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NAGI ―神様と共に私を見つけるまで―  作者: 安藤真司
私編 2 ―神の宴―
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私が不安を募らせるまで

豪華でお洒落な新しいお家を買ってから早一ヶ月。


ついでに言えば私が目覚めてからはもう半年以上が経過している。


私とナギは割と有名になっていた。

有り体に言って悪目立ちしていた。

原因は主に二つ。

全く名の知られていなかった神が急に知名度を上げているということ。

そしてその神が付き人一人以外、全く誰とも関わりを持っていないということ。


私もナギもそこまで考えていたわけではないんだけど、ね。

ナギはただ自分にできることをしていただけだし。

私はただナギと一緒に優雅な生活を送りたいだけだし。

なんだか熱に差があるな。

気にしない気にしない。

ただ、前にも話した通り、神にとってもその他の生命にとっても、ハンターという選択肢は楽なのだ。

剛腕さえあれば。

知略さえあれば。

いくらでも手早く食料や宝石を集めることができる。

そして勿論、ハンターはその手柄を形あるものに変えたがる。

食料はその限りではないことも多いが、宝石や鉱石、毛皮等は金に代わる。

金はさらなる贅沢品に代わる。

となれば、ハンターは基本ギルド単位でお抱えの換金ギルドを作るものだ。

そしてハンターが持ってきた貴重品から創られる物は一般町民たちの元へと渡っていく。

ここではハンター及びギルドが全ての生活の基本になっている。

無論、その影に潜む神様が、あるいは潜むことすらしない神様が中心になって世界が回っているといっても過言ではない。

そうしてギルドの中心人が集まりに町が作られ、栄えていく。

そのうちギルド同士、より大きな町を支えている方が強者であるという価値観が生まれる。

より希少なモンスターが出没する付近に。

より希少な資源が存在する付近に。

場所を拡張しようとしては別のギルドと出会い、紛争を起こし。

そんなことを繰り返している。


そんな一般論に反して、ね。

私とナギは二人で勝手にモンスターを獲って、二人で勝手に珍しい物を採っていた。

そして、ナギはギルドを作ろうとはしなかった。

私も、ね。

結局知名度を上げるためにどこかしらに換金やら、食べ物を交換したりはするから全く二人だけで生きているわけではないのだけど。

始めは単に同じ想いを抱えた二人でいたかった、というだけだったと思う。

まぁ二人でいる方が知名度も上がるみたいだし、このままでいいんじゃないかってね。

畢竟、私たちの利益と生活に必要な行為が合致したというわけなのだ。

そして。

なにより。

知名度―影響力―が上がれば、彼女は強くなる。

つい半年前まで、神様序列32位だった無名の神は。

かわいい私の神様は。

神様序列24位にまで序列を上げていた。

これは異例の上がり方らしい。

もうほとんどの神が自身の存在を確定させている今では、序列は微動しこそすれ、一気に上下などしないのが普通なんだと。

おかげで他の神からはやっかみもあり、邪魔も沢山入る。

一部では、ナギを使ってどこぞやの神が何か大きなことをしでかそうとしているのではないか、って噂があるくらい。

私にはいくら説明されても、この8位の差がどれほどすごいのかはわからないけど、ね。

一つだけ言えることがる。

最近、ね。

ナギのかわいさに磨きがかかっている。

そう、かわいいのだ。

もうこのままナギとゴールインしちゃえるくらい。

なんなら私たちとギルドを組みたいって言ってきた人たちも結構いたけれど。

断った理由がナギに誰も近づけたくなかったからみたいなとこある。

いやさすがに嘘かも。

私と会ってから、ずっと短めにしていた髪を伸ばしだしたナギの髪は今はもう肩を簡単に隠すくらいに長くなっている。

それでも触らなくともわかるくらい艶がある。

相変わらず艶麗なオリーブグリーン色を浮かべているが、陽の光を浴びると余計に宝石の如く輝くその髪はもう髪の神でいいんじゃないかな。

結局ダジャレで収まる私の語彙力が憎いぜい。

ホントはフリルのついた可愛いスカートとかも着せたいのだけど。

