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NAGI ―神様と共に私を見つけるまで―  作者: 安藤真司
NAGI編 1 ―支配の神―
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神様が歩み始めるまで

「じゃあ、そろそろいいかな」

ボクはルルシアに語りかける。

グォールとの戦いがあっという間に終わり、というかルルシアがあっという間に終わらせ。

色々と複雑な思いを吐き出して、またベルに助けられた直後。

落ち着きを取り戻した内にボクは真実に迫りたい。

焦っていても何も得られないし、落ち着き払っていても前に進めない。

前に進む力は手に入れた。

立ち止まる力も貸してもらった。

ならきっと、しっかり現在位置を把握しながら。

着実に進めるよね。

もう誤魔化させたりしない。

「ルルシア、あなたの知っていることを全部教えて欲しい」

伏せられたルルシアの表情までは伺えない。

「なるほど、神とはこういうこともできるのか……」

と思ったらなんか変なことを呟いた。

「え、なに」

「ふふ、面白い、この世界はそういうことも可能なのだな」

「そういうこと?」

なんだかルルシアは楽しそうに笑っている。

さっきからの豹変ぶりに少し驚きつつも、話を続ける。

「ねぇ、ボクの話聞いてるの、急にテンション上がってるけど」

「あぁ汝は、否、汝達は愉快だな滑稽と称しても差し支えないだろうが」

「それは明らかに馬鹿にしてるよね」

「急に態度が変わったと言うが、それは我の台詞だ」

「……ボクのテンション、上がった?」

「先までの情緒不安定な神の姿が露程にも見えないわけだが?」

「あ、あぁ、それはほらベルが気を遣って」

「それだよ、神とは本来、勝手に願われてそれを叶えることは出来ない」

「……そうなの?」

「つまり先のやりとり、あれだけで汝の気が落ち着くなどありえない、はずなのだが」

そうなんだ。

でも普通に悩みを口にしてすっきりしただけじゃないのかなぁ。

神様とかそんな関係ないような。

「って、そんなことよりも、ツナギのことを聞いてるんだよ」

「ふむ、そこに戻るか」

「どうしても、言いたくないことなの?」

「言ったろう、話しても仕方のない事だ」

そのスタンスは譲らないらしい。

そこにベルが割って入ってきた。

「それは、私達が決めること、です」

ベルとボク、二人に責められてなお、ルルシアは口を割ろうとはしない。

そこまで頑なに、何を拒んでいるのか、それすらわからない。

きっとルルシアなりの何か歴史や想いがそこにはあるんだろう。

でも、でもね。

「関係ないのかもしれない、けど、本物の鈴鳴繋が何者なのか、とかじゃない、ボクは」

ボクは。

「ボクは、ボクが知ってるツナギのことが、知りたいんだ」

それだけ。

その願いがどこまでも暴走して。

ボクは心を閉ざした。

心を闇に染めた。

心に穴をあけた。

自分を二の次にして。

世界を二の次にして。

でも、そんな生き方はもう駄目、なんだ。

ベルに願った今のボクなら、そんな生き方を変えられるはず。

だと思うから。

ルルシアに起きたあれやこれやなんて、ボクは知らない。

ただ、ツナギを知りたい。

ツナギと自分とを繋ぎたい。

「偽物で構わない、ボクの大好きな繋縛の神のことを、知りたいだけ、なんだよ」

そして。

ボクから零れた。

空っぽのボクから生まれた空っぽの言葉が。

ようやく。

ルルシアの鋼何かを溶かすことに成功した。

「ならば、話そう、我の知る、『本物』を」

そして、と続ける。

「『偽物』だけを知る汝らには、先に謝っておくべきなのかもしれんな」

「何を、かな」

「我が『本物』を追っている、ということをだ」

その真意は、図れない。


ルルシアから語られた話から。

そしてボク達は、知ることとなった。

世界の真実を。

ツナギの真実を。



「で、どうする?」

「どうしようか、です」

ルルシアから話を聞き終えて二柱で家に帰ってきたボクとベルは。

途方に暮れていた。

というか、混乱の最中にいた。

