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NAGI ―神様と共に私を見つけるまで―  作者: 安藤真司
NAGI編 2 ―Taboo War―
68/72

神様が誰かに願いを届けるまで

あぁ疲れた。

もうとりえずはゆっくり寝かせて欲しいよ。

なんて言っている場合じゃない。

いや言ってる場合じゃないんだけど、倦怠感が尋常じゃなくって。

どうにもこうにも体が動かんね。

「おい、ごろごろしてる場合じゃないだろ」

うわっ、ザ・ワンに怒られた。

あやつもボロボロだろうになんであんなに元気かね。

っていうかあれ。

ザ・ワンがめっさボクの方見てるんだけど。

ひょっとして言われてるのボクだけ?

「え、それボクに言ってる?」

「この場でお前以外誰に話すと思ってんだよ」

「いや、やらなきゃいけないことは把握してるつもりだけどさ」



ひとまず、一言で言ってしまえば。

ボクの目的は達成した。

ツナギは、本音を語ってくれた。

司亜人ではなく、ザ・ワンのことが好きなのだと。

ちゃんと言ってくれた。

っていうか、そんなことはもう初めからわかっていたんだけどさ。

初めからっていうと少し嘘になるか。

本当に初め、司亜人とセレスと一緒に現れた時には何も考えることは出来なかったけど。

ルルシアを殺されて、それでゆっくり考えて、すぐに気付けた。

気付けた、なんて、別にボクだから気付けたみたいな話ではなく、もうまんま。

ツナギは隠す気がないだろってくらい露骨に好き好きオーラを発していたからね。

それは言い過ぎか。

まぁまぁ。

一応、これはボクが思う、ツナギの心情であって。

実際にツナギがどんな気持ちでボク達を殺そうとしていたのかはちゃんと聞いていないんだけれど。

っていうか別にこれから先、特段聞く気もボクはあんまりないんだけど。

たぶん、ツナギが言っていたことは、確かにいくらか本当で。

ツナギがこの世界が本物の世界の鈴鳴繋が創り出したものである、って事実を司亜人から聞いたのかなんなのかはよく知らないけれど。

とにかくその事実を知ってだ。

更に、自分が繋が自分を嫌って、自分を責めて、自分の汚い所を失くした存在として生み出したもの、それが自分であると知って。

繋がどんな想いでこの世界を創ってしまったのか。

繋がどんな想いで司亜人に別れを告げたのか。

いや、きちんと告げなかったのか。

そんなことを知ってしまったツナギは、自分という存在の必要性を見失ったんじゃないかな。

繋の理想が、自分だなんて言われてさ。

でも、その自分が、完全じゃないことを一番よく知っている。

不完全な自分を理想だと思ってしまっている哀れな本物に。

不完全な自分をそれでも求めてくる哀れな男。

不完全な自分を創り出しておいて、被害者面して生きている本物の態度があり。

不完全な自分と共に生きるために、全てを投げ打つ覚悟を示した哀れな男があり。

ツナギは自分の心を閉ざした。

自分の気持ちは、想いは、偽物であると。

偽物の自分では、もう耐えられないと。

偽物の自分が、偽物の自分のままでボクやベルやザ・ワンと会うことはもう、出来ないと。

なんかそんな面倒な思考に至ったことは想像に難くない。

ツナギはツナギなのにね。

って、それに近い考えにボクもなっていたような気がするけれど。

そこはほら。

ベルにすぐ願ったわけですし。

ボクは自分がよわっちいことを自覚しているからね。

そこで変に自分を追いこんだり、変に自分を甘やかしたりなんてしないさ。

だからすぐにベルに願って。

落ち着いて、焦る一歩を踏みとどまって。

しっかり地に足付けてどっしり構えて、だからこうしてツナギの元にまでやってくることが出来た。

でもツナギはボクにもベルにも、もちろんザ・ワンにも何も言わずに。

勝手に自分で判断して。

勝手に自分で敵を作って。

勝手に自分を貶めた。

ツナギらしいといえばツナギらしいけれど、少しはボク達のことを信頼して欲しいものだね。

まぁそもそもどうやってこの事実を知ったんだって話以前に、あの日ルルシアがやってきてツナギの意識がなくなった後どうなっていたのかを知りたいくらいなんだけどさ。

なんでボクにツナガレの力が宿っていたのかもよくわかんないし。

本物の世界があること自体はよくわかったけど、果たしてどうやって行き来するものなのかもよくわかんないし。

繋とツナギの体と精神が入れ替わっている現象も詳しく聞きたいし。

司亜人もほいほいこっちの世界に来てるし、本物の世界にはないはずの能力とか持っちゃってるし。

ついでに急に現れたリンドウとアリスもなんだかよくわからないし。

しかも二人は本物の世界とはまた別の、偽物の世界みたいなところから来たとか言ってるし。

世界ってなんなんだ。

みたいなわけで実はボクにもわからないことだらけだったりするのだ。

解決したのは、本当に本当に一部で。

表面上、というか性格の問題というか。

とにかくツナギを取り戻したかっただけのボクがツナギを取り戻した。

本物か偽物かではなくって、本当のツナギを取り戻した。

ツナギが思っていることを吐き出させた。

たったそれしか出来ていない。

まぁ、ボクはもちろんそれで充分なんだけどね。

これでめでたしめでたし、とするには些か問題があるのも事実でして。

事後処理的なことはやっぱりありますよね。

うん。

まず真っ先に止めないといけないこととして、アリスたちに任せている戦場。

これはどうにかしないとだ。

なんたって、未だに多くの生命が互いに殺し合わんとしているわけで。

しかし当の司亜人やセレス、ついでにツナギにもはやその気はないので、これ以上戦う理由など一つもない。

元々戦う意味なんて、この世界の住人にも、神にも、神擬きにも、元タブーの生命にも、なかったと思うけどね。

とにかくこの殺し合いはどうにかしないといけないだろう。

あとは、今や瓦礫と化したギルド、『ルール』の始末、とか?

