は一度も来ていません。娘はもう十八歳ですし、独り立ちしてもおかしくはありません。それでも、随分前から計画していた駆け落ちを当日に放棄して、どこかに去ってしまうなんておかしいと思うんです。どうか黒喰さん、娘を連れ戻してきてください。黒喰請負事務所のことは、杏落市に住む旧友から聞きました。彼もあなたに依頼をしたことが一度あったそうで、きっと力になってくださると」
支配人の言葉によだかさんは営業スマイルを少しだけ崩した。その顔を向けられると、たちまち主導権を握られた心地になるシニカルな笑み。
「その方は、私が一体どういう請負人かあなたに伝えましたか?」
「構いません」
支配人よりも先に夫人が言い切り、ぼくとよだかさんは思わず目を瞬く。
「娘はきっと何者かに攫われたんです。そうとしか考えられません。もう、最悪の事態を受け止める覚悟もできています。たとえ廃人になっていようが死体になっていようが、私は娘と再会したいんです。どうか引き受けてください。お願いします」
頭を下げ、悲痛な涙声で訴える夫人。隣の支配人も同様に頭を下げてきた。一人娘がいなくなり、不死身の殺人鬼に縋りついてでも再会したいと願う。廃人になっていようが、死体になっていようが覚悟はできている。これがあるべき親の姿なのだろうか。そんなことをぼんやり考えていると、よだかさんが言った。
「わかりました。そのご依頼、請負いましょう」
その声色は平静を装っていたが、これまで三ヶ月ほど彼を見続けてきたぼくにはわかった。よだかさんの目が、面白そうなゲームを見つけた子供のそれに変わっていたことが。
報酬の話し合いを終え、支配人夫妻が部屋から出ていった。途端によだかさんは嬉しそうに居間の中をぐるぐると歩き回る。
「電話で聞いたときから面白そうな依頼だとは思っていたが、まさかこれほどとは……最高じゃねえか。さすがは俺の世界。大好きだ」
「何言ってるんです。行方不明者の捜索って、そんなに珍しい依頼なんですか?」
「全然。ただ、行方不明になってるのはこんな高級ホテルの支配人を父親に持つ金持ちの娘だからな。あの夫妻は金持ちなりに庶民が知らない業界だって知ってるはずだ。それなのに、娘の情報は手に入れられなかった。どうも腑に落ちない。日本の警察は決して無能じゃないし、警察とは別に行方不明者捜索の特定非営利活動法人だって存在する。もちろんこいつらも万能ってわけじゃないけどな」
「つまり?」
「もし今回の行方不明が誘拐だとしたら、かなり大きな組織が関係してる。俺はそう思う」
「でも、身代金の要求はないって言ってましたよね」
ぼくはテーブルの上に置かれた貝塚夫妻の一人娘――貝塚五月雨の写真を手に取った。高校の卒業式当日に撮った写真だと言っていた。白地に青い水玉柄のシュシュで黒髪を短めのポニーテールに結び、爽やかな笑顔で卒業証書を持っている。ハンドボール部で活躍していたらしく、ブレザーの制服姿でも引き締まった健康体であることがわかる。そしてFカップはあるだろう、大きな胸。顔立ちはそれほど目を引く、という印象はないがぼくから見れば十分美人だ。
「若くて綺麗な女性ときたら、真っ先に思い浮かぶのは性的な目的ですね」
「ああ。まず考えられるのが海外の娼館に売り飛ばされたか、臓器だな」
「もしくは五月雨さんにはストーカーがいて、今も監禁されてるという可能性は?」
「それだと犯人はよほどの権力と財力を持つような人間か、そういう奴らに協力してもらってる一般人……考え出すときりがねえ。そう言えばすっかり事務所に入ってこなくなったけど、お前の小さなストーカーはどうなったんだ?」
「まだ続いてますよ。ぼくの部屋や事務所に入ることはあれ以来やめたみたいですけどね」
ぼくのストーカー、楪くん。彼は小学生だがすでに柩木組の跡継ぎに見合った権力を持っている。実家がやくざとしてそれなりの財力を誇っていることも想像に難くない。その気になれば、標的のぼくを誘拐して監禁することだって容易いはずだ。しかし楪くんがそんなことをする様子はなく、最早ぼくの日常に溶け込んでいる。
「つくづく思いますよ。ぼくのストーカーがあんな無害な少年でよかったって」
「ストーカーされてることをよかったと思うのはおかしいだろ。ああ見えてあいつ、やくざの跡継ぎなんだからな」
「いきなり真面目な正論を言わないでください」
これ以上よだかさんと話していても五月雨さんがどこにいるのかわからない。ぼくは居間の隅に置かれていた通学鞄を開け、クリアファイルとペンケースを取り出した。配布された日から学校にいるときも進めようと、常に入れておいた夏休みの課題に取りかかる。
