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NAGI ―神様と共に私を見つけるまで―  作者: 安藤真司
私編 2 ―神の宴―
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私が"その一"と共に始まりだすまで

「ったく、つーかツユキはあそこに放っておいてよかったのかなぁ……」

「まぁ、天候の神なら風はひかないんじゃないですか」

「あんた結構いい性格してんな」

「あ、私、繋って言うんです、鈴鳴繋」

「あぁ、名前は聞いてなかったな、俺はザ・ワンだ、よろしくな」

「改めてですけど、さっきはありがとうございました、ザ・ワンさん」

「いーよ呼び捨てで、いや、つーかザ・ワンってのも呼びづらいだろ?なんか適当に呼んでくれ」

「はぁ、じゃあワンくん?」

「おうなんか犬っぽいし急に馴れ馴れしくなりすぎな気はするけどまぁそれでいいよ」

「私の事も、繋って呼んでください」

「わかった繋、それで確認なんだけどな……」


私と序列3位、ザ・ワンは手を繋いで空を駆けていた。

より正しく表現するなら、私が彼を引っ張る形で空を飛んでいた。

私は奇策とも言えないような策でなんとか救援を呼ぶことに成功し、おかげで序列9位の天候の神ツユキを退けることができた。

その後ぼろぼろの体を何を思ったのか、序列4位の慈愛の神セレスが私の体を全快にしてくれた。

だから私は迷うことなく神の宴の行われている会場へと足を急いだ。

勿論、体なんて少しぼろぼろでも気にはしないで行くつもりだったけど、ね。

元々神の宴の周辺の警護にあたっていたらしいザ・ワンも改めてその場に行くとのことだったので、自然共に向かうことにはなったのだけど。

如何せんこの序列3位、個体の神。

空を飛べないらしい。

いや、まぁ聞いた話じゃ神の起こす不思議の影響を一切受けないってだけらしいから驚きはしないけど。

序列3位なのに。

トップ3なのに。

もっと色々あるでしょって思ってしまうのは私だけなのかしら。

まぁ他の神の影響を一切受けないってのはすごいことだけどね。

その力の片鱗を確かに直に見ているし。

マグマの奔流を一瞬で無に還した。

でもたぶんもっとすごい攻撃でも、なかったことにできるのだろう。

それこそ、世界そのものを書き換えてしまうような力でさえも。

とにかく彼が空を飛べないことを聞いて私はすっかり別行動をとらざるを得ないと思ったのだけど。

彼曰く、彼の神としての力は二つパターン、というか状態に切り替えることができるらしい。

アクティブパターンとパッシブパターンの二つに。

意味は文字通りだ。

アクティブパターンでは、ザ・ワンの意思で、無効化能力を発動することができる。

パッシブパターンでは、ザ・ワンの意思に関係なく、常に無効化能力を発動している。

基本パターンはパッシブにしており、味方との連携や移動の際など自分の周囲の不思議までかき消す場合においてはアクティブにするらしい。

なるほど。

そりゃそうか。

本当に全部駄目だと家に住めないとかありそうだもんね。

そんなわけで彼としてはかなりの不本意ながら、私に引っ張られる形でのご同行となった。

なんて珍道中。

序列2位のジャンベルが企画した神の宴が始まるまでもうあと10分もない。

ジャンベルは雲の上にまで届く城を自らの領地に創り、その雲に沿うように広大な空間を形成している。

形だけ見ればアルファベットの『T』のような建物だ。

そのあちらこちらに通り抜けようの穴が空いており、招待された神はどこからでもその穴から中に入れる、という造りらしい。

中に入るだけなら私もただ真っ直ぐ上に飛べばよかったんだけど。

さすがにジャンベルに会おうと思うとその中心部に行く必要があるだろう。

だから私は今現在手を繋いでザ・ワンと共に城の中心を目指している。


「繋は、珍しく序列を爆上げしてるナギと知り合いなのか?」

確か、さっき私がそう言ったっけか。

ナギが危ない、とか。

隠すことでもない。

「うん、序列19位、収縮の神、ナギと一緒に住んでる」

「でもナギって確かギルド作ってなかったよな?付き人一人に、いや最近二人に増えた程度って」

「それ一人目が私なんだ」

「いやでも繋って付き人っつか、神様なんだろ?なんでそっちは話題になってないんだよ」

この辺は難しい。

さっきは誤魔化したけど、一応一言くらい付け加えておくか。

「それはちょっと、言えないけど少し事情があってね」

ふーん、と軽い返事が返ってくる。

今はそれがありがたい。

説明する気にはなれないし。

あと今更だけど私たち手を繋ぐ必要あったのかしらん。

ツナガレで空飛んでるんだから、ツナガレで彼も運べばよかったんじゃないだろうか。

まぁいいけどさ。

「しかも二人目ってあのベルヴェルクなんだろ?」

「え、なんでそれを」

「いや、最近雪山で見つかったってのと、現状大して名も無い神と一緒に住んでるってセレスからな」

そっか。

ベルを連れて行った時、セレスも神同士で相談をした、って言っていたっけ。

