なんだこいつら?とりあえず放置で。
『ピンポーン』
「……そういえばこの漫画ってまだ新刊出てないんだっけ?学園×ゾンビの王道ホラー漫画にしては現実味があって続編が気になるやつだったんだけど……最後の刊が出てからそろそろ1年以上経つな」
『ピンポーン』
「確か作者が不調か何かだったんだっけ?……よく覚えてないな。まぁ1日も早く復帰してくれることを祈っておこう。これは完結せずに終わるのが勿体ない程の作品だからな」
『ピンポーン!』
「……おーい夏峰!悪いけど出てくれ!」
……………………
『ピンポーン!』
「夏峰?」
寝てるのか?とりあえずドアをノックしてから部屋の中を覗いてみるが誰もいない。
「ん?」
部屋に掛けてあったカレンダーを見ると今日の日付に「待ち合わせ!」と花丸をして大きく強調されてあった。
そう言えばなんか今日は外出するとか言っていたな。
『ピンポーン……』
夏峰が入れば代わりに出てもらおうと思ったのに。
必要な時に居ないな全く。
「はいはいちょっと待って下さい。だから人の家のインターホンでしょげないでくれますか?」
『ピーンポーン!』
分かったから。
てかどうやってそんな器用にインターホンで感情を表現しているんだよ。
この家のインターホンはごく普通のインターホンだぞ。
それだけ押して誰も出なかったら素直に帰れよ。
ここまでしつこい来客も久し振りだぞ。
僕はそのしつこい来客者を迎える為にドアを開けるがその来客者が意外にも……
「押忍!サマーピークか!?」
「ごきげんよう。なつほうさんかしら?」
「我、ここに出会いけり」
全く知らない人だけだった。
誰だこいつら。
「悪いがそんな奴はこの家に居ない。家違いだ。他を当たってくれ」
余計な時間を使ったな。
さっさと部屋に戻って漫画を――――!?
「押忍!待たれよそこの男子よ!」
「ここで間違いないはずよ?」
「我等、神の晩餐会に導かれし者なり」
ドアを閉めようとしたら3人の中で一番良い体格をしている奴に阻まれた。
なんて力だ!
1㎜足りとも動きやしない!
なんだこいつ!?
「サマーピークは確かにここにいるはずだ!」
「私達が嘘を吐いているとでも?」
「囚われの……王女?」
いや、だから誰だよ。
その、サマーピークって。
「悪いが人違いの家違いだ。サマーピークなんて奴はここには居ない」
「むぅ。そんなわけがない!」
「でも、なつほうさんはいるはずよ?」
「我を待ち焦がれる、王女」
「なつほうなんて奴も居ない」
「サマァァァァピィィィィク!!!どこだぁぁぁ!」
「そんな……!私は、騙されていたの?」
「その名も、プリンセス夏峰」
「プリンセス夏峰なんてやつも……夏峰?」
「我がプリンセスをご存じか?」
妹のことを言っているのか?
一番言動が不可解な奴が一番的確な答えを出してきたな。
とりあえず玄関に飾ってある家族写真を見せてこいつらが求めている誰かが妹かどうかを確認させてみよう。
「そうだ!こいつがサマーピークだ!やはりここに居るのだな!」
「これは……なつほうさんですわね。あなた、嘘を吐きまして?」
「マイ、プリンセス」
うん。
夏峰か。
正直このまま妹にこいつらを任せて僕は部屋でゆっくり漫画を読んでいたいんだがその妹が居ないからな。
かといってこんな変な奴らを家に上がらせたくない。
なんでこんな時に限ってあいつは居ないんだ!
どうしたものかな……?
「サマーピークを隠しているのか?」
「あなたは一体なつほうさんの何?奴隷?」
「マイプリンセス、我を求める」
あまり日本語が通用しなさそうな人種っぽいし相手をするのも怠い。このまま追い返してもいいんだがここで追い返すと一応妹の知り合いみたいだし後が面倒なんだよな。
「隠しているわけでもないし、僕は夏峰の奴隷じゃない。あいつは今外出中なんだ。だから出直して来てくれないか?」
「馬鹿な!?サマーピークは約束を破らぬ女子!ここに居ぬはずがない!」
「筋肉マッチョの言う通りですわ。なつほうさんはこれまで私との約束を破ったことがありません。正直に答えてはいかが?」
「マイプリンセス、不在。我、出直しなりける」
…………面倒だなぁ。
え~……と、筋肉マッチョ?と、お嬢様にはお帰り願ってカジュアル言語(笑)だけに家に残ってもらうとしようか。
なんやかんやこいつが一番聞き分けが良さそうだ。
「よし。なら筋肉マッチョとお嬢様は帰れ。カジュアル言語(笑)は家の中で夏峰が帰ってくるのを待っててくれ」
「うぬぅ!初対面の者に筋肉マッチョと呼ばれるとは心外の極み!ゴリラと呼べ!」
「あら?私のことをお嬢様と?あなた、私の執事になりたいのかしら?でもごめんなさい。私には既に10人の執事がいるもので。あなたのその申し出は断らせて頂きますわ」
「我に名付けられし真名、理解し難し。が、我、そなたの申し出をありがたく承る」
「よし。カジュアル言語(笑)。僕に付いて――」
「我輩も連れて行けぃ!」
「しかし袖振り合うも多少の縁。特別に11人目執事となることを許可致しますわ。光栄に思いなさい。そしてあなたに今この場で初の仕事を与えるわ。家の中に案内しなさい」
「非常に良き居城。ここは神の住まう城。ヴァルハラ」
「くっ!お前らはいいんだよ!帰れ!」
「理不尽な!それが男子のすることなのか!?」
「命令違反は本来許されないのだけど、特別に許してあげますわ。ほら、案内しなさい」
「マイプリンセス、そこに帰還せり」
「あ~~!!!皆ここに居たぁ!なんで私の家に居るの!?ずっと探してたんだよ!?」
「あ、な、夏峰!こいつらどうにかしてくれ!いや、筋肉マッチョとお嬢様以外!」
「サマーピーク!こやつをどうにかするのだ!話が通じなくて困っていたのだ!」
「なつほうさん?この生意気な執事……奴隷をどうにかしてもらえないかしら?」
「プリンセス夏峰の兄君、まさに神」
「……何があったのお兄ちゃん?」
「はぁ……見ての通りだ。後は任せたぞ」
「え?え?」
やっと解放された……
しかしあいつらは一体なんだったんだ?
カジュアル言語(笑)以外言葉の通じない動物じゃないか。
暫くあいつらの相手をすることになるのだろうが、僕の知ったことではない。
タイミング悪く外出してしまった自分を恨むんだな。
これでようやく落ち着けるな。