きっとボクはルルシアの話を聞いている時、瞠目し続けていたことだろう。

それほど衝撃的なものだった。

ツナギの寝ている部屋に入る。

ツナギはいつも通り、安らかな顔のままだ。

「何が、正しいんだろうね」

「そりゃあ、等しく正しい答えなんて、ないと思う、です」

確かにそうかも。

全員が、誰もが正しいと思える答えなんてものが世界にあるのならば。

誰も悩んだりはしないだろう。

苦しんだりはしないだろう。

何が答えがわからないから。

何かを自分自身で決めて、答えらしきものを出して。

それに向けて真っ直ぐ進んで。

間違えて。

後悔して。

誰かを傷つけて。

生き続けている。

神だって同じだ。

神だって、誰かの願いが正しいのかどうかわからないままに。

叶え続けなければ元の自分に近づくこともままならないのだ。

どんな願いだって叶えなければ存在の証明が出来なくて。

叶えたら叶えたで他の誰かを傷つけて。

序列が上がって神としての自分の存在に近づきながら。

その過程の中で何かを欠落させていってしまう。

結果、辿り着いた自分は自分の知っている自分じゃないのかもしれない。

そんな恐怖と神は戦っている。

何千年も。

「ツナギは、ここにいるツナギは、何を求めるのかな」

ボクのその疑問の答えを知る者は、勿論いない。

ベルは、その場で、涙を零していた。

気持ちはわかる。

痛いほどに。

ボクだって、泣きたい。

「私は、私は、ツナギに救われた、です」

そうだね。

そうだったね。

ボクは何もしていない。

ツナギがベルを助けたんだ。

「私は、本物とか、偽物なんて、知らない、です、ここにいるツナギしか、知らない、です」

そうだね。

ボクも知らないよ。

ここでゆっくり吐息を立てているツナギしか知らない。

だから、ボク達にとっての本物の『鈴鳴繋』は、ここにいるツナギなんだ。

「でも、結局、全部偽物なら、私は、どうすれば、いい、です」

そうだね。

全部偽物なんだよね。

この世界も。

ツナギも。

ボク達さえも。

この世界に本当は神様なんてものはいないし。

この世界に本当は序列なんてものはないし。

この世界に本当は人なんてものはいないし。

この世界に本当は神擬きなんてものはいないし。

この世界に本当はアンダーワールドなんてものはないし。

この世界に本当はタブーなんてものはないし。

この世界に本当は歴史なんてものはないし。

この世界に本当は生命なんてものはないし。

この世界なんてものはない。

あるのはただ、願いがあって、感情があるだけだ。

偽物があるだけだ。

それを知り、ルルシアはそれでも本物を追い求めている。

自分が偽物であることを知りながらも、本物と共に歩むことを望んでいる。

ボクは。

ボクとベルは。

どうしたらいいんだろう。

何も出来ない。

想像以上に何も出来ない。

否。

想像以下に何も出来ない。

考えろ。

ツナギは。

ボク達の知っているツナギは、何を願った。

何を思った。

もしツナギがこのことを知ったら。

どうするんだろうか。

考えろ。

ボクの内側に答えはない。

たぶんベルの内側にも。

でも、今のボクは進めなくっても、立ち止まることが出来るんだ。

「ベル、もう一度、ボクに力を貸して」

「なん、です?」

「立ち止まりたい、しっかり立ち止まって、今を冷静に考えたい、今何をすべきかを」

「言った、です、何度だって、立ち止まらせてあげる、です」

「ありがと、ベル」

「だから、お願い、です、私の分まで、考えて欲しい、です」

「うん、頑張るよ」

そうだよ。

何も出来ないなんてこと。

ない。

今ここにいるじゃないか。

偽物かもしれない。

それでも、ここにいる。

ここにいて、ベルに願うボクは、本物だ。

ボクにとっての本物だ。

そして、隣で寝ているツナギだって、本物だ。

ルルシアが世界の真実に抗い、本物の『鈴鳴繋』を追い求めるように。

ボク達は僕達にとっての本物の『鈴鳴繋』を追い求めればいい、のかもしれない。

結局それが。

無意味であっても。

偽物同士で元気に音楽を奏でるんだ。

今、ここにいるよって。

偽物たちがここにいるって。

