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NAGI ―神様と共に私を見つけるまで―  作者: 安藤真司
私編 2 ―神の宴―
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私が宴の後日を語るまで

「ったく、力の使い方間違えやがって……」

「いやぁお疲れ様、ホント助けてくれてありがとう、ね」

「あーいいよ、事前に防げなかったのは俺の不手際だ」

「あ、そういえばワンくんには本来の意味が書かれた紙が届かなかったんだよね?」

「ん、何の話だ?」

「ほら、私を誘うために、招待状には二種類あったんだよね?本来の意味が書かれたものと、ただ宴をやるって書かれたものと」

「あぁそれなら俺はそもそも招待状を貰ってねぇんだ」

「へ、そうなの?じゃあどうして警護してたの?誰かから聞いたの?」

「あぁ俺は……」

「ん?」

「あー……いや、まぁその辺の神に宴の存在だけは聞いてたんだ」

「そっか、性格的にワンくんは絶対邪魔しにくると思ったからなのかなぁ」

「……そうかもな」


あれから二日が経った。

というか、私が意識を取り戻すまで、二日間ずっと寝たきりだったらしい。

目を覚ました時には、ナギとベルがものすごい顔で覗き込んでたからびっくりしちゃった。

もう二度と目が覚めなかったらどうしようとか、ね。

そんなわけないでしょ。

全く。

私は二人のことが大好きなんだから。

二人がいるこの世界が大好きなんだから。

ね。

ちなみに起きた場所はセレスの病院のベッドの上だった。

「今回の治療費は友達価格でまけといてあげるわよー」

とか言っていた。

まぁ、ありがたい、のかな。

よくわからない。

どうにも信用できない感じがあるし。

なんか私たちの戦闘が終わると現れるし。

ストーカーなのかな。

助けてくれればとは全く思わないけど、何しに来てるんだろうとは思うわけで。

結局今回の事件でのセレスの立ち位置は私にはよくわからなかった。

もしかすると何かしら絡んでいるのかもしれないし、絡んでいないのかもしれない。

今はとりあえずゆっくり治療して頂いてどうも、くらいにしておこう。


目を覚ましてすぐ動けるようになった私はまず確認しないといけないことが幾つかあった。

まずは私自身について。

ベルの限定解除を真似て、私もナギと二人力を合わせてそんな感じで、ね。

本来の序列相当の力を遥かに超えた力を行使したわけだけど。

その力はまた使えるものなのか、否か。

まぁ、試してすぐに出来ないことが判明。

そりゃそうだ。

知ってた。

だからこそ限定的な力なのだろう。

次にナギについて。

今回久々に別れて行動することになったわけだけど。

ナギもナギでベルを追って様々な神と交戦していたはずで。

そんなナギの序列がまた変動していないかなと。

確認してみると、全く変わらず、19位のままだった。

どうやら序列を上げるための影響力とやらは同じ神同士相手では変わらないらしい。

あっても微々たるものなのだろう。

そんなわけで特にナギに変化はなかった。

あとは、ワンくんへのお礼。

一応倒れる直前に、私の事をお願いしたので何かしら行動をとってくれたのだろうと。

これはただ、予想通りと言えば、その通り。

私はただ寝ているだけだったから、普通に家に運ぼうとしたところナギとベルにうるさく言われたらしい。

それでセレスを頼り、そのままセレスのギルド内で寝ることになったみたいだ。

今ちょうど話を聞きに、ワンくんのギルドに来ている。

ワンくんの率いる警護ギルド、『ルール』の本拠地は私の町からは少し離れている。

私が寝ている間にワンくんは当然帰ってしまったのだから、私から赴くほかない、ということで来てみた。

最初こそ「いやもう関わりたくねぇよ……」とかなんとか言っていたけれどそこはご愛嬌さ。

