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NAGI ―神様と共に私を見つけるまで―  作者: 安藤真司
私編 2 ―神の宴―
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私が宴に招かれるまで

目の前に現れたのはもちろん序列2位でこの神の宴の主催。

進化の神、ジャンベル。

それはわかった。

神の宴、というものが何なのか。

ジャンベルに唆された序列の低い神たちが互いを蹴落とす、そんな醜い宴だった。

それもわかった。

そしてジャンベルは言った。

私と融合したい、と。

進化の神である彼は、融合することで他の生命や物質の存在を己に吸収することができる。

そんな彼が、私と融合したいと言った。

それはわからなかった。


私はただナギの身を案じてここに来たというのに。

ここへと至るまでを順に思い出していく。

まずは朝意識を失って。

起きたらなんとなくナギの慌てる声が聞こえて。

だからたぶんベルが神の宴に向かって行ったんだと思う。

それを追いかけてナギも向かったんだろう。

それで私も少し様子を見ようと外に出て。

序列9位の天候の神、ツユキに襲われて足止めされて。

序列3位のザ・ワンに助けられて。

序列4位のセレスにベルが狙われているようなことを示唆されて。

ここまで来た。


全てが偶然の産物と言えるような低い確率で繋がっている。

そんな偶然を経て、なお。

ジャンベルは、私が狙いだったとでも言うのか。

そんなの。

信じられるわけが。

ない、でしょ。


「っおい!おい繋!」

フリーズしていた私を隣にいるワンくんが揺り起こす。

ワンくんが私を庇うように前に立って、また幅広の石剣を構える。

「繋、なんでこいつに狙われてんだよ……いや、そういやさっきもなんでツユキに狙われてたんだ」

私が聞きたいくらいだよ。

訳がわかんないって。

「はぁ、正直残念だったよ」

ワンくんの疑問には答えず、ジャンベルが独りでに語り始める。

「せっかく舞台を整えてあげたというのにさ」

「どういうことだよ」

「あぁ、まずは天候の神をぶつけて様子を見ていたんだけどね」

やっぱりツユキはジャンベルが仕向けたのか。

今まで会ったこともない天候の神に謎の足止めを喰らう理由が一つもない。

や、それはジャンベルも同じだけど、ね。

「序列10位相当の差をどうするのか楽しみにしていたんだが……」

ジャンベルが複雑そうな顔をする。

「もちろん天候の神に気付かれずに助けを呼んだこと、否、生きてその場を乗り切ったことは褒めよう」

当たり前だ。

10コも序列が上の相手に真っ向勝負を挑めるわけないでしょ。

それを冷静に考えて助けを呼ぶ、って手段をとったわけだけど。

「本音を言わして貰えば序列の差を凌駕する不思議が見てみたかったね」

「まるでツユキが捨て駒みたいな言い草だな」

「あぁ、まさにそのつもりで仕向けたんだがね?丁度序列で差が10とキリがよかったし」

「そんなくだらない理由で……」

「別にいいだろう?それほどに君は興味を惹かれる存在だったのだから、思わず試してみたくなるほどにね」

「それ、もし私が死んだらどうするつもりで」

「その時はその時、その程度の存在ならいくら珍しくても融合するに値しないね」

「あぁ、そう」

死んでも構わない、ってわけだ。

「だが、私の予想は裏切ったものの、君はこうしてここまで来た!素晴らしいことじゃあないか!」

しれっとテンションを上げるジャンベル。

私とワンくんの言葉だって、届いてやしない。

「初めから私が狙いなら、ナギとベルはどこ?