本物に気付かせてやるんだ。

答えなんて。

持っていなかったけど。

持っていた。

知っていた。

考えるまでもない。

ボクはボクでベルはベルでツナギはツナギで。

ルルシアはルルシアで鈴鳴繋は鈴鳴繋だ。

「ボクは、止めたい」

真実とか願いとかどうでもいい。

ベルの言った通りだ。

偽物とか本物とかもどうでもいい。

「ボクは、ルルシアを止めたい」

「止めて、どうする、です」

「どうもしない、ただ、止めたい」

「止めても、世界は何も、変わらない、です」

「それでも、本物がここに来るなんてこと、絶対に駄目だ」

「でも、そんなの、今更どうやって、止める、です」

「一つだけ、ヒントがあるの」

「ヒント、です?」

そう。

ルルシアの願いはこのままだと成就するかもしれない。

それを止めるためにはもう、ルルシアだけをどうこうしても仕方がない。

本物に働きかけないとなんだ。

ボクらも、本物に。

どうしたらいいのかはやっぱりわからないけれど。

ルルシアはその話の前にヒントをくれていた。

どうしてそんな風に口を滑らしたのか、やっぱりわからないけれど。

「今のボクが、たぶんヒントなんだと思う」

「ナギが、です?」

「どうして、今のボクにツナギの力が宿っているんだと思う?」

「それは、わからない、です」

「それに、ツナギと同じに、感情が抑えられない時がある」

「……それは、よく、わからないです」

よくわからないっていうのは、ツナギとおんなじ症状だからといって、ツナギと同じなのかは判断が付かないと言いたいのだろう。

勿論ボクにもわからない。

わかっていることなんて、相も変わらず何一つない。

「この状態を、ルルシアも、よくわからないって言ってた」

何故ツナガレをボクが扱うことが出来るのか。

わからない、と。

「でも思うんだ、きっと今、このツナギは本物と偽物を右往左往してるんじゃないかって」

それがどちらかに定まるまでは、起き上がらないんじゃないかな。

もしかしたら、って域を出ないけれど。

「だからボク達の神様が、力を貸してくれてるんだよ」

「もし、そうだとして、どうすれば、いい、です」

「まずはルルシアを説得しよう、それで、でも、本物を、偽物を探そう」

「……結局、何も、変わらない、です」

「変わらなくていいんだよ、変わらないことを願って今ボクとベルはここにいるんだから」

「そう……です」

「うん、そうだよ」

目標が。

決まった。

定まった。

さぁ行こう。

「偽物争奪戦だ」

ボク達は何度でも立ち上がる。

ボクが転んだときはベルが助けてくれて。

ベルが転んだときはボクが助けて。

二柱一緒に転んだときは二柱一緒に立ち上がって。

行くんだ。

ツナギの所へ。


「その答えを待ってたぜ」


打てば響くようにその言葉は飛んできた。

「……不法侵入じゃないかい?」

「だな、まぁ、今は大目に見ろよそれどころじゃないだろ?」

「うん、知り合いの不法侵入なんてそれどころじゃないや」

「どこから、聞いてた、です?」

「聞くまでもねぇよ、俺は俺で色々探ってたんだ、ルルシアの事を」

「なら、もう同じ答えを出したってこと?」

「お前らがそうなるのを待ってたんだよ、ナギ、ベル」

「それは」

「お前の中にいるからだよ、繋が、な」

「だよね」

「惚気、です?」

「惚気てねぇよ事実だろ」

「具体的にはどうするつもりかも、固まってるのかな」

「俺は、俺の力は、きっとこのために使うもんだろ」

「そっか、なら頼ってくよ」

「あぁ、ベル、申し訳ないがお前も頼りにしてるぞ」

「私のことくらい、どうってことない、です」

三つと一つの柱は歩き出す。

一つの願いを携えて。

神様序列32位。

薄倖の神。

そして。

神様序列2位。

個人の神。

そして。

グォールが倒れたことによりまた一つ序列を上げた神。

神様序列4位。

収縮の神。

そして。

収縮の神と共にある。

神様序列同じく4位。

繋縛の神。

四つにして三つの願いは。

動き出す。

偽物の世界を取り戻すために。

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