第二話:学校
俺は街を出た。
とは言ってもすぐに隣の町に出るだけだった。
東京23区が2056年に一つになった場所はどうにも広い。
元々杉並区と呼ばれていた場所が一番治安がいいらしい。
最も、自分の向かう先は『心』を知れる場所だ。
「水町時雨…」
先ほどの公園で聞いた名前を思い出す。
特に意味があったわけでもない。
何故か耳に引っ掛かるような感じがしただけだった。
さて、何処へ行こうか?
時間と資金はたっぷりとある。
何処なら俺の『心』を見つけられるだろう?
何処なら。
そうだ。学校なる場所に行ってみよう。
俺の設定年齢なら入れるはずだ。
この近くで一番近い学校は…?
『西条高等学校』
偏差値は中の下。
生徒数は200人、つまりは一学年に約60人の学校。
そこそこ『不良』がいるとか言う場所。
まあ世間一般の目に映るとすれば、
「普通…」
細かい申請とかは良く知らないが、入学ぐらい簡単にできるだろう、と思ったのは間違いだった。
「書類は?名前は?保護者は?」
丸い眼鏡をかけて腹立たしそうに『校長』は言った。
「書類は…ない。名前はコード2112。保護者は存在しない。」
俺はそう答える。
そう、俺は書類などあるはずもなく、名前はコード2112であり、保護者などは存在しない。
俺は正直者だ。
「そんなはずがある訳なかろうに。」
校長は額の汗を服の袖で拭った。
この時代に親無しと言う子供が珍しいとでも言うのだろうか。
「まあいい。とりあえず君の家は?」
とりあえず、と言う言葉が耳に掛かるが俺は正直に答える。
「無い。」
そう。俺に家は無い。
「君はどこまで…」
ふざけているんだ?とでも言いたいのだろうか。
「何が?」
「うん?」
「何が駄目なんだ?」
俺は最初からの疑問を口にする。
「何故俺の入学が認められない?」
もう我慢などと言うことはできない。
これが感情ではないことを祈るだかりだ。
「それは…」