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NAGI ―神様と共に私を見つけるまで―  作者: 安藤真司
NAGI編 1 ―支配の神―
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神様が思考するまで

擬態の神、ニスク。

神なんて皆大体そうだけど、その力は文字通りのものだ。

擬態する。

ニスクは世界に擬態する。

なんにだって擬態して、誰かが求める理想の相手を演じるのだ。

ニスク自体は見たことも聞いたこともない何かに擬態したとしても、相手の持っているイメージを受け取れば、その記憶すら自分のものに出来る。

擬態している間は、という限定条件付きだが。

しかしながらこの能力はすなわち、完全に他の存在になり替われる、ということで。

普通に聞くとかなり怪しく危ない神様のように思えるのかもしれない。

だが、ニスクはそれをしない。

この力は誰かを悪い意味で騙すために使うものではないと考えている。

いい意味で騙す、なんてことが世界にあるのかどうか。

誰にもわからないけれど。

とにかく、誰でも会いたいと願う親しい間柄の者がいるわけで。

そんな誰かにニスクは擬態してあげることで。

その一瞬だけ、心の隙間を埋めてあげている。

きっと、優しい神様。

でも、倒さなきゃ。

ボクの前に立ちはだかるなら。

「ツナガ」

「待て」

って、戦闘を始めようとしたボクを隣のザ・ワンが手で制した。

「なに?」

「いや、擬態は先に破っておいた方がいいかと思って」

「……へ?」

と、なんか言うとすぐにザ・ワンは腕を大きく横に振るった。

するとなんだか嫌な感じの空気が周囲に立ち込める。

あー、これはひょっとして。

力が抜けていくのがわかる。

なるほど。

こんなことも出来るんだこの神様。

これが、能力が使えない状態、ね。

見れば、ニスクの姿がゆっくりと捲れていっている。

そして現れたのは、大空の神、ソラ。

ぬぬ。

つまり、ルルシアの部下であるソラとニスクが同時に立ちふさがっている、と。

ニスクには、勿論自分以外の誰かを擬態させることも出来るもんね。

まぁ、それはいいとして、ニスクとソラが関わっているんだ。

どうせルルシアに仕える三柱。

残りのチノーイもどうせ参戦しているんだろう。

っていうか何も言わずに能力無効化しちゃうザ・ワンさん怖いわ。

それボク達も何も出来なくなるからね?