今はやたらと広い部屋のやたらと大きな机を挟んで向かい合って座ってる。

広い部屋に少人数でいるのはなんとなくそわそわしちゃうね。

「で、ジャンベルとか他の神はどうなったの?」

「他の神についてはセレスが言った通りだよ、神としての力を完全に失った状態で、しかもセレスのギルドで働かされてるらしい」

「あー、それはそれは……」

「ま、それだけじゃ足りないけどな、神殺しってのは本来」

「でも、神様には規則がないもんね」

神様を殺しても罪には問われない。

当然だ。

まずは手練れのハンターでも、神とはそうそう殺せるものではない。

もちろん、下位序列の神であればハンターの方が強いのだろうけど殺すことはまずない。

普通の人々や神擬きにとって神とは基本、恩恵はあれど害を与えることがまずないからだ。

そして神同士で殺し合うこともあまりないらしい。

これも単純に、他の神を殺すことと自身の神様序列が上がることはほとんど無関係だからだ。

下位序列では数が多すぎて、少し殺したところで何も変わりやしない。

上位序列では上にいる神がいなくなることは良いかもしれないが、上位であればあるほど、序列1つ分の差は、大きい。

何をしても勝てないことがわかってしまう。

そんなわけで神からしても神を殺すことにほとんど意味がない。

そのため、神を殺すことを前提としたルールも、存在していない。

神自身がルールに縛られることを嫌がるからとも言われているが。

「ま、セレスに任せておけばその辺は大丈夫だろ、ジャンベルは……そうだな、いなくなったよ」

「いなくなった、ね」

「あぁ、他の神と一緒だ、あいつにも神としての力を失ってもらった、そしたらすぐに半狂乱になって、消えたらしい」

「それ、どうやって神としての力を奪ったの?」

「さぁな、セレスに聞いてくれ」

「そっか……あ、ひょっとしてワンくんの序列」

「2位になってたな」

「なるほど……じゃあひとまずは放っておいていいのかな」

「いいんじゃねぇかな、それで」

そうか。

進化の神、ジャンベル。

結局本当は何がしたかったのだろう。

そうまでして、私を進化の糧にしたかったのだろうか。

神同士を争わせてまで。

わからない。

わかりたくもないけど。

「それよりお前さ、記憶喪失な上に神じゃないってどういうことだよ」

あ、そんなこともあったな。

そかそか、話してないか。

……面倒だな。

「面倒だから話さなくてもいい?」

「馬鹿言え俺がどんだけ手伝ってやったと思ってんだ」

ですよねー。

これは仕方ない。

かくかくしかじか。

かくかくしかじか。

「そんなわけで、私は『私』を探してるんだ、何かヒントがあったらよろしく」

「……」

「そんなに深刻な顔しないでよ、別に今は今でちゃんとやってるわけだし」

「いや、結構色々あるんだなと思って」

「そりゃね」

「つーか神じゃないならあの力はなんなんだよ」

「私にもわかんない」

不思議な力。

ツナガレと名付けたその力。

ナギの序列と共に威力の増している力。

私にもわからないさ。

まぁでも別に神様以外、全くああいった力を扱えないわけではない。

希少なものではるけど、魔石を使えば誰にだって多少の不思議を起こすことはできる。

例えばその魔石をどうにかこうにか私に埋め込んだりすれば、自ら不思議を起こすこともできよう。

可能性は、薄いのかもしれないけど、ね。

「ところでさ、あの限定解除ってなんなの?皆出来るの?」

そう、気になっていた。

限定的な場であれば序列1位相当になれる、とかそんなこと言い出したら、色んな場で色んな序列が存在することになりそうだけど。

大丈夫なのかな。

そう軽い気持ちで聞くと、ワンくんはまたかなり真剣な表情で返してきた。

「あれ、誰にも言うなよ」

「へ、なんで」

「あんなこと出来るわけないだろ、普通」

ワンくんは呆れたような声色でそう言った。

「急に序列を32位から1位に上げるなんてこと出来たら神様序列ってシステムが意味ないだろ」

