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NAGI ―神様と共に私を見つけるまで―  作者: 安藤真司
NAGI編 1 ―支配の神―
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神様が真実を考えるまで

この世界は偽物だった。

それは文字通りの意味で、だ。

偽物の世界。

つまり、本物が別にあるということ。

偽物というものは、本物に似せて作ったものだ。

似せているだけで。

本質は全く別物だ。

この世界は偽物である。

本物に似せて作られた世界。

この世界が偽物だと言うのなら。

この世界を創りだした何かがいるはずで。

ボクはそれが誰かを知った。

でも、聞いた時に、何故か納得してしまったんだ。

これもまた、ルルシアの言っていた言葉通りだったからからかもしれない。

或いは、初めから気づいていたのかもしれない。

どちらにせよ、ボクにはそれが事実なんだって感覚があった。

そうだ。

この世界は、鈴鳴繋が創った世界だ。

正確には、『本物の鈴鳴繋』が創った世界だ。

ボクにはわかる。

神とか、そういう概念じゃあない。

繋はただ、純粋にこの世界を創ってしまったんだ。

それが一体どんな想いからなのかは、わからないけれど。

ボクの知らない本物の繋はこの世界の外側。

アンダーワールドとかタブーとか、そういう空間的なものでもなければ次元を操ったどこかでもない。

ただ、この世界の外側に存在している。

そこがどんな世界なのか全くボク達には想像もつかない。

本物の繋がその世界で何か特別な存在なのかどうかもよくわからない。

でも、とにかくだ。

この偽物の世界は鈴鳴繋によって創られてしまった世界らしい。

だからボクなんて存在は本当はいない。

ベルも、リアンも、誰もかも。

この世界にある物全てが偽物だ。

そのことにどうやってルルシアが気づいたのかは知らない。

そこまで話されはしなかった。

でも、ルルシアはこう言ったのだ。

偽物であることを知った偽物は何を望むのか、と。

普通なら。

きっと。

こう思うのだろう。


偽物ではない、本物になりたい、と。


本物になりたいと願うルルシアはしかし、まずは本物をこちらの世界に呼び込むことを考えたらしい。

本物の鈴鳴繋を偽物の世界に呼び出して、自身も一緒に本物へと還るのだと。

筋は、通っているのかもしれない。

けれど、ね。

実は、ボクはこのルルシアの発言に疑問を抱いている。

本当にそれだけなのだろうか。

ルルシアの願いとは。

本物になりたい。

そんなことのために、世界を犠牲にしてまで。

邪魔になりそうなものを殺してまで。

叶えたい願いなのだろうか。

なんだか、もっと続きがあるように感じた。

もっとずっと、ルルシアが本物のその先に願う何かが。

この話を聞いてボクは、ボクとベルはまず途方に暮れた。

この世界は偽物である。

本物が別にある。

この偽物の世界は本物の世界の鈴鳴繋によって創られたものである。

その鈴鳴繋は、偽物の世界に自分自身のクローンを作成した。

それがこの世界におけるツナギであった。

ルルシアはこの世界の鈴鳴繋の意識を自然に本物へと還し、そして空いたこの世界の体に本物の鈴鳴繋の意識を入れようとしている。

そして、今度はその本物の鈴鳴繋と共に、本物の世界へと旅立とうと言うのだ。

自身が偽物だと知ったルルシアが本物を追い求めようという計画。

それを止める権利は、ボク達にはない。

そう思った。

ボク達だって、自分が、自分がいるこの世界が偽物だなんて信じたくないし。

偽物だと言うのなら、本物を教えて欲しい。

でもなんとなく思ったんだ。

ここが本物の繋の創った世界なら、ね。

きっと、繋が。

願った世界なんじゃないかって。

ツナギがいて。

ボクがいて。

ベルがいて。

神が、神擬きが、人がいて。

神様には序列があって。

そんな序列に縛られた哀れな神様、ボクと出会って。

そして、ベルと出会って。

リアンも交えて水遊びしたりして。

そんな世界を、本物の繋は願ったんじゃないかって。

願ったってことは。

本物の繋にはこんな世界はなくって。