まずはその確認だ。

仮にそこまでがジャンベルの計画であれば。

無事なはず。

「あぁ、もちろん無事だよ、君をここまで誘うために連れ出したのだからね」

ジャンベルが一枚のカードを投げて寄越す。

私たちの前に落ちたそのカードを拾って見ると、それは神の宴の、本当の意味の書かれた招待状だった。

「君たち以外にはこのタイプを渡していてね……君たちの内では薄倖の神にだけこの文面が読めるようにしたのだよ」

なるほど、ね。

それで、ベルはたぶん、私たちと話が食い違っていることにすぐに気づいた。

で、ベルの事だ。

あの悲しい神様だ。

私たちに何も言わずにこの宴を阻止しようと動いたに違いない。

それを私が放っておくわけがない、って算段か。

私とナギをどう引き離そうとしたのかはわからないけど。

結果的には思い通りに動いてきた、ってことだよね。

「ほら、君のお仲間ならそこにいるよ」

ジャンベルが指差したのは、下。

ここはテラス。

その下では神同士が殺し合っている。

つまり。

今。

まさに。

殺し合いが行われている場に。

ナギと、ベルが。

いる――。


「ツナガレッ!!」

「おおっと、そうはさせないよ?」

頭で考えるより先に階下に降りようとした私の動きを、まるで予期していたかのように止める。

空中に浮きかけた私の腕を、一瞬で距離を詰めたジャンベルが掴んでいる。

と、その接触も一秒と続かない。

動き出した私と、それを抑えるべく動き出したジャンベル、それらを見越して私の腕目掛けて石剣を振るったワンくんがいたからだ。

ジャンベルが剣を掠めるように避ける。

だが、その幅広の剣を避けたことで私からは距離が空く。

その間に再び、ワンくんが私を宥める。

「おい、今は目の前に集中しろ、攻撃でも逃げでも何でもいい、何かしら行動を起こしたらそれらは総じて防がれると思え」

宥められている自分を自覚して、少しだけ恥ずかしくなる。

指摘されたこと自体はどうでもいい。

今さっきツユキにボロボロに負けて、逃げることすらできなかった私だけど。

それでも隠れて助けを求めることはできた。

でも。

今度は動くことすら許されないだなんて。

自分でも認識できていないような速さで展開したツナガレで。

一歩。

その場を動くことすら許されないのか。

現状不思議を無力化できる力を発動できない、つまり自分の肉体の力だけで動くワンくんにまた助けられてようやく動くことができる。

やっぱり。

私は、なんて弱い。

「安心しなよ、まだ死んでいないみたいだからさ」

「……私は、あなたを許さない」

「はは、大人しく私の進化の糧にはなってくれないのかな」

「なるわけないでしょ」

「それはそれは残念だ」

私は、弱すぎて、ナギを助けることができない。

それどころか、すぐそこにいるかもしれないナギの姿を探すことすらできないかもしれない。

でも。

だからまた考える。

考えるんだ。

相手の序列は2位。

ワンくんがいる分、さっきよりはマシな状況かもしれないと思う反面。

ワンくんが力を使えないことに加えてそもそもワンくんよりも上位であるこれは、さっきよりも悪い状況かもしれない。

ワンくんもこの城ごと全てジャンベルの能力を無効化したいだろうけど。

これだけの高さで、これだけたくさんの神があちらこちらに散り、しかもそのほとんどが下位の神とくれば。

城が急に消え失せたことに対応できる神は少ないだろう。

私のツナガレでも、知覚できない場所にいる神を救うようなことはできない。

だからワンくんの能力は当てにできない。

戦うのは無理。

裏をかくのは無理。

逃げるのも無理。

そもそもナギとベルを助けないと結局駄目だ。

やっぱり助けを求めるしかない。

でも、どうする。

仮にナギやベルとコンタクトが取れたとしても、だ。

今の私同様、ナギもベルもジャンベル相手に何ができるはずもない。

ジャンベルにも通用する力を持つ存在が必要だ。

でもジャンベルの力は普通の生命の持つ力を遥かに越えている。

であれば頼りは神しかいない。

でもでも。

序列1桁台はこの隣にいるワンくんを除いて、協力なんて論外だ。

するような神がいるわけがない。

皆、己の力を気まぐれに使って気まぐれに生きているような神々だ。

もちろん、神としてはその方が正しいのだろうし、ね。

とにかく、手詰まりだ。

助けを呼ぶことが出来ても、ナギにベル、ワンくんの率いる警護ギルドの人や神擬きが精々だ。

それではこの場を打開することができない。

時間が。

時間が必要だ。

もっと、もっと策を練る時間が。

時間稼ぎになりそうなのは、なんだ。

何か、ヒントはないのか。

「くそっ、結局なんでお前、あいつにそこまで狙われているんだよ」

ワンくんが小さくそんなことを呟いた。

……!

それだ!!

時間稼ぎ!!


「なんとなくはわかる……でも、ちゃんとは知らない」

私は一呼吸おいて、数歩離れたジャンベルにはっきりと問いかける。

「私は、神じゃない、それは知ってる、でも、じゃあ、あなたは知ってるの?私が何者なのか」

「神じゃない?」

ワンくんが怪訝な顔をしているのがわかる。

ジャンベルから目を逸らさないようにしているので実際には見えないけど、ね。

「ほう、やはり自覚はあったのですか、なぜそのことに気付いたのですか?」

よし、喰いついた。

今はこれしかない。

まだ出会って数分程度だけど、たぶん、この神様は。

「あの神様だけに行ける場所、大樹……アドバルン、だっけ、あの場に一人で行くことができないから、それに、アドバルンに触れても序列が出ない」

「なるほど、確かにそれなら自分のことにすぐ気づけたわけですね」

「あぁ、やっぱり何繋お前、神じゃないのか!?」

驚くワンくんは少し無視して(ゴメンネ)。

たぶん、この神様。

興味あるものとの融合を繰り返している、好奇心が強い神様だからだろうか。

かなり。

お喋りのはずだ。

だったら。

時間稼ぎはこれしかない――。

ジャンベルの興味を惹く話を続けるしか。

「でも、これも保って、数分、かな」

「へ?」

私はすぐに現実と向き合って、ワンくんにだけ聞こえるくらい小さな独白をする。

むしろ独り語りを聞いたらダメだよワンくん。

なんておちゃらけつつ。

先の見えてしまっている攻防戦を避けるため、せめてもの時間稼ぎを、私は始める。

その間に事態が。

何か動くことを祈って。

頭は全力で動かしながらジャンベルと会話に臨む。


あるいは。

隣のワンくんが私の意図を汲んで、私以上の案を出してくれることを祈って、だ。

これぞ本当の神頼み。

頼むぜ、個体の神様。

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