第四話:三度目の接触
「じゃ!これで。」
時雨は右手をピシ、と振り上げて敬礼の形をとると、走り去っていった。
もう既に真っ暗となった河原には俺しか残っていない。
さて、何処へ行こう。
もう行くところはあるのだろうか?
俺に必要な場所は…
否。
俺を必要としている所は唯戦場のみ。
戦闘用アンドロイドとして『生きる』しかないのか?
「もう…」
戻ろうか?
俺は五時間ほども腰を置いていた坂から立ち上がる。
俺が戦場へ行くのはいつの日か。
その日までは俺はまた研究所に篭り続ける毎日。
今までと同じ。
まったく同じでまったく変わらない。
短い家出だった。
後一キロも歩けばもとの日常。
街はもう出て、見当たるのは殺風景な道路の脇にある洋食店と研究所の影ぐらいだ。
その時だった。
「オラァ!」
その洋食店の窓を突き破って男が二人出てきた。
一人はナイフを持っていると言うことがわかる。
あろうことか。
そいつらは俺の方に走ってきた。
「んあ?」
片方が俺に気づいたようだった。
その頃には。
「がァアッ!」
ナイフを持っていないほうは地面にひれ伏していた。
簡単なことだった。
合気道。
俺にはこの業がある。
「お前っ!」
もう片方がナイフを大きく振りかぶる。
が、もう遅い。
「う…おっ…」
「犯人確保にご協力いただき、有難うございます。」
警察の声がした。
俺は少しばかりボーっとしていたようだった。
「被害者の水町さんがお礼を言いたい…と。」
…水町?
聞いたことがあるような。ないような。
「あれ?君は…水仙君!」
それは二度目の衝撃だった。