ないからこそ、もっともっと、って願ってしまって。

今、ツナギが、繋が。

どういう状態にあるのか、ボクにはわからないけど。

この世界のツナギが何かしら干渉してしまっていると思うと、きっと本物は混乱しているんじゃないかなって。

それはよくないよね。

それに。

それにね。

願うことは悪くない。

ツナギはボクに前に進む力を願ったし。

ボクはベルに立ち止まる力を願った。

でも、それは結局自分を奮い立たせるための力なんだ。

自分で動くための願いなんだ。

本物の繋がこの世界を望んだとしても。

この世界にやってくることは良くないことだと思う。

だってそれは、ただ逃げてることになってしまうから。

本物の世界に生きる繋には、本物の世界の繋がりがあるはずで。

ボク達に頼るなんてことは、きっとしちゃいけないと思う。

それに、して欲しくない。

単なるボクの我儘なのだけど、本物の分際で何を悩むことがあるんだって。

いや、本物も偽物ももしかしたら大した差はないのかもしれないけど、それでも。

本物の繋は繋なんだから。

本物の世界でなんとか頑張ってほしい。

さて。

それで。

ここまで理解したのだから。

ボクもこのままでいるわけにはいかない。

行動しなければならない。

本物が本物らしくあるために。

ボク達の偽物を取り戻さなくてはならない。

だからボクは決めたんだ。

まずはルルシアの計画を阻止する。

本物の鈴鳴繋の意識がこの世界のツナギの体に宿らないようにする。

別にルルシアが本物になりたいと願うことは勝手だけど、そのことでツナギに何か良くない影響があるならそれもまた叶えさせはしない。

それに、この偽物の世界についても、同じく。

たぶん本物の繋が願って創られたこの世界だけれど。

だから正しい姿としては全てが本物の繋に還ることなんだと思う。

けれど。

出来ればそれすら阻止してやりたい。

もちろん、繋が自分のやったこと全部を受け止めて、その上でこの世界を終わらせると言うならボクらにそれを拒む権利はない。

でももし、そうじゃないなら。

なんとなく気まぐれでこんな世界を創ったというなら。

それなりに責任をとってもらなわきゃ困る。

勝手に創られたボクらがせめて幸せに生きていけるような世界を存在させたままにしてもらわなきゃ。

ボクには既に何千年と歴史がある。

自分を失くしたまま無為に過ごした年月の積み重ねが。

それが全部繋の仕業だというなら多少なり憤りを感じたっていいはずだ。

ボクはそんなに優しくはないよ。

全く全く。

とにかくボクはこの優しい世界をそのままに、本物は本物のまま、偽物は偽物のまま存在するように動くつもりだ。

方法は、全然浮かんではいないけど。

これまたくよくよ悩んでもいられない。

今、ボクの横には大切な家族と、心強い戦士がいるんだから――。


ボクとベルとザ・ワン。

三柱並んで、一歩一歩そこに地面があることを確かめるようにゆっくりと歩いていく。

目的地は無論、ルルシアのいる所だ。

「それで、ザ・ワンはどうやってこの世界のことを知ったの?ボク達はルルシアから直接話を聞いたんだけど」

「あぁ、俺はまぁ、考えた」

「……考えてわかるようなもの?」

「つっても、ルルシアが言ってたろ、『本物の鈴鳴繋を頼んだ』とかなんとか」

「まぁ、言ってたね」

「ルルシアはな、嘘をつかないんだ、ほとんど何を考えてるのか話さねーけど」

「へぇ」

「だからたぶん、そのままの意味だと思ったんだよ、きっと本物の繋がどっかにいて、俺の知っている繋は偽物なんだろうって」

そう話すザ・ワンの雰囲気が急に寂しいものになる。

その真意までは伺えない。

ザ・ワンといい感じに仲が良かったツナギなら、わかるのかもしれないね。

「もしそうなら、きっと、この世界も偽物なんだろうって、なんとなくわかったんだが……」

「何か気になることでもある、です?」

「ルルシアの願い……ルルシアは昔にもタブーに攻め込んだことがあってな、それも繋のことを探してのことだったのか、ってそこがしっくりこなくてな」

「ボクもルルシアにはまだ何か裏があるような気がするんだよね、それに、この世界全部が繋の創ったものなら、ルルシアが本物になりたがることも本物の繋の想いなのかなぁって」