「何いきなり優等生みたいなことやり始めてるんだよ」
「本当の優等生は解答がついてる課題をほぼ丸写ししないでしょう。五月雨さんが誘拐されたとして、どこにいるのかなんてぼくには見当もつきません。わからない問題よりわかる問題から解くべきだ」
「俺だってすぐ見当がつくとは思ってねえよ。けど、こういうときに便利な人物なら見当がついてる」
ぼくがプリントから視線を上げると、よだかさんは向かいの椅子に移動していた。鋭い牙のような犬歯が間近に迫る。
「探索屋だ」
「たんさくや?」
確かその聞き慣れない名前、先月一度だけ柩木組の人が口にしていなかっただろうか。
「情報屋って言った方がわかりやすいか。本人は混同されたくなくて、そう呼ぶように言ってるんだけどな。お前、クラッカーって聞いたことないか?」
「聞いたことはありますけど、クラッカーってハッカーとは違うんですか?」
「それこそ混同されやすいんだが、わかりやすく言えば悪いハッカーがクラッカーだ。ネットワークに不正侵入して、データを盗んだり壊したりする。そういう悪意を持ったハッキングをするのがクラッカー。ハッカーは単に並の人間よりコンピューター技術に通じる奴のことだから、クラッカーとは違う存在だぜ」
「…………そのクラッカーの探索屋なら、五月雨さんがどこにいるのか知ってるんですか?」
「いや、まだ知らないはずだ」
「えっ? じゃあ、どうして――」
「言っただろ、情報屋じゃなくて探索屋だって。あいつは依頼を受けてからその物事の表から裏まで徹底的に調べ上げて、そうして手に入れた情報を売る人間だ。初めから全ての情報を持ってるわけじゃない。そんな人間はまずいない。だから情報屋なんて名前で呼ぶなって言いたいんだろうよ」
「妙なこだわりがある人ですね」
「でも、俺がすぐに調べられないことだろうとあいつならすぐに調べられる」
かなり意外だった。このよだかさんにでも不可能なことがあるということ、そして彼ができないことを可能にする人間が別に存在することが。
「お前、俺のことなんだと思ってたんだ」
ぼくの心を読んだのか、よだかさんは珍しく苦笑した。
「俺だってできないことはある。行方不明の娘が生きているのか死んでいるのか、生きているならどこにいるのか、自分の意思で失踪したのかそうじゃないのか――これら全てを俺が調べて、夫妻からの依頼を完遂することは決して不可能じゃない。ただ時間がかかるから、探索屋に協力してもらった方が早いってだけだ」
「そんなにその人、すごいんですか」
「すごいなんて言葉で飾られるには役不足だぜ。サイバー界では国際的に恐れられるほどの超絶辣腕クラッカーだ。太陽系の内側までなら調べられないことはないんだよ。電子、情報、機械工学の技術や知識であいつと肩を並べる人間ならともかく、あいつほど物事を調べるという行動に異常な才能と執着を見せる人間に俺は会ったことがない」
大袈裟な冗談を言っているのかと思ったが、よだかさんの表情や口振りは真面目そうだった。きっと真実なのだろう。世の中には、本当に色んな人がいる。
「支配人夫妻はその探索屋を知らなかったんでしょうか」
「当然。知ってたら俺に依頼する必要なんてなかっただろ。こんなリゾート地で高級ホテルを経営するくらいの金持ちでも、探索屋を知る少数派に組み込まれていなかったらしい。クラッカーとしては有名でも、同一人物が探索屋をやってることはあまり知られていないからな。それに探索屋のあいつを知る人間は、他人にその存在を教えたがらないものだ。あまりに有能過ぎるから、多くの人間に探索屋の存在が知れ渡った結果、いつか自分の情報が暴かれることを恐れてるんだろ」
なんだか、知る人ぞ知る隠れ家レストランみたいだ。一般人のぼくとは住む世界から違う人間に思えて、よだかさんの話を聞いてもそんな感想しか出てこない。どことなく既視感に似た感覚があると思ったら、五月に闇医者の話を聞いたときと似ている。
「分野は全然違いますけど、八雲さんとちょっと似てますね」
「仲は犬猿だけどな」
「え」
「まだ見たことないのか。杏落市の街中で偶然出会っただけで殺し合いになるんだぜ、あいつら。見ててすげえ面白いぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください。その探索屋って杏落市にいるんですか?」