さすがに戦闘や採取でいつ汚れちゃうかもわからないのでそこだけは叶わない。

からせめて寝間着なんかだけでもそれっぽいものを無理やり着せさせている。

初めて買ってあげた時とか、

「これ、ボクが着るの?なんか慣れないから恥ずかしいなぁ」

とかなんとか言っちゃって私を二度目の記憶喪失においやる勢いでかわいかった。

いや、記憶喪失になって最初にナギが目に入ったらたぶん私は獣になっちゃうからそこは遠慮しておいたけどね。


……。

あれ、なんの話してたっけ。

また忘れた。

「ねぇねぇ、ナギ、私今何しようとしてたんだっけ」

「じゃあ、とりあえずしゃがんでくれるかな」

「さー、いえっさー」

「はい、行くよ!」

と思い出した矢先にナギの冷たい声が飛ぶ。

そうだ、山の深くに現れると噂されていたビッグフットの探索と、仮に存在したら捕獲する依頼を受けてたんだっけ。


ビッグフット。

人よりも遥かに大きな体。

雪山に潜みハンターの持ち物を根こそぎ奪っていくと噂されている怪物。

さらにその鉤爪は神様の持つ、この世の不思議を操る能力を切り裂くと言われている。


思いつつ、ナギに言われるがままにしゃがむ。

私と背中合わせに立っているナギから見慣れた淡い緑色の光が放たれる。

一度半径数十メートルほどに広がった光がナギの右手に収縮していく。

それと共に私たちを囲んでいたモンスター、ガガが収縮しながら右手に吸い寄せられていく。

序列の上がったナギの力だ。

「ビッグフットじゃなくってただの雪山の主というか、ガガ族しかいないね」

ガガ族とは雪山に生息している、まぁあんまりおいしくないお肉型モンスター。

でも雪山にいるだけあって、その毛皮はお高く取引されているはず。

今回の討伐対象ではないけど。

「やっぱりビッグフットなんていないんじゃないかなぁ」

当然思うのはそれだ。

「んー、目撃情報はあるんだけどね」

「それはそうだけどさ、こんな雪じゃ前もろくに見えないしさ」

辺り一面を覆う氷雪。

ほんの5メートル歩くのも重労働だ。

「うん、今日はここまでにしよっか、ツナギ」

「ん、おっけー」

未知の場所を探索するのはいつでも大変だけれど。

私がきちんと”マーク”しておけば帰るのは簡単だ。

私はふぅっと一息ついて、手をパンと一度叩く。

そして、左手はナギと繋いで(小っちゃくてかわいい手だ)右手を遠く、この山のふもとの辺りと繋げる。

「ツナガレ」

の一言で繋がりを確認し、思い切りよく光の束を引っ張る。

これもまた私の新しい力。

遠距離でも繋がる能力。

そして繋げた二つの座標を一致させる能力。

これらを組み合わせてぐいんぐいんと超高速で山を駆け下りる。


何故かはわからないけど。

ナギの神様序列が上がるたびに私の「ツナガレ」にもどんどん能力が付随している。

ナギはこれが『私』に繋がる鍵なんだと思うって言ってたけど。

どうなんだろう。

私は本当は神様なのかな。

でもそう思って、例のアドバルンとかいう巨木に触れてみたけど、私は何も起きなかったんだよね。

神様序列も出てこなかったし、私一人じゃあの謎の空間に行くこともできなかった。

だからやっぱり神様なわけじゃあ、ないんだと思うけど。

なんなんだろ。

あと気になるのは。

時折見せるナギの悲しそうな顔。

かな。

それも、私に向けられてるんだよね。

原因はわかってる。

わかってはいるんだけどね。

最近、おふざけではなく、たまに、自分を抑えきれない時がある。

ナギを馬鹿にされた時とか、ね。

私、自分がそんなに沸点が低いものだとは思ってなかったけど。

まぁナギと会う前とか覚えてないから確かめる術もないんだけど、ね。

不安だろうなぁ。

私も私がどうなっちゃってるのか、不安だし。

まだなんともなってないからいいものの。

これから先、もっと上の序列を目指していくんだ。

もっと強いモンスターと戦うこともあるだろうし。

もっと他の神様からの妨害を受けるかもしれない。

このままで、いいのかな。

わかんないや。

わかんないよね。

自分が何者なのかもわかんないんだから、ね。

私も、ナギも。

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