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第一話:接触


俺は『街』に出ようと思う。



俺のデータには『街』には食事、衣服、家が存在する。

幸い『金』とやらは不自由しないよう研究所の科学者共から取り上げてきた。

そう、心配することはないのだから。

俺は限りなく人間に近い存在だと科学者共は言っていた。

足りないのは『心』だけだと言う事も奴等の会話からデータとして採取している。

『世の中』を生きていく方法は何通りもあるらしい。


俺は人間としての年齢は『17歳』。


『学校』と言うところに通う年齢だった。

奴等は…科学者はいつも言っていた。

お前はいつか日本の最強で最凶なる兵器になるのだと。ならば、『いつか』ならばそれまでの

時間を俺に与えてくれてもいいはずだ。



そうこう考えている内に俺は『街』にたどり着いた。

周辺の地図を頭の中に展開する。

『商店街』『駅』『喫茶店』『高校』『市街地』…

なるほど、結構沢山の施設があるんだな。

俺は限りなく人間に近くなっている。

食物の摂取によりエネルギーを補充することができる。声帯もあるから声を出すこともできる。『コード2112』としての情報だけでなく、人間社会での『個人情報』とやらも偽造されている。

だから、



心配することはない。


いや、元より心のない俺は『心配』をすることがない。

そうこう考えながらついた場所は『公園』だった。





「なるほど…」

俺は『生み出されて』初めて声を出した。

公園とはこういうものだったのか、と感嘆する。

脳内の情報では、


『子供の交流の場。』


とあったが、

子供だけでなく大人なる存在もあり、犬などのその他の哺乳類もいる。

何だか…



「楽しい…」




……え?

俺はしゃべってないぞ?

そう思って俺は横を見る。

そこにいたのは人間の女だった。

身長は俺よりも少し小さい。年齢が俺と同じなら『平均的』な値になるであろう。

間近で人間の女を見たのは初めてだった。観察をしてみる。

黒くて長い髪。

顔は『絵の具』で混ぜたような肌色。

細身の体型にそこそこ『普通』のサイズ。

3D視点のグラフィックは常に正しい情報を与えてくれる。



「私に何か用ですか?」



はっ、とした。

ずっと見ている俺の視線が気になったのだろう。

「いや、何でもない。」

人と話したことのない俺は少し『戸惑う』。

『戸惑う』?

『戸惑う』とはこういうことなのか?



「君は…よくここへ来るの?」


「初めてだ。」


「じゃあ何で皆を見て笑っているの?」


「笑ってなどいない。」


「…ふーん。ふふふ…」


「何故笑う?」


「笑ってないよ。」



これが『会話』。

なるほど、楽しいものだ。

研究者達がしようとしていたのは『会話』ではない。『接触』だった。


「君の名前は?」


ひとしきり言葉を交わした後、女は俺に聞いてきた。

二度と会わないであろう関係なのに名前を聞く意味などあるのだろうか?


「コード2112。」


だからこそ答えておこうと言うものなのであろう。


「あはっ…何それ?」


女は苦笑して、


「私の名前は……」




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