いや、あなた一柱で十分なのかもしれないけどさ。

……。

十分なのかな。

ひょっとして。

三対一で勝てる見込みがあるのか。

実はあんまりザ・ワンの戦闘ってきちんと見たことがなくってね。

確かジャンベルと戦った時に一応少しだけ見たことはあるんだけど、そんなにしっかりは覚えてない。

だから、強い、ってことは知っているんだけど、そんなに強いのかがよくわからない。

大丈夫なのかな。

ちょっとだけ心配だ。

「……大丈夫なの?」

「あぁ、問題ない」

「本当に?」

「信じろとは言えた身じゃないが、まぁ」

「ふぅん、じゃあ信じるよ」

ツナギが信じた神様を疑う理由がない、なんて言ってたくらいだしね。

信じよう。

隣のベルもうんうんと頷いている。

「大丈夫だと思う、です」

とのことらしいからボクは次の行動を考えることにした。

さて。

ルルシアの元に行ったとして。

どうやって止めようか。

そもそもルルシアはどうやって繋をツナギの体に入れようとしているんだろう。

その辺りがよくわからない。

全く方法が浮かばない。

だから、それを阻止する方法も今一つ浮かばない。

これはだから、ルルシアから、その方法なりなんなりを吐かせる必要がある、ということに他ならない。

「難しいな……」

「ん、何か気になることでも?」

「いや、ザ・ワンは今この戦闘に集中しててもらって大丈夫」

「いや、お前も一応周りに注意は払っとけよ、最低でもあと二柱はどっかに隠れてんぞ」

「それは、まぁ、ボクの愛する家族が何とかしてくれるから」

「です」

「そうかよ」

何かアラートがあればベルが知らせてくれるはず。

そんな信頼関係があることを密かに嬉しく思いつつ。

思考を元に戻す。

それと同時にザ・ワンが前にものすごい速さで走り出した。

能力が全くないはずのザ・ワンだけど、意味がわからない速さだ。

目で追いきれない。

まぁ、あれなら平気そうかな。

ボクはボクでツナギのことを考えていよう。

「ベル、これからちょっと独り言をたくさん言うけど気にしないでね」

「了解、です」

ザ・ワンが振りかざした石剣が鋭くソラの腹部を捉える。

しかしすんでの所でソラは逃れたようだ。

「でも、結局、どういうことなんだろう、本物になりたいっていうのは」

ソラが背に隠し持っていたらしいナイフをザ・ワンに突きつける。

ザ・ワンがそれに対処しようと石剣でナイフを弾こうとする。

しかし次の瞬間、ザ・ワンが石剣をソラのナイフとは真逆の方向に石剣を振るった。

「わからないな、過去を取り戻したいってずっと願っていたボクだけど、一体何がそこまで、本物を求めるんだろう」

銃声が鳴り響く。

直後、石剣に何かがぶつかる音がする。

少し離れた所から銃で狙っていたのか。

ザ・ワンは銃弾を防ぐためにソラに背を向けてしまったので、もろにソラのナイフを喰らってしまう。

ここまで何か嫌な音が聞こえてきた。

「偽物の世界にどうやって本物の繋を呼ぶんだろう、それで、どうやってルルシア自身は本物の世界に行くんだろう」

再度銃声がパン、パンと間を空けて鳴り響く。

体勢を若干崩したザ・ワンの腹から血が二点、零れ落ちる。

さらにソラがナイフをザ・ワンの、恐らく顔に向けて突き刺そうとする。

「それで、本物の世界に仮に、仮に行けたとして、ルルシアは、何がしたいんだろう、本当に、本当にそれが目的なのかな」

ザ・ワンが左手でソラのナイフの腹を抑える。

ソラが驚きの顔を浮かべる。

そして、ナイフを支点に、ソラは銃声のした方向へと投げ飛ばされる。

投げ飛ばしたザ・ワンもすごいけど実はずっとナイフを掴んでいたソラもすごいよなぁなんて思ってしまった。

むしろなんで離さなかったんだろうと不思議でさえある。

「本物になれたら、本物の世界に行くことが出来たら、例えば、ボクなら何がしたい?」

ソラを受け止める人影が。

彼もまた見覚えがある。

記録の神、チノーイだ。

なるほど、まずは擬態の神ニスクが現れる。

するとあと他に二柱いると疑うことになり。

遠くからが銃で襲い。

それを対処すると残りは大空の神のみ。

と思いきや、既に現れたニスクは実は大空の神で。

離れから空を操る神の登場を気にしているとすぐ近くの偽物が大空の能力で襲い掛かってくる。

そんな作戦だったのだろうか。

でもまぁ、こちらには能力を無効化できるザ・ワンがいたからね。

……でもそれを向こうは知らなかったのかな。

「本物の世界に行ったって、ボクが本物になるわけじゃない、偽物の世界に本物の繋が来たとしても、偽物にならないのと同じだ」

と、ナイフを背中に受け、銃弾を二発喰らったはずのザ・ワンがなんともなしにソラとチノーイに向けて石剣を振りかぶる。

その中途で軽くジャンプして、そのまま空中でソラとチノーイの二柱に石剣を当てる。

そして、落ちると同時に石剣を地面に叩きつけた。

地面が大きく振動する。

ボクにはわからないけれど、何となくザ・ワンが耳を澄ませる感覚がある。

地面の振動の様子でも音から読み取っているのだろう。

そんな芸当が出来ても驚くには値しない。

「なら、本物の世界に行くことに、本当に意味はある?そこに本当に目的がある?もっと他に、何か、何かあるんじゃないの?」

ザ・ワンがまた別な方向に走り始めた。

きっと、本物のニスクの位置がわかったのだろう。

どうせ今のザ・ワンの前では擬態も出来ない。

ザ・ワンが物陰に入った先ですぐに鈍い音が聞こえた。

どうやら終わったらしい。


「……何が、あるのかな」

「それを確かめに、行く、です?」


偽物には本物がわからない。

本物にはきっと偽物がわからないだろう。

互いに相容れぬ関係のはずだ。

偽物は本物でありたいと願うが本物にはなれない。

本物は本物であることを意識せずとも本物であり続けなければならない。

偽物は本物であり続けたいと願っても偽物でなければ自身の存在を確定できない。

ルルシアの意図がなんなのか。

ボク達はわからないから。

だから、戦うんだ。

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