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第五話:水町家


「いやー!世界は狭いねぇ。」

時雨はそう言うが、俺はそうは思わない。と言うよりもそっちの方を考えている暇すらない。


何故俺はこの家にいるのか?

何故俺は水町家族四人に囲まれているのか?

そして…


「お前は時雨の何なんだァアアアア?!」


と叫びながら猟銃を持ってきた父親らしき男に対して俺はどうすればいいのか?






「とりあえず、ありがとう。」

何故か顔中に傷を作り、さらに隣に拳をグーに握った時雨を従えて父親である水町瀬矢みずまちせやは俺に頭を下げた。

「お前のお陰で店の金は守られたよ。いや、本当に。」

瀬矢が言葉を発する度に時雨が目を走らせているのは気のせいだろうか?

「ありがと!」

「ありがとー!」

父親の後ろで騒いでいた時雨の弟と妹の双子も同じく頭を下げる。

「えっと…みずき君、だっけ?今日は泊まって行きなよ。がっ、泊まって下さい。」

言葉の途中で時雨が瀬矢を殴る。

俺はあと一日くらいなら、と思い

「ではお言葉に甘えて。」


社交辞令。


そんな言葉だったような気がする。








「みずきおにーちゃん!今日は泊まるの?」

「泊まるの?!」

双子の兄妹…陽政ようせい雪乃ゆきのは俺に纏わり付いてくる。

研究所にいた時は子供を見たことが無かったので少し興味がある。

「ああ。」

嘘はついていない。

「じゃあ遊ぼ!」

「遊ぼ?!」

陽政に雪乃が続いて俺に話しかける。

「ごめんね。少しだけ相手してやってよ。」

時雨も台所から顔だけ出して言う。

振り向いて瀬矢に助けを求めようとしたところ、

「…、  。」

何か呟いたようだったが、おそらくは拒絶の反応だろう。

そして百八十度顔を回転させると、

「遊ぼ!」

「遊ぼ?!」


人工筋肉でも筋肉痛は起きないことを祈るばかりだった。








「ご飯出来たよ〜!」

時雨の声で俺はやっと陽政と雪乃から解放された。

近代社会のこの世で、是非とも『幼児用お遊び相手ロボット』を作ってほしい。

「おぉ!飯だ!」

瀬矢はさっきの俺に対する態度とは打って変わり、席に付く。

「水仙君の椅子はこれで我慢してね。」

と言い、時雨はピアノのところにあった椅子を俺のところに持ってきた。

その椅子を見る限り、かなりの期間使われていたようだった。

「我慢してね!」

「してね?!」

兄妹の催促もあり、俺はゆっくりと腰を下ろす。


「いただきます!」






家庭の味とはこのようなものを言うのだろう。








俺は今日、一家団欒を学んだ。


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