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NAGI ―神様と共に私を見つけるまで―  作者: 安藤真司
NAGI編 1 ―支配の神―
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神様が君を願うまで

ボクが自分を自分だと認識したのはいつだったろうか。

そして、自分が自分でないと認識したのはいつだったろうか。

ボクは、神様としてこの世界に墜ちてきた。

けれど、この世界に来る前の自分の事を全く覚えてはいなかった。

神様であることはすぐにわかったのに。

自分の力はすぐにわかったのに。

ボクはボクが何なのか、全くわからないままにこの世界に神として放り出されていた。

そんな神があってたまるか。

自分を知らない神だなんて。

そんなの他のどんな生命よりも惨めじゃないか。

だからボクは探すことに決めたんだ。

ボクは、ボクがどんな神様だったのか知りたかった。

不安だった。

もしも嫌な神様だったらどうしよう。

もしも優しくない神様だったらどうしよう。

そんな不安だらけの日々を、もうどれだけ過ごしてきたのかわからない。

神様の時は永遠だ。

勿論、死のうと思えばいつでも死ねる。

でも、それでもボクは生きていたかった。

自分の存在を知らないままに生きていくのは怖いから。

死ぬことよりも怖いと思ったから。

だからボクはずっと、前を向いて生きていれたんだ。

そして。

ボクは。

君と出会った。

ツナギ。

ボクに、初めて願ってくれた女の子。

ボクの、大切な――。

あれ、なんだろ。

ツナギはボクの事を『私の神様』って呼んでくれていたけれど。

そしたらボクから見たツナギは、なんて表現したらいいんだろう。

信者、とか?

