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NAGI ―神様と共に私を見つけるまで―  作者: 安藤真司
私編 2 ―神の宴―
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私が天候に相対するまで

……ん。

何か音が聞こえる。


「ちょっ……どこ……の!?」


騒がしいなぁ、この声、ナギかな。

って、あれ、私なんで寝てるんだっけ。


「……っててツナギ!!」


あ、今呼ばれた、かな?

まだ醒めない思考回路を必死で回す。

ナギって「ツナギ」の言い方がかわいいよね。

あ、回路もうショートしたな?

よいしょ。

ベッドからゆっくりと起き上がる。

ええと。

そうだ、セレスと話し終えた後で倒れちゃったんだっけ。

わざわざベッドまで運んでくれたのか。

さすが私のナギ。

さてと。

少し休んだからか、体は軽い。

何かあったのかなぁと居間に出ると、丁度玄関のドアが思い切り閉まる音がした。

ついでに誰もいない。

「んん……あれれ?おーいナギ―?ベルー?」

声をかけてみても返事はなし。

家にはやっぱりいないみたいだ。

戸口に近づいてドアノブを捻ると、案の定鍵はかかっていない。

普通、二人で出かけたなら鍵をかけ忘れるわけがない。

それに、私に何かしら置き手紙か何かで伝えてくれるはずだと思う。

これは。

と色々考えつつドアを開ける。

そこにはすっかり陽が沈み、薄暗い空を街の明かりが照らす風景がいつも通り広がっていた。

私の感覚だとついさっきまで朝方だったんだけどな。

何があったのかなぁ。

何があったんだろう。

名前を呼ばれた気がするんだけどな。

それになんとなく焦ってたようにも思うんだけどな。

うーん。

まだ起きたばっかだし、少しリフレッシュがてらナギが行きそうなところを散策してみようかしら。

うん、そうしてみよう。

一旦家の中に戻って、簡単にお散歩する旨を書いてテーブルに置いておく。

ようし。

私はしっかり鍵をかけて。

……いやこれ大丈夫なのかな鍵かけちゃって。

まぁなんとかするでしょあの二人なら。

家の前でたむろとか、ね。

そんなことを思いつつ、家の前のさほど大きくはない通りを出ようとする。

と。


「おやぁ、どこに行くのかなぁ?」


真正面から声をかけられた。

それも、ずいぶん好戦的に。

見れば、私より少し背丈が高いくらいのコートを着込んだ人影が。

真っ黒な革のコートに身を包み、真っ黒なハット帽、真っ黒なパンツ真っ黒なブーツ真っ黒な手袋最後それいらないでしょ。

とにかく全身を黒に染め上げた誰かがそこに立っていた。

背丈は小さいけど男の顔つきだ。

もちろん見覚えはない。

「ちょっと家族を探しに行くだけですよ」

そう早口に言って横をすり抜けようとする。

が、前を塞がれる。

「なんですか、どいてください」

「あれぇ、私を知らないのかなぁ?」

「はぁ、知らないですが」

「そうかぁ、じゃあ知ってもらおうかなぁ?」

と言うとその男の人が急に両の手を大きく広げた。

なんだなんだ。

と思う暇もなく。

男の手が広がると同時に黒い雲が空を覆い隠す。

そして雨が降る。

それも結構な土砂降り。

……これは。

「おやぁ、やっとわかったって顔かなぁ?」

「うん、わかったよ」

そうか。

これは。

神様だ。

「それで、改めて聞くけど、あなたは誰?」

「あぁ、私は序列9位、天候の神、ツユキ、君は名乗ってくれるのかなぁ?」

「いいや、あなたに名乗る名はないよ、何が目的なのかな」

「ふふぅ、ずいぶんと余裕があるのかなぁ?もう宴は始まってるんじゃないのかなぁ?」

「宴?それって神の宴のこと?」

「さぁ、どうかなぁ?」

と、ツユキは左右に大きく広げていた両手を今度は前に突き出した。

すると急に私の体が突風が吹き飛ばされる。

うわわ!?

宙に飛ばされてぐるぐる回転する視界の所為で平衡感覚が一気にぶれる。

くっ。

「ツナガレ!!」

辺りの空気を球状に繋げていく。

これなら上下感覚が狂っていても大丈夫だろう。

私の予想通り、どっちに落ちているのかは地面に落ちるまでよくわからなかったけどその衝撃を抑えることには成功した。

ブンと頭を振って感覚を取り戻す。

「序列、9位か」

ツユキは不意打ちをまんまと喰らった私に追い打ちをかけることもなかった。

空に飛ばされていくつか通りを超えたし、ひょっとして見失ったとか?

天候の神なら、瞬間移動とかはないと信じて……。

と、目の前に鳴り響く轟音。

そして目を焼くほどの閃光。

雷が落ちてきたらしい。

今度は視覚や聴覚が麻痺する。

その事実に、私は何を確認することもなく即座にその場を離れた。

今度は平衡感覚は残ったままだったので、適当に空中にツナガレで足場を作る。

「あぁもう、なんなのさ一体!?」

いや、何が起きているのかはわかってるんだけどさ。

それになんとなく目的もわかってきた。

「足止めか、それじゃナギとベルは神の宴に向かったのか、な」

殺す気は、今の所ないみたいかな。

たぶん、ナギ達の所に行かせたくないんだろう。

そんな私の前にツユキがすぅっと浮き上がるように現れる。

互いに宙に浮かんだまま向き合う。

「おやぁ、私の狙いに気付いちゃったかなぁ?」

「隠す気もない癖によく言うよ」

今度こそ認識を改める。

これは。

神様で。

敵だ。

「じゃあ排除してもいいんだよね、ツユキ?」

「いやぁ、君にはもう一度眠っていて欲しいかなぁ?」

ツユキが手を握ると、雨が今度は徐々に雪に変わっていく。

「まぁ、私に勝てるつもりなら頑張ってみればいいんじゃないかなぁ?」

そう笑うツユキの顔には確固たる自信が見える。

知ってるんだ。

私がナギの序列と共に力をつけてること。

それで現状は序列19位の力であること。

序列9位と序列19位の差が、埋まりようがないこと。

私だってそのくらい知ってる。

でもやるしかないことなら、やるしかないもん、ね。

きっと、足止めするにはそれなりの理由があるはずだし。

神の宴が関係あるなら、もしかするともっと上位の神が関わっているかもしれない。

そんな危険なところにナギとベルが行っているかもしれない。

それだけで。

私が戦う理由には十分だ。

ふぅ、と息を吐く。


「今から敵を倒すね、神様」


そうして私は、心を閉じる。

罪悪感は、もう要らない。

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