「いるも何も、杏落市在住だからな。八雲とは同い年の腐れ縁」
「………………」
住む世界から違う人間だと思っていた相手が、まさかの同じ市内に住んでいたとは。
「世界って案外狭いんですね」
「今さらそんなことに気づいたのかよ」
よだかさんは呆れたように言って、椅子から立ち上がった。
「杏落市に戻ったら、探索屋に依頼をする。この仕事はお前に任せるからな」
「どうしてぼくなんですか」
「だって愛織、まだ会ってないんだろ? せっかくだから顔を合わせておけ。俺の助手だと言えばすぐに調べてくれるはずだ」
これ以上仕事の話は終わりだと言いたげによだかさんは部屋を出ていった。確か大浴場があった二階に娯楽室もあったはずだ。遊びに行ったのかもしれない。
よだかさんが帰ってきたのは、二時間ほど経ってからだった。ぼくは課題をきりのいいところで中断し、寝間着に着替え、三つ編みを解いて櫛で梳かし、洗面所で歯を磨いている最中だった。
「ただいまぁ」
「……おかえりなさい」
白皙の美貌が赤らんでいるのを見て、甘くも独特な匂いを嗅いで、ぼくはすぐにわかった。よだかさんは娯楽室じゃなく――否、娯楽室にも行ったかもしれないが――同じ二階にあるバーで酒を飲んでいたに違いない。未だこの人の正確な年齢は知らないが、常識が通用しない殺人鬼にとって飲酒も車の運転も年齢なんて関係ないのだろう。
「それにしても、目の保養も過ぎると毒ですね」
「は?」
「なんでもないです」
酔っているよだかさんはいつも以上に扇情的で、退廃的で、倒錯的で、どこか陰性の美を宿している。気怠げな佇まいも、若干潤んでいる真紅の瞳も、かすかに開いた唇も、元来の美貌と相まって痛々しいほどに蠱惑的だ。千鳥足と言うほどではないが、よだかさんはふらふらとした足取りで寝室に向かう。ぼくは急いでうがいを済ませ、彼を追いかけた。ベッドにダイブしていたよだかさんに声をかける。
「あの、よだかさん」
「どうした」
「ベッドって、これ一つだけなんですか?」
「キングサイズなんだから二人で使っても十分広いだろ。……ああ、チェリーは付き合ってもいない男と同衾するのに抵抗あるのか。ははん、愛い奴め」
「チェリーじゃなくても抵抗あるでしょう、普通は」
「手は出さねえよ」
がばりと身を起こしてそれだけ言うと、よだかさんはシャツのボタンを外しながら寝室を出ていった。彼ももう眠るつもりなのだろう。睡眠。同衾。キングサイズとは言え、家族でもない異性と二人きりで同じベッドを使う。この部屋で目覚めたときからなるべく考えないようにしていたが、ついにこの時間を迎えてしまった。
「眠れるかな……」
溜め息をついた直後、寝室の外から名前を呼ばれて肩が跳ね上がった。
「な、なんですか」
「俺普段ベッドで寝るときは全裸なんだけど――」
「駄目です!」
考えるよりも先にぼくは叫んでいた。全裸って、寝間着どころか下着も一切身に着けていない状態のことじゃないか。海外では裸で寝ることも珍しくないらしいが、生粋の日本人で海外に行ったこともないぼくにとっては異世界の文化と言っていい。
「絶対駄目です! ちゃんと寝間着で寝てください!」
「わかったわかった」
面倒臭そうな口振りで返して、よだかさんの声は聞こえなくなった。彼はぼくに全裸を見られても全く構わないのだろうか。確かに風呂上がりのとき、タオル一枚の姿をぼくが見てしまっても全然気にしていなかった。常識がないことは重々承知だが、一般的な羞恥心という概念すらもないのかと心配になってくる。
ぼくがベッドの左端で布団にもぐっていると、寝間着姿のよだかさんが居間の電気を消して寝室に入ってきた。天蓋から吊るされた白い薄手のカーテンを全て閉める。
「お前、電気全部消しても平気か?」
「はい」
「じゃあ消すぞ」
ぱちん、という音と共に部屋が真っ暗になる。よだかさんがベッドの右側から入ってくる物音がやけに大きく聞こえた。一人暮らしをしてからも、一人暮らしをする前からもベッドでは基本一人だったぼくにとってこの状況は最早未知の世界だ。
「おやすみ、愛織」
「おやすみなさい……」
たちまち寝室は沈黙で満ちた。耳を澄ませると、空調が動いているかすかな機械の音が聞こえる。二人分離れた先にいるよだかさんは三十分も経たないうちに寝息を立て始めた。ぼくは車の中でぐっすり眠ってしまったこともあり、なかなか眠気がやってこない。それでも海で遊んだおかげか、しばらく羊を数えているうちに自然と意識が沈んでいった。