……。

なんでザ・ワンは叫びながらギルド破壊したんだろう。

必要なかっただろこれ。

結局落ちてきてから普通に殴ってたしさ。

じゃこれはザ・ワンに任せよう。

ボクは関係ないや。

で、あとは、そうだね繋と司亜人を送り返さないといかないから、必然的にルルシアが死んだことを伝える必要もあって、それによる混乱もどうにかしないと、か。

やることが盛りだくさんだなぁ。

嫌になっちゃうね。

その辺の話を含めて、たぶんザ・ワンが声を掛けてきているのだろうけれど。

ボクはもう満身創痍だし。

ただ立っていることもかなりきっついんだけどな。



「まずは戦争を止めるぞ、犠牲者が出る前に」

「あー、うん、それはまぁやらなきゃ、か」

痛む体を鼓舞して、なんとか動かそうとする。

けど、中々思い通りに動いてくれない。

さっきまでは全神経をツナギの挙動に注いでいたから、体の痛みなんてほとんど感じなかったんだけど。

一度集中が切れてからというもの、傷という傷が本来の痛みに加え先ほどまで感じていなかった分を付け加えてきている勢いで激痛を走らせている。

口では結構余裕そうに、いつも通りに明るく返答しているけど実は限界ぎりぎりみたいだ。

死にそうってわけじゃあ、全然ないんだけどさ。

「でも、実際どうやって止めるの、力ずくってわけにもいかないでしょ」

数的にも、戦力的にも、方法的にも。

目的と手段が違ってしまっては駄目だよね。

「当たり前だ、セレスと、場合によってはヴェルベルクにも手伝って貰う」

「あぁ、うん、それが一番いいか」

元々タブーのモンスターたちはボク達、というか、たぶん繋の味方をしてくれているだけだろうから、放っておいても大丈夫なはず。

そしたら、司亜人によって戦場に駆り出された者たちを止めることが先決で。

司亜人にはどうやら支配の力がある風には見えないので、別に能力によって操作されているわけではないだろうし。

もう一度、序列の高い神様として、戦うことをやめるように話をする、ってことね。

……。

だからそれ、ボク要らないじゃん。

「それボク要らないよね?」

「あほか」

「あほって言った、ねぇツナギ、君の恋仲ボクのことあほって言った!」

「あほだね、ついでに恋仲じゃないし」

またあほって言われた。

あほはどっちだよと言いたいね。

あと、あれ、恋仲ではないのか。

そこは突っ込んでやらない方がいいのかな。

ボクはその辺り、機微に聡いとは自分でも思わないからね。

ツナギとザ・ワンのことも、リアンに言われるまでは全然、もう全然知らなかったくらいだし。

むしろどうしてリアンがそんなん知っていたのか今となっては若干気になるくらいだ。

うーむ。

でも今更何言ってんだろうなぁ。

もうツナギ、さっき「好きだ」って宣言してたじゃんね。

恥ずかしがるようなことでもないんじゃないかなぁ。

ザ・ワンだって、その気がなかったらここまで来ないんじゃあないかねぇ。

って、突っ込まないって決めたのにあれこれ考えすぎか。

もうそこはツナギに任せよう。

そうしよう。

「所詮、俺達の言葉なんて届かねぇよ」

「ナギの言葉じゃないとさ」

ザ・ワン、ツナギが口々にそんなことを言う。

何を言ってるんだ、とは思わないけども。

それを言うなら、ボクなんかよりもザ・ワンの方がいいんじゃあないのかな。

確かに立場としては、この場合ボクが割と適任なのかもしれない。

今回の戦争の一連の流れを知っているし。

どんな結果に落ち着いたのかも理解しているし。

それでいて、ルルシアに付き従っていたこともあって神様序列も今日までは5位とかに食い込んでいたから知名度もそこそこあるし。

でもそれはザ・ワンも同じはずだ。

むしろボクよりも知名度が圧倒的にあるだろうし、よっぽどいいんじゃないかな。

「でも別にボクじゃなくたっていいでしょ、知名度的にもザ・ワンの方が」

「無論俺も行く、が、話すのはお前だろ、ナギ」

「だからどうして」

「……どうにかならないのか、お前の神様」

「こういう性格なんだよ、私の神様は」

な、なんだなんだ。

急にいちゃいちゃしているぞ。

しかもボクの事を呆れた目で見ながら。

おいおい勘弁してくれよ。

ボクは君らのいちゃいちゃの為にここにいるわけじゃないんだぞ。

ボクを介して会話をするんじゃないよ。

ツナギが優しい顔のまま、ゆっくりとその手をボクの手に重ねた。

ちなみに、ツナギとボクはお互い寄りかかるように、寄り添い合うように地面に座り込んでいる。

そんなわけで、はたから見ると中々危ない絵面になっていることだろう。

「聞かせて欲しいな、ナギの言葉も」

う、ん?