その中にワンくんも入っていたわけだ。

「神3柱が仲良くやってるとか十分ギルドみたいなもんだろ……」

「まぁ、それは確かにそうかもね」

「んで、そのベルヴェルクが、ジャンベルに進化の素材として吸収されそう、と」

「それ、正直まずいってことだけはわかるんだけど、ピンときてなくってさ」

どうまずいのかがわからない。

「まず、前提条件として、ジャンベルは基本、神を吸収しない、いや、できない」

「どうして?」

「理由はたくさんあるが、一番は吸収されたがる神がいないからだ」

「あぁ、それは……そうだね」

吸収されて、まず自分の身が無事かどうかがわからない。

さらに、自分と全く同じ能力をジャンベルが保有することになるのだ。

コピーが存在してしまうことは、神としてのアイデンティティを蹂躙するには十分だろう。

それに、とワンくんは続ける。

「それをすれば、世界の均衡が崩れる、崩れ方がどうであれ」

「つまり、ワンくん含め、他の上位神が黙っていない、と」

「そういうこった、なのに、セレスの言葉が真実なら……」

ワンくんはそこで言葉を切った。

わかる。

セレスは信用に足る神ではないが、不必要な嘘はつかないだろう。

ろくに話したこともない私でもそう思うのだ。

少なからず関わりを持つ彼ならもっとたくさんのことをわかっているんだろう。

きっとセレスの言うことが本当であることにも。

「でも、なんでベルなんだろ?仮に他の神を吸収する手はずが整ったとしたら、そりゃいきなり上位とはいかなくても」

そこまで言って自分で気づいた。

んなわけあるか。

上位であれ、下位であれ。

神は神だ。

その神を吸収した時点で周りからの評価が下される。

であれば、準備が整ったならば、本命をおびき寄せる以外に選択肢はないのだ。

だから今回、いきさつは知らないけれど、初めからベルを狙っている可能性が高いんだ。

周到に準備して。

だからこそ、余計にわからない。

今のベルはただの序列最下位。

吸収しても真の強さは過去の記憶でしか手に入らない。

ただの小さく可憐な少女にしか見えないベルの、何が必要だというのだ。

危険を冒してまで何を得ようというのだ。

それがわからない。

「さぁ、そればっかりは俺にもなんともいえんな、第一、序列一桁台の考えていることなんてわかったら苦労しねーよ」

あなたもその序列一桁台筆頭なんですがそれは。

それを口にするのはグッと堪える。

「つーか、繋達もグルだったりしないだろうな?」

「はぁ?」

いきなりなんだ。

グル?

誰が誰の?

本気で訳が分からない、という表情でワンくんを見てみたら、ワンくんが手を横に振ってなんでもない、と言う。

「いや、俺からしたら今まで全然変動しなかった序列をここまで短期間で変えているナギの方がよっぽど何か良からぬことを企んでいるんじゃって」

「そんなことないって」

信用ないなぁ。

されるほどの付き合いもないけど。

ふとそれで頭に浮かんだ疑問を言おうかどうか迷い、そして私は躊躇いがちに聞いた。

「ワンくんこそ、昔、人を殺したんじゃないの?」

そうだ。

セレスと関わりがあるってことは。

ベルが序列一位だった頃。

ベルが死んだと民衆に流し。

それでもなお不幸を望むなら、殺す。

そんなことをやっていたのではないか。

「んなことやってねーよ」

「そうなの?」

「俺はそんなに古い神じゃない」

言外に、あれを知ってるのはもう爺さんか婆さんだろ、というメッセージを感じる。

神の中ではナギに同じく比較的新しく生まれた神様なのだろう。

「ならどうしてあのベルの事件、知ってるの?」

「警護ギルド立ち上げたときに色々と聞きこんだりしたんだよ、過去あった最悪と言われている類の事件の山々」

それでもとくにベルヴェルクのはひどかったけどな、と合間合間に小言を挟む。

「ちなみにその話はセレスから聞いた、だから俺あいつが苦手だし嫌いだし、なるべく神とは関わりたくない」

「そうなんだ……私たちとも?」

「まぁ正直、な」

彼もまた、嘘をつかない優しい神様なのだろう。

元は人であったらしい、個体の神。

愛する人に願われて生まれた神。

ナギと同じくベルの事件時にまだ神ではなかったらしいのに、今や序列3位にいるのだから凄まじい。

そのルーツに。

根本に。

私は図々しくも触れたいと考えてしまっていた。

流れる思考は口を滑らせる。

「ワンくんに願った女性は、どんな人だったの?」

考えるまでもない。

失礼すぎる。

不躾すぎる。

私の無神経な質問に当然怒りを隠すことなく、ワンくんは答えた。

ううん、拒絶した。

「……関係ないだろ」

「……ごめんなさい」

そうだ。

確かに何も関係ない。

関係あっても聞くべき内容じゃない。

完全に私が悪い。

でも、なら。


なんでそこまで苦しそうな顔をしているのかなって。

やっぱり私は気になった。


風に髪が流れる。

その時。

神の宴が始まりを告げた。

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