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NAGI ―神様と共に私を見つけるまで―  作者: 安藤真司
NAGI編 2 ―Taboo War―
63/72

神様が繋がるまで

「なんか、さっきからおかしくない?」

「おかしい?何が?」

「なんかさ、多すぎない?邪魔」

「確かにそうだな」

「ね、ちょっと、ペースを、落として、欲しいっ、なっ」

「そういうわけにもいかねぇだろ、この数じゃ」

「ま、駆け抜けるしかないよね」

「あーもうっ、やっぱ残れば良かったかなぁ!」



とにかく走るボク達。

目指すは、世界の中心。

リンドウとアリスに、場合によってはセレスも加担してくれると信じて、戦場を全面的に任せてボク達はツナギと司亜人の元へと全力で駆けていた。

一応メインとしてボク達を殺そうとしていた多くはそこで足止めを喰らっているはずだけど。

元がかなりの数だ、どうにも戦場となっていたタブーだった領域を越えてアンダーワールドだった領域くらいには到達しているんだけど、一向にボクらに対する敵の数が減らない。

それはいいのだけど。

わかっていたことなのだけど。

しかしそれにしても数が多すぎる。

そう、多すぎるんだ。

ここの辺りは町のある場所とは違って、別に入り組んでいたりはしない。

真っ直ぐボク達の軌跡を辿れるはずがない。

見張りでもいるのか。

それとも司亜人かツナギにそういう力があったりするのか。

考えても仕方がないし、今はもう前に進むしかないので、ボクとザ・ワンがとにかく前で剣を振るい、道を切り開き、そこに繋とリアンが続く。

ザ・ワンは石の剣を。

ボクは木の剣を。

なんだかあべこべコンビみたいになっているけれど、初めて前線でタッグを組んで戦うにしてはなかなか息が合っている。

や、ボクは太陽の剣なんだけどね。

それはいいか。

正直普通に突っ走っていてもどうにもならない。

ザ・ワンとボクの絶妙にギリギリの所で重なる姿勢や攻撃が、今のボク達をかろうじて前に進ませていた。

剛腕を隠す事も無い巨躯を駆けて男が拳を正面からボクにぶつけんとする。

ボクはそれを視認して、しかし後ろを振り向いて、太陽の剣を大きく横に薙ぐ。

闇を飲み込む波動が刃となって、リアンに手を掛けようとしていた何某かを斬りつける。

と同時にボクの背後、つまり進行方向でズン、と鈍い音が聞こえてきた。

ボクはその様子を確認することもなくすぐに宙返りをして、進行方向にいる別の誰かに太陽の剣を直に突きつける。

一撃で首を叩きつけ気絶させると、二、三人が真横に吹っ飛ばされていく様子が視界の端に映りこむ。

そしてまた次に襲い掛かる脅威を順にこなしていく。

こんな命の駆け引きをもうずっと繰り返している。

たぶんまずい状況ではあるんだろうけど、不思議と不安はない。

なんとなく、いつまでだって、戦える気がする。

別にザ・ワンと一緒だから、とかそんなのは関係なくって。

ツナギじゃあるまいし。

っていうかツナギのための戦いだし。

いや、それはさすがに嘘かな。

まぁ、ボク自身の為に戦っているというのにその意味をツナギに、それも勝手に求めるのはお門違いもいいところだろう。

これはボクのための戦いだ。

だから、だからだ。

だからどこまでだって戦えるような気がする。

存在しなかったはずの、『ボク』なんて存在が、求めているというのだ。

過去なんて関係なく。

しがらみも本物も偽物も関係なく。

こんな所まで真っ直ぐ走ってきてしまうほどに。

ツナギとの日常を、取り戻したい。

もう今更過去なんて、いらない。

「どっ、けぇ!!」


一時は際限なく続くと思われたボクらの戦闘は、しかしボクとザ・ワンの連携に勢いを失くした相手が出てきた辺りからかなり楽なものとなり、ついには相手はこちらに攻撃してこなくなった。