「ボクの、言葉?」

どういうこと、だろう。

ボクの言葉。

そんなもの。

「そう、ナギの言葉」

ツナギの手に力が加わる。

「私は、願ったよ、ナギに」

「うん、願ってくれたね、前に進みたいって、それに、必要とされたいって」

「それに、伝えた、好きだって」

「うん、それも、聞いたね」

「私……ううん、鈴鳴繋と風町司亜人は、ここの世界の住人じゃあないし、ね」

「そうだね、二人は二人の世界に戻るべきだよね」

「ムーくんは、叫んだよ」

「叫んだ?あ、うん、なんか叫んでたね、ボクにはよく聞き取れなかったけれど」

願い(ヴンシュ)って、彼に願って、彼を神様にした、彼の元カノ」

「そうなんだ、なんか大変そうだね、彼も」

「そうかな、いつまでも過去に縛られてる可哀想なただの男だよ」

「ひどい言い草だね」

「まぁ、ね、でも彼なりに思いは吐露してるんだよ、あれでも実は」

「へぇ」

「だからさ、ナギ」

「うん」

「私を知って、繋を知って、司亜人を知ったあなたにしか、この戦争を終わらせられないよ」

「……ん」

なんだかよくわからないけれど。

ツナギがそう言うのなら。

ボクは喜んで話そう。

しょうがないなぁ、なんて言いながらね。

「結構、自覚症状がないんだよね」

「お前ら似た者同士だよホント」

「私は一応自覚してたし」

「うっせぇ、結果一緒だろ」

いらっ。

「ちょっと、ボクを焚き付けておいていちゃいちゃしないでくれるかなそこ」

全く油断も隙もない。

まぁでも。

行きますかな。

と、ようやくの思いで立ち上がると。

司亜人も同じく立ち上がった。

「最初は俺が話すのがいいんだろう?」

おやまぁ。

勿論それに越したことは無いよ。

なんたって、司亜人が指示して戦っているわけだからね。

一体どんなトリックで、死に直結するような戦地にあれだけの数を送り込んだのかはよくわからないけどさ。

とにかく、その司亜人がもう一度話をしてくれるなら、それはありがたい。

でも、なら、司亜人だけで十分じゃない、かなぁ。

というか、司亜人と繋はこの場で元の世界に返さなくていいのかしら。

わからない。

さっきツナギは二人はこの世界の住人じゃないからとか言っていたけれど。

「でも最初だけ、だよ」

「へ?」

「もう俺は、ただの傷心の男だよ、それだけだ、言葉は、響かない」

「……」

「ちゃんと話す方は、任せるよ、この世界の問題だ」

「じゃ、お言葉に甘えて、最初だけよろしく」

「おう」

軽く頷き合って。

ボク達は全員で。

戦争を終わらせるために。

戦場へと歩き出した。



先ほどまでいた戦場に戻ると、喧騒自体は激化していた。

なんとかアリスがその能力でギリギリ再びの戦闘は避けていたものの。

アリスの力はあくまで視界や音を共有する力。

戦闘中に急に周りが一切見えなくなればそれはそれで暴れる輩も出てくるだろう。

「あーやっときた、じゃ早速バトンタッチ!」

「ちょっ、えっ?」

ボク達の姿を見るや否や、アリスはそれだけ言って、何かを投げ寄越してきた。

ほんのり黄色に輝くそれは、マイクだった。

どういうことなんだ、と聞く暇も無く、アリスはそのまま体制を崩し、それをきちんとリンドウが支える。

多数の強制通信はかなり疲れる、と言っていたアリスだ、本当に限界が近かったのだろう。