「確かにそれは変、です」

「でもそう考えるとそれを止めようとする俺たちの存在も繋の想いがあってのことなのか、って何がなんだかわからなくなってくるんだよな」

「それもそうだね」

今のボクの行動が繋の願いであることの証明はできない。

繋の願いじゃないことの証明もできはしない。

だから考えてもわからない。

もしかすると、全部全部繋の思惑通りに世界は動いてるのかもしれない。

ボク達はそれでも自分の意思で進むしかないわけだし。

すると、ベルが何か小声で呟いた。

「……手紙、です」

「ん?どうかした?」

「手紙は、手紙の意味は、なん、です?」

「手紙?」

「繋の持っていたって手紙か」

「あぁ!」

忘れていた。

完全に頭から抜け落ちてた。

こんな近くにヒントがあったのに!

そうだ、手紙。

ツナギが目を覚ました時に持っていたってあの手紙。

紙に書いてあった日記の一部みたいなあれには。

ツナギの探し求める『私』と『彼』と、『鈴鳴繋』の三人の登場人物がいた。

もし。

もしあれがこの本物と偽物の世界に何か関係があるとすれば。

「……いやでも、よくわかんないな」

手紙の『私』が本物か偽物か、鈴鳴繋である確率は高くなってきたように思う。

けれど、なら、『彼』は一体誰なんだろう。

『私』は『彼』を好きだと書き残していた。

ずっとではないかもしれないけれど、こんな日々が続くだろうって。

恋人を想う『私』の独白であったはずだ。

『彼』。

もし、繋が書いたものであれば、それは本物の世界にいる恋人の事を指すだろう。

その『彼』なる人物がこの世界に反映されているのかどうかはよくわからない。

もし、ツナギが書いたものであれば、それは。

誰を指すんだろう。

そのまま考えれば、ツナギが好きになっていた(と思う)ザ・ワンのことを指すのだろうけど。

記憶を失う前にツナギとザ・ワンが出会っている風ではないし。

でも、あとこの世界で大きく関わったのはルルシアくらいだ。

実際にはルルシアとツナギはほとんど話をしてはいないけれど。

怪しさで言えばルルシアはかなり怪しい。

ただ、そうするとやっぱりルルシアが本物の世界に行く理由がよくわからない。

それにツナギの記憶がないことも同じくよくわからない。

でも確かに、この辺に何か見落としていることがあるような気がする。

それも、大きな間違いに気付いていないような、そんな感触がある。

なんでだろう。

もっと、たくさん、色々なことが分かった方が交渉材料が多くて助かるんだよね。

ボク達はツナギを取り戻したいから、ルルシアを力でどうこうすることに意味がない。

そもそも序列1位のルルシアに果たして真っ向勝負を挑む理由もない。

冷静に、事実を並べて白状させた方が良いだろう。

わからないことが沢山ある。

そうやってあれこれを議論しながら歩いていると。

歩くボク達の前に、どこかで見覚えのある神が立っていた。

いや、どこかで、なんてもんじゃない。

よく知っている。

ここ最近、よく見かけていたから。

名前を呼んでやる。

「何か、用かな、擬態の神、ニスク」

そう、前に立っていたのは、ルルシアのギルドの幹部、神様序列9位の擬態の神である。

「お前らは、行かせない」

ただそれだけ。

それだけを口にして。

ニスクは襲い掛かってきた。

「なるほど、足止めか、こりゃ順番にニスクとチノーイとソラを相手することになりそうだな」

「それ、結構きつくない?」

「だが、やるしかねーだろ、あっちもその気だろう」

「……そっか、よし!!」

気合を入れて。

神に相対する。

一歩だって引かないように。

ルルシアのギルド本部まで、あと少しだ。

さぁ。

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