どうやら無理やりにでもボク達に向かってくるほどの支配は受けていないらしい。

と、いうか司亜人にも支配の力があるのかどうか、実際まだ確認もしていないしなぁ。

んー、それにしたってタブーで出くわした戦場とは打って変わってこの辺りの敵は、数の割に諦めがいい。

何か理由でもあるのかな。

まぁ、向かってこないなら向かってこない方がよほどありがたいことだ。

何よりの心配は繋とリアンのことだったし。

ボクとザ・ワンのことは何一つ心配していなかったからね。

さて。

目の前にそびえるは、本日幾度目か、もうなんだかわからないくらいに訪れてきた、ギルド。

思えば今日はなんだかものすごーく盛り沢山な一日だ。

次元の神、グォールを殺した。

この世界の真実を知った。

それで、繋に出会った。

ツナギを失った。

ルルシアの真意を知った。

再びツナギに出会った、司亜人にも出会った。

ルルシアが目の前で死んだ。

繋の闇を切り裂いた。

セレスがベルを想う何かを知った。

それで今ここにいる。

沢山の想いと。

挫折と。

純なる願いを秘めて。

本当に、長くて短い道のりだったよ。

ここまで来るのに、どれだけの想いを犠牲にしたのだろう。

覚えていない。

ボクは多くの命を奪ってきたし。

ボクはツナギ以外の多くの存在をないがしろにしてきた。

ボクは、でも、さ。

どうしてこんなにも、ツナギのことを想っているんだろう。

いや、そういう気はないってばだから。

そりゃ、確かにすごく大切な家族だ。

初めて想いを通じ合わせた相手でもある。

だから、ここまでしてるのかな。

本当かなぁ。

そんなことだけで、そんなことと言うには色々と違う気もするけど、そんなことだけでボクは動くだろうか。

ボクの心は突き動かされるのだろうか。

わからない。

自信はやっぱりなくって。

ベルほど純粋には生きれないし。

繋やルルシア、司亜人ほど感情の爆発を起こしているわけでもないし。

でも。

ボクはここに来た。

ここまで、来たんだよ。

これが何なのか、確かめるために。

確かめるまでもなく、何なのかをわかっている自分を、証明するために。

ボクが、ここにいることを、誰かに知らせてやるために。

誰かというか、ツナギに、思い知らせてやるために。

ついでにツナギにも、自分がここにいることをちゃんと理解してもらわなきゃならない。

勝手に消えて勝手に男といちゃいちゃして、勝手にボク達を殺そう、だなんて、あほらしい。

ツナギらしくもない。

ツナギには自分てものをよーく、よーく見つめ直して貰わないと困っちゃうからね。

さ。

だからボクはここにいるんだよ。

ねぇ。


「聞こえる?ツナギ」

「来たね、ナギ」


ルルシアのギルド、『オール』、と呼ばれる、大きな建造物。

その外観についてはとりあえず置いておいて。

オールの外壁そのてっぺん、つまりは普通に考えたら立つような場所ではないはずの場に、ツナギはいた。

その横には司亜人もいる。

ツナギは妙に司亜人に寄りかかっている。

気持ち悪いな。

しかしながら、真っ直ぐにボクのことを見据えている。

ボクが、ここに来ることを、信じて疑わなかったかのように。

信じていたから、外に出てきたんだろうけど。

っていうか、ちゃんとボクの質問に、応えろよ。

「ね、聞こえてるのかな、ツナギ」

「……なんの話だか、わかんないな」

「そっか、なら、これからわからせてあげるって」

「……よくわからないけど、もちろん受けてたつよ、私にまで届くなら、ね」

随分と好戦的な話し方だ。

いや、ツナギはそんなもんだったか。

ボクとかベル以外には。

まぁ正直よく覚えてないや。

ごめんね。

ボク達以外にどんな言葉をかけていたかなんて興味がなかったからね。

仕方ないって笑ってくれたらいいさ。

「司亜人、本気?」

今度は繋が、司亜人に確認の言葉を投げる。