すぐに吐息を立てているのをみて、ひとまず命に別状はなさそうだと少し安心して、最後の力を振り絞ってくれたであろうマイクの意味をようやく理解する。

マイクはマイクだ。

より多くの、より遠くの誰かに言葉を届ける道具だ。

そういうためのものだろう。

「はい」

言って、そのマイクを司亜人に渡す。

司亜人は躊躇うことなく受け取り、すぐに話し始めた。

アリスが気を失った今、恐らくこの戦場にいるものにかけられていた強制通信による視界のジャックは既に効力を失っているだろう。

すぐにでもまた戦争が始まってしまう。

まぁ、またセレスに生き返らせてもらったらいいんだろうけど。

せっかくベルと仲良く抱き合って寝ている彼女を起こすのは忍びない。

っていうか何で寝てるんだよ。

それに、もう殺し合う必要なんて、どこにもないんだ。

そんなことをふらふら考えていると、司亜人の声が鋭く響いた。

「聞け」

おぉ。

中々ドスの効いた感じで。

ルルシア感を演出していたのだろうか。

「もう戦う必要はない、我の目的は達せられた」

マイクから発せられた音が、アリスの能力の影響だろう、脳に直接響いてくる。

これなら多少のノイズがあっても全員に届くことだろう。

「もう戦うな争うな殺し合うな、汝らがそうするべき時節は終わった」

事情を知っていると何言ってんだ張本人が、と突っ込みたくもなるが、そこはぐっとこらえる。

しかし、一応ルルシアを演じてはいるんだね。

そりゃそうか。

ただの司亜人じゃ、よろしくないものね。

でもその効果はてき面で、この世界の住人だった者たちは次々に動きを止めた。

そして、それによって、元タブーのモンスター達も、襲ってこない相手に対して危害を加えようとすることは無く、双方に静寂が溢れだす。

「かなり苦しい思いをさせた、すまない、ここにいる慈愛の神が蘇らせてくれたおかげで、そして別の神が汝らの行動を止めてくれたおかげで表面上は被害も無く終わったが」

司亜人は「表面上は」の部分を強調した。

うん、ボクも同じ気持ちだ。

こんなもの、被害が無く戦争が終結した、なんて言いたくない。

被害ばかりだ。

全員が全員、傷を負っている。

負わされている。

それが戦争だ。

ここでアリスの事を別の神、と言ってのける司亜人の意外な弁舌に驚きつつも、ボクも自分の気持ちを整理しておく。

次はボクの番、らしい。

司亜人がもう混乱を止めてくれてるのに、これ以上ボクが何を言うのさ。

なんて思っていると。

「ただ一つの大きな犠牲を除いては、な」

司亜人の張りつめた声が、哀愁を奏でる。

犠牲。

そうだね、忘れちゃいけない。

「我は、いや、俺は、ルルシアじゃあない、支配の神ではない、支配の神は、死んだ」

はっきりと、司亜人は告げる。

事実を。

自分の罪を。

「俺は別な世界からやってきた、別の世界のルルシアだ、この世界を乗っ取りにきて、その際邪魔だったから、ルルシアを、この世界の自分を殺した」

すぐ隣でツナギが弱々しく首を振る。

自分がやったのに、と言いたげな、沈痛な顔で。

どちらにせよ、指示した側と実行した側という違いだけだ。

事実は何も変わらない。

「今はその気はない、もう元の世界に帰ることにした、けれど、罪を犯したまま消え行くことについては、申し訳ないと思う」

ざわめきが復活する。

殺し合いこそ始めようとはしないものの。

突然のルルシアだと思っていた者が、別な存在であり、しかも本物は死んでいる、殺したというのだ。