「そりゃ、そうか」

「薄倖の神がどうやったのかは知らないし繋もどうやったのかは知らないが、あれは異常だ」

「異常……」

「あんなこと出来ると知ったら、それこそ世界が終わるぞ、神同士の争いが顕著になる」

「そうだね、それは嫌だな」

「あぁ、だからそのことは絶対他言すんな、お前の家族にも言っておけ」

「わかった」

そうか。

誰にでも出来ることじゃないのか。

ならなんで私たちには出来たんだろう。

これまた、考えても考えても、答えが出ない。

わからない。

「じゃあ、私、そろそろ帰るね、色々とお世話になりました」

「おう」

家に、帰ろう。


さて、最後に。

もう一つだけ確認しなければならないことがある。

いや、本当は確認するまでもなかったんだけど、ね。

「さってと」

家の玄関前で私は気合を入れる。

「ただいまー」

「おかえり、です」

ドアを開けると私を待ち構えていたかのようにベルがいた。

実際待ち構えていたのだろう。

そう、目が覚めた私は、ベルがどのくらい変わったのか、それを確認しなければならなかった。

でも、なんのことはない。

今この瞬間。

ベルの表情を見ればわかる。

目が覚めてからずっとこうだ。


なんて素敵な笑顔。


それに尽きる。

肩の力が抜けた、屈託のない太陽のような笑顔がそこにはあった。

「ツナギ、疲れてない?です」

「大丈夫だよー」

「ツナギ、頭がぼーっとしてたりしない?です」

「今日はそんなに動いてないよ」

「ツナギ、どこか体が痛んでない?です」

「行き来はドラゴンタクシーに乗せてもらったから」

「ツナギ、お腹減ってない?です」

「さっき少しもてなしが出たんだ」

ツナギ。ツナギ。ツナギ。

あぁ、なんてかわいい神様っ!

私がもう少しでも欲に忠実ならナギとベルでハーレムを作るかもしれない。

レズハーレム!

私以外誰も得しないね!

相変わらず背丈が小さいので、私と話す時はぴょこぴょこ跳ねている。

それもまた私の心を揺さぶってくる。

あぁ、私にはナギという心に決めた女性がだね……。

ハッ。

いけないいけない。

思わず危うい路線に走るところだった。

しかしながら、背が小さいからということ以上に、ものすごく甘えてくるのでほとんど親の気持ちだ。

ベルはかわいい娘。

だからたぶんナギは嫁。

二人とも神様だから、年齢だけ見ればものすごいことになっているのだけれど、そもそも神様に年齢って意味がないからね。

年上とか年下とか、神様ってそういうものとはある意味無縁なわけで。

だから大体見た目通りの年齢の性格になっているのだろう。

あるいは願われたままの容姿になってこの世界に降り立ち、願われたままの性格になっているのかもしれない。

とにかく私から見たベルは、可憐で幼い女の子そのまんまなのだ。

それでいいんだ。

ちなみに服装もナギが気を利かしたのか、フリルの沢山付いたゴシック調のスカートを召している。

いや可愛いけどせっかくだからもっと普通のスカート買ってあげてよ。

私が調達せねばならないな。

「ベル、ありがとうね」

「何が、です?」

「ここにいてくれて」

「それは私の台詞、です」

言って、顔を私の胸に押し付けてすりすりしてくる。

「私、ちゃんと探してみる、です」

「ん、何を?」

「ツナギの言う、『私』を、です」

「そっか、じゃあ、一緒に探そうか」

「はい、です」

「ちょっと、ボクも忘れないでよー」

「もちろんナギも一緒、です」

「よーしじゃあツナギが帰ってきたことだし、今から狩りに行くぞー!」

「え、ゆっくり休ませてよー」

「また龍が食べたい、です」

「幻をご所望ですか!?」



私が『私』を探す物語。

その物語には欠かせない。

とってもとっても大切な。

家族が二人、できました。

とさ。

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