それもやっぱり、届くはずもないんだけど。

「何が?」

「この世界で、そこにいる、ツナギと共に生きていく、なんて」

「この世界こそが、求めていた世界だよ」

「でも」

「俺の求める繋は、ここにいる鈴鳴繋だよ」

そして決定的な言葉を、繋にぶつける。

「君じゃない」

その、明確な、拒絶以上の意思でもって繋を排除した司亜人は次に、ザ・ワンへと目を配る。

ザ・ワンの方も、ずっと頭上のツナギと司亜人のことを睨んでいる。

既にその片腕は石剣に掛けられており、今にも駆け出して目の前の建物を丸ごと破壊しそうな勢いだ。

ピリピリとした空気が全身から滲んでいる。

空気が割れてしまいそう。

しかしながら、ザ・ワンの殺気に対する司亜人の邪気も同時に膨れ上がっている。

「やぁ、ムーくん」

「お前に呼ばれる筋合いはねぇよ」

「繋に呼ばれる筋合いならあるとでも言うのかい?」

「それもねぇな、今の繋には」

ザ・ワンが「繋」と言った瞬間に司亜人が顔をしかめる。

どうやら名前を呼び捨てにしたことが気に入らないらしい。

「気に入らないな、君の存在が」

「奇遇だな、俺もだ」

互い、交差する視線の中に爆発する機を探る。

ボクも同時に、力を込める。

ふと目にした太陽の剣が心なしか、さっき手にした時よりも眩い気がする。

なんて。

一瞬目を話した隙に、ザ・ワンは駆け出した。

「あ」

ボクは完全に出遅れながらも、しかし続くように走り出した。

司亜人は怒りを前面に出しつつも、少しも冷静さを欠いていないことを確信させる表情で、構えた。

ザ・ワンは最初からまともなルートで進む気がないらしく、外壁をそのまま自在に駆け上る。

その姿はさながら重力が真横に働いて、壁に吸い寄せられているかのようだ。

ボクは残念ながら、ねぇ。

特別な力は失ってしまったから、真っ当に中に入って進むしかないかな。

しかし、見るにギルドが開いているはずもない。

じゃやっぱりどうにか外を登ってくしかないか。

どうしよう。

走り出したはいいけど、こんなにあっさりと詰まってしまうだなんて。

人の身ってすごく辛いんだね。

こんな不自由なのは久しぶりすぎて中々厳しいものがある。

それもこんな大事な時にさ。

愚痴っていても仕方がないので、どうにかしなきゃだね。

「ね、力を貸して、繋」

「え、う、うん」

「うん、ありがと」

繋の闇を、光に変えてしまう、そんな力なら。

なんだって出来るはずだ。

「せー、のっ!!」

太陽の剣を思い切り地面に叩きつける。

反動でボクは宙へ浮かぶ。

真っ直ぐ、ツナギの所へと。

行け――なかった。

「んん、あれれ?」

横を見れば、壁を駆け上った筈のザ・ワンも同様に地についている。

「な、何が起きたの、今?」

「決まってるだろ」

でも、混乱しているボクに反し、ザ・ワンには状況が理解出来ているみたいだ。

いや、そのザ・ワンの言葉にボクもすぐに察することが出来たんだけど。

「それが、お前の力か、司亜人」

「ご挨拶だね、個体の神」

「なるほどな、繋はこの世界ではお前の事を『なかったこと』にしたがったからな」

「そういうことになる、みたいだねそれに関しては感謝しているよ、そこにいる繋にもね」

司亜人は微笑を浮かべる。

ザ・ワンは苦々しく、繋を見る。

二つの視線の先に、繋がいる。

繋は、申し訳なさそうに、ただ、縮こまっている。

ボクも珍しく、もないけれどちょっとだけ恨みの目線を繋に向ける。

もう過ぎたことだけど、たまに、こう、繋は良くない事態を平気で引き起こすよね。



「この世界に起きる事象を、『なかったこと』にする力、それが俺の力さ」



そんな悲しい力を持つ司亜人は。

悲しさの一切ない、歓びに満ちた笑顔でそう言った。

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