これを騒がずにいられるほど彼らは冷静ではなかったし、ルルシアという存在は小さくなかった。

この世界におけるルルシアの影響力を考えれば当然とも言えるが。

不安や混乱はやがて無関係のはずの周囲へのストレスへと変容する。

お前は裏で俺の事を狙っていないか。

殺そうとしていないか。

お前実はこの事実を知っていたんじゃないか。

だからそんな冷静でいられるんじゃないのか。

ルルシアがいなくなったらどうやって生活していけばいいのだ。

ルルシアのギルドはどうなる。

町はどうなる。

俺はどうなる。

そうやって溜まりだすストレスはいつか爆発してしまうだろう。

ちゃんとこの後の事考えているのだろうか。

司亜人は毅然としている。

ついでに言えば、繋もザ・ワンも、ツナギも、リンドウすら、ほんの少しも慌てた様子はない。

慌てているのはなんだかボクだけらしい。

いや、もしかしたらこれだって今の大衆と同じ状況で。

ボクが勝手に不安がって、自分だけどうしてこんななんだよ、なんて被害妄想をしているだけかもしれない。

一旦落ち着こう。

とか。

考えていると。

こんな嫌なタイミングで。

最悪も最悪、狙ったかのようにピンポイントで。

司亜人はボクにマイクを放ってきた。

「は、これボクにどうにかしろと!?」

しかし司亜人はボクに目もくれずに、その場に座り込んだ。

な、なんなんだよ。

「どうもしなくていい、いや、どうにかしようなんて考えるな」

ザ・ワンがいつもみたいに、道を示してくれる。

彼は言い方はぶっきらぼうだけど、ついでに発想が一々意味不明だけど、こういう所は好感が持てる。

ツナギとのことがなければもう少しね。

「言ったでしょ、ナギの言葉でいいんだよ」

ツナギも続く。

そうだね、そう言われたけどさ。

どうしたらいいのかよくわかんないんだよね。

「ただの独白で、いいと思うよ」

そこに更に、繋も加わる。

ただの独白、って。

なにを告白したらいいのさ。

どう始めたらいいのさ。

ここで間違ってしまったら。

ボクの言葉が届かなかったら。

ボクの言葉が本物でなければ。

戦争がきちんと終わらせられないかもしれないじゃないか。

「難しく考えるな、お前の言葉は届くって、そうだな」

やけに恥ずかしそうにザ・ワンが続けた。

更に一拍置いて、ザ・ワンは言った。

「『聞いて、私の、物語を』とか、『聞こえてますか、届いてますか、感じてますか』とかから始めてみればいいだろ」

「あっ」

何故かザ・ワンの言ったことにツナギが反応したけれど。

なるほど、そうだね。

それなら話し始めれそうかな。

最後にもう一度だけ確認しておく。

「本当に、そのまんま、ボクの想いだけでいいんだね?」

「もちろん、聞かせて、欲しいな、神様」

ツナギが即答する。

ならいいか。

話してみせよう。

ボクの話を。

ボクの声を。

ボクの言葉を。

ボクの心を。

ボクの物語を。

伝えてあげよう。

まず始まりは、ザ・ワンの例に倣って。


「聞いて、ボクの、物語を」

「聞こえてるよね、届いてるよね、感じてるよね」


ちょっぴりボク向きにアレンジして。

さぁ。

語ろうじゃないか。

ボクの願いを込めた、神様の物語を。

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