うーん、ボクの信者って言うのはちょっと違うような気がする。

まぁ、ツナギはツナギだ。

ボクにとって依然変わりなく。

ツナギはツナギ。

かわいい女の子。

恋する女の子。

自分を失った、ボクと同じ境遇の女の子。

ツナギもボクと同じに記憶がなく、さらに自分が持っていた手紙の中の登場人物も知りたがっていた。

だからツナギは、ツナギ自身と手紙の『私』と『彼』と、『鈴鳴繋』の四人を探していたことになる。

すごいなぁ。

強いなぁ。

ボクなんてボク一柱を見つけるだけで何千年もかけて、しかも心が折れそうになっていたというのに。

ツナギは迷うことなく多くを探していくんだもんね。

あぁ、これは嘘か。

迷うことなく、だなんてボクが一番言ったらいけない言葉だ。

ボクは知っている。

ツナギが、ボクに、ボク達に何も言わずに苦しんでいたことを。

きっと、ボクにもベルにも言えなかったんだ。

ボク達に心配をかけたくなかったから、だろう。

ひょっとすると、ザ・ワンには何か話をしていたのかもしれない。

けれど、ボクは全然ザ・ワンと話したことはなかったからその辺りをきちんと聞けていない。

それに、今それを聞いても仕方がないと思う。

ツナギが彼に話したというなら、ボクらよりも彼の方が適切だって判断した結果なんだと思う。

なら、ツナギの考えを汲むべき、だよね。

その、ツナギ。

ツナギは今、いない。

ボクの傍に、いない。

すごく安らかな顔で寝ている。

寝たまま、ずっと起きてこない。

初めてルルシアに出会ったあの日からずっとだ。

ボクには、全然わからない。

どうしたらいいのか、道を見失ってしまった。

ボクは自分を探すことを、ツナギに手伝ってもらっていた。

ううん、完全に頼りきりになっていて。

だから急にツナギがいなくなっちゃって、また見失っている。

見失ったまま、それでも前に進もうとはしている。

確かに今のボクはツナギに出会う前のボクと違う。

大きく。

だって、一緒にいてくれる人が、神が、いる。

ベルがいてくれる。

ツナギが救った少女。

薄倖の神。

私の大切な家族。

リアンがいる。

ご近所のパン屋さんの一人娘。

元気な笑顔でいつもボクを癒してくれる。

そして、あまり話したりはしないけど。

個体の神、ザ・ワン。

彼もまた、ツナギのことを色々と調べては報告に来てくれる。

雑談をしたことはないから、あんまり彼の事を知っているわけではないけど。

ツナギを助けたいって気持ちは一緒だから、信頼はしている。

何より、あのツナギが信じていた神様だ。

ボクが信じない理由なんて一つも見当たらない。

そうだ。

ルルシアの話もしておかなきゃ。

ルルシアが不気味に現れたあの日。

意識を失ったツナギに、ルルシアはこんなことを言っていた。

『本物の鈴鳴繋を、頼んだぞ』

って。

それに、ツナギが言っていた。

『ごめんね』

って。

なんだ。

なんだそれ。

ボクが真っ先に思い、考えたのは、やっぱりそんなことで。

ボクは、きっと悔しかったんだ。

自分と同じ境遇のはずのツナギ。

なのに自分よりもずっと強いツナギが。

自分の知らない繋がりを沢山持っているツナギに、存在を否定されているようで。

なんだやっぱり、私の知らないツナギがいたんだ、なんて。

嫌なボクが出てきちゃった。

一瞬だけね。

すぐにルルシアに詰問するザ・ワンを見て、ボクも正気を取り戻した。

「おい、どういうことだルルシア!」

「語ったのだろう、汝の、過去の物語を」

「さっきも言ったろそれがどうした」

「時節が良かったのだ、鈴鳴繋が我に、我の願いに関心を少しでも持った今がな」

「本物って、なんだよここにいるのが、偽物だってのか」

「本物でなければ、偽物だろう」

その言い草には棘があった。

でも、どこか切実な印象を受けた。

ボクもその会話に加わりたかったのだけど。

何もなかったから。

ボクには、二人の会話に入れるほどの、何かがなかったから。

何も言えなかった。

その後のルルシアとザ・ワンの話からわかったこととして。

本当かどうかは知らないけどツナギが今意識を失ったのは何も、ルルシアの所為ではないらしいこと。

ルルシアは自身の願いを叶えるためにツナギに祈っているらしいってこと。

その願いの内容を話す気はないこと。

ツナギはただ、寝ているだけらしいということ。

そして。

やっぱり。

何かきっかけがないと起きないだろう、ということ。

その場の誰もが納得はしなかったけど、それを信じることしかできなかった。

ボクは、感覚的にそれが正しいことを理解していたから、やっぱり何も言うことはできなかった。


ボクは、いや、ボクだけでなく、全員が気づいていた。

ルルシアの願いが、だ。

そのままなのではないか。


『本物の鈴鳴繋を、頼んだぞ』


その言葉がやけに頭を内側から叩きつけてくる。

どういうことなのだろう。

本物の、鈴鳴繋は、どこにいるのだろう。

ルルシアは本物を探しているのかな。

きっとそうなんだろうね。

ツナギと同じに、本物の鈴鳴繋を。

そして、ある程度、目星がついている、のだと、思う。

本物の鈴鳴繋。

偽物の鈴鳴繋。

ボクは、どうしたらいいのかな。

本物がいたとして。

ツナギが偽物だったとして。

ボクは。

ボクは――。

いや、さっきも言ったはずだ、ツナギは、ツナギだ。

でも、そしたら、ボクには。

ボクにも本物がいるんだろうか。

いるとしたら、本物のボクは今のボクを見て何を思うのだろう。

残念がってくれるかな。

叱ってくれないかな。

今のボクを散々に否定しれくれたら。

きっとボクの心はものすごく晴れるんじゃないかって。

そんな風に思うけど。

本物のボクがいようが偽物のボクがいようが。

きっと今のボクはボクなのだろう。

ツナギがツナギで。

ベルがベルで。

あるように。

ボクも、きっと。

なら、ボクは何を目指して進めばいいのかな。

本物を目指して進めばいいのか。

偽物を目指して進めばいいのか。

結局わからない。

今ここにいるボクは、何をすべきなんだろう……。


「ナギ、どうした、です?」

「……ううん、行こうかベル」

「……また、本物のツナギのこと考えてた、です?」

「いや違うよ、ちょっとだけ今日の戦いをイメージしてただけ、行こうか」

「……はい、です」

「ごめんね、ベル」

「別に謝らなくても、いい、です」

「そうだね、そう、だよね」

「行く、です」

「うん」

あの日からずっと。

ボクとベルは。

ルルシアの指示下にある。

少しでもヒントを得るためにベルが提案したことだ。

もうボク達がルルシアに付き従ってから大分月日が経っているだろう。

そして今日は、大事な一戦がこれから起こる。

さぁ、集中しろ、ボク。

神様序列5位、収縮の神。

このボクこと、ナギ。

いざ。

神様序列4位、次元の神。

グォールの討滅に行かん。

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