だからなんなんだこいつらは。
それにしてもさっきの夏峰の知り合いらしき連中はなんだったのだろうか?
人の話は聞かない、日本語は通じない、自己中、自由気まま、果てしなくウザイ。etc。
常識的に理解不能な奴らばかりだったな。
ガタイが馬鹿みたいに良い通称筋肉マッチョ。
無駄に偉そうでお嬢様口調の通称お嬢様。
凄く分かりにくい表現で考えを伝えてくる通称カジュアル言語(笑)。
カジュアル言語(笑)に関しては表現が分かりにくい所以外は特に言うことはない。
分かりにくいだけで大切なことはちゃんと言ってくれているし、僕の話を聞く耳も持ってくれている。
何より僕達兄妹と住んでいる家のことを大絶賛してくれたからな。こいつだけはいいやつだ。
他はクソだがな。
正直二度と顔を合わせたくない。
「サマーピークの兄君よ!先程の無礼を許してほしい!誠に申し訳なかった!!!」
筋肉マッチョはこんな感じに無駄に暑苦しくて無駄に義理堅いし、
「私少し誤解をしておりましたわ。まさかあなたのような貧相な成りの愚民が……いえ、高貴な姿の方がなつほうさんの兄だとは考えもしなかったものですから」
お嬢様は無駄に偉そうで無駄に上から目線だし、
「我、安心せり。絶対の女王、夏峰に出会えたことを。我、感謝せり。この出会いを与えてくれた兄君に」
カジュアル言語(笑)は……まぁ問題はない。
……ていうかよく考えたらカジュアル言語ってのはなんか違うような気がする。
前に読んだ漫画、だとビジュアル?ビジュアル系?だったかな?
自分の言葉を格好よく伝えようとして全く伝わらないボーカリスト。
最終的きは仲のいい友達には通じるようになったみたいだけど。
こいつはまさにそれだな。
現実でそんな人に出会うとは思いもしてなかったけど世の中にはそういう人も本当にいるんだなぁ……
当面はビジュアル言語で通そう。
「ところでサマーピークはどこに行ったのだ?」
「あら、そう言えばそうですわね?あなた、何か知りません?」
「我が女王、│黄金郷へ」
黄金郷……?
金?宝石?食べ物?
……買い物、か?
「多分買い物だと思うぞ」
「なにぃぃぃ?何故男である兄君がそのようなことを知っておるのだ!?まさか貴様……ストーキングをしたのか!?」
「まぁ!なんと下劣な!これだから男は……。やはり先程の言葉は取り消させてもらいますわ」
「我、困惑。兄君に罪は無し。我、ここに謝の意を表明する」
うぜぇぇぇぇぇ!!!
お前らが聞いてきたんだろうが!
なんで僕がそんないわれのない罪を受けなければならないんだ!
僕の味方はやっぱりビジュアル言語だけだ!
「覗くかアホっ!自分の願望を僕に押し付けるんじゃない!」
「なんだと!?我輩がそんなゲスな真似をするわけがないではないか!恥を知れ!」
「早くこの部屋から出てってくれません?同じ空間で同じ空気を吸うのも嫌なので」
「燃え上がる負の想い。いと、おかし」
もう限界だ。
そもそも初めからおかしかったんだ。
さっきこいつらは妹と一緒に部屋に行ったはずだろう?
それがどうだ?
いつのまに僕の部屋に入ってきたんだ!?
その上好き放題言いやがって……!
「知るかっ!そもそもなんでお前らが僕の部屋に入って……侵入してるんだ!行くなら夏峰の部屋に行けっ!」
「サマーピークがおらぬと退屈なので暇潰しにこちらに来たまでのこと!」
「下々の市民の顔を見るのも上流階級に君臨する者の勤めかと思いまして。感謝しなさい」
「我、兄君と言葉の拳を交わし、戦友となることを望む」
もういい。
知らん。
実力行使だ。
「ぬぉぉぉぉ!!?何故我輩を部屋の外―――」
「ちょ、ちょっと!こんなことをしてただで済むと―――」
煩い二人を外に追い出す。
ドンドンと扉を叩く音が聞こえるが関係ない。
ドドドドッドッドッドー!
ドドンドンドドン!ドドンドンドドン!
ドーンドーンドーンドーン……ドーンドーンドーンドーン
「外に出ても煩いな。こいつら。どうやったら静かになるだろう?……なぁビジュアル言語?何かいい案はないか?」
「……殲滅」
「怖いな!そこまでしなくてもいいよ!」
「……?消失」
「いや!存在を消そうとしなくてもいいから!ただ何か静かにさせる方法はないかなって」
「……奇跡を信じ、運命の出合いを待つ」
「夏峰が帰ってくるのを待てってか」
「頭を垂れる神」
頭を垂れる神……
頷く?
肯定の意か?
……まぁでもビジュアル言語(笑)の言うとおりか。
妹は携帯を外出時に持ち出さないアホだし、唯一の連絡手段のゲーム機はネットに繋がっていないとただのゲーム機だし。
あのアホーめ。
さっさと帰ってこい。
本当に迷惑なんだ。
こいつら。
「……我がシックスセンスに反応あり。我が女王、短き刻の果てに帰還せり」
「いや、シックスセンスに反応って。勘だろ?」
「頭を垂れる神」
「慰めてくれる気持ちはありがたいが夏峰の買い物は長いからそんなすぐには帰ってこないと―――」
「ただいまー。ねぇお兄ちゃん?沙空夜君どこに行ったか知らない?私の部屋には居ないし、靴はあるからどこかに居ると思うんだけど?……あ!居た!もうお兄ちゃんと友達になったの?凄いじゃん!」
「……本当に帰ってきた。凄いなお前」
「有頂天」
「それじゃ私の部屋に来る?二人はもう私の部屋にいるからさ」
「Gotoheaven」
「よし。それじゃ行こっか!ありがとねお兄ちゃん!」
「あぁ、いや、うん。別に構わない。でも、今夏峰の部屋に居る二人はよく注意をしておけ。迷惑にも程がある」
「えっあの二人が?嘘だぁ。あんなに大人しい人は他に居ないよ?お兄ちゃんの勘違いじゃ―――」
「とにかく!特に注意をしておけ!次に煩くしようものなら流石の僕も怒るからな!」
「はっへっえ……と、はい!」
これで大丈夫、か?
妹の注意で大人しくなるような連中には思えないが、少しでも静かになればそれでいい。
妹の活躍に期待しよう。