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まぁ、いいんじゃないか?驚きはしたけども。

『ズガッ!ダダダダダダ!!!』

『ガァンガァン!ヒュゥゥゥゥ……ドガァァン!』

『な、あ、うわぁぁぁぁ!!!』

『いやぁぁぁぁぁ!!!』

『ダァンダァン!!!ズガッズガガガガァン!』



 某月某日某時刻。

 僕の家は戦場と化していた。

 昨日までは確かに平和な日常を送っていたはずだ。

 朝、ご飯を食べて学校に行って、帰ってきたらご飯を食べて風呂に入って漫画を読んで寝る。

 ここまでの記憶が間違いでないのならごく普通の1日だったはず。

 しかし今はどうだ?

 銃火器が放つ轟音。

 被害となった人の悲鳴。

 数多くの騒音が「大音量」で響き続ける。

 正直、病み上がりの僕にとっては辛い状況だ。



『HQ!HQ!こちらA(アルファ)第三部隊部隊長だ!どうなっているんだ!?こんなにも敵の数が多いなんて聞いてないぞ!』


『落ち着くんだ部隊長。どうやら私たちの作戦が外部に漏れてしまっていたようだ』


『何ぃ!?』


『援軍を既に送っている。それまでなんとしてでも防衛ラインを死守してくれ』


『くっ……!了解!』



 アルファだか防衛ラインだかなんだか知らないが、とにかくもう少し静かにしてほしい。

 比喩じゃなくて家が騒音で震えているんだ。

 見てみろ。

 水槽の水に波紋が何重にもたっているじゃないか。

 ご近所様に迷惑だろう。


 どうせノックをしたところで聞こえるわけがないのだから、初めから妹の部屋に突入する。

 手をあげろ!そこの兵士!大人しくその武器(コントローラー)を放すんだ!

 ってか?

 父さんも母さんも二人して外出しているのをいいことに暴走してもらわないで欲しいものだ。



「おーい夏峰!ゲームの音が凄い煩い――――」


「「ん?」」


「…………ん?」



 部屋を……間違えたか?

 確認の為に部屋の外に出てみる。

 ……うん。

 僕の部屋が目の前にある。

 なら、今僕が出てきた部屋は間違いなく妹の部屋だ。

 ……あれ?

 おかしいな。

 夏峰以外に誰か居たような?



「夏峰?それ、誰だ?」


「ん?あぁ!お兄ちゃん!(助けてっ)」



 助けて?



「初めまして。相澤湊(あいざわみなと)と申します」


「あ、うぅん?僕は湖郷冬希(こざとふゆき)だが……彼氏?」


「妹さんの彼氏になった湊です!どうぞよろしくお願いします!」



 ……は?

 かれし?

 カレシ?

 彼氏?

 この馬鹿でアホで奇特で二次元と三次元の区別がついてない残念な女に?

 何かの冗談だろう?


 ……いや待て落ち着け僕。

 そもそもこいつのいう彼氏と僕の言う彼氏は違うのかもしれない。ええっと、彼氏の意味は……


【1人の男性を指して用いる三人称代名詞。用法によっては、多少からかいの意を込めて用いることもある。 男性または女性と恋人である男性のこと。彼とも。 昔は男性のほうが立場が上であったため、彼にえらい意味の氏がついて彼氏となった】

 ~wikiより引用~



 ……だよな?

 彼氏って恋人のことだよな?

 妹の恋人?

 え?


 見た感じこの湊と言う人は高身長、無断毛がなく、染髪ピアス等もなし。

 服のセンスも申し分なく、どこに行っても可愛がられるであろう容姿端麗な人物だ。

 勿論内面までは分からないが……

 それでもこんな残念な妹と付き合うよりかは他の人と付き合った方がよっぽど有意義だと思う。



「あの、なんで夏峰の彼氏を?」


「妹さんは、高身長、無断毛がなく、染髪ピアス等もなく、美しい黒き長髪の持ち主です!しかもそれだけでなく、服のセンスも申し分なく、どこに行っても可愛がられるだけの女神のような容姿をしておられます!これで惚れない男がどこに居るというのでしょうか!」



 ……うん。

 それ君にそのまま当てはまるからね?僕と似たような感想を繰り返さないでくれ。

 それに長髪と女神とまではいかなくても、君は充分いい容姿をしていると思うよ?

 妹は美人か美人ではないかと聞かれれば、間違いなく美人の分類に入る容姿をしているのは認めるし、兄の僕から見ても可愛らしいとは思う。

 しかしそれは客観的に見たときの話で、そこまで絶賛される程ではないはず。

 少なくともこんな君のような人に釣り合う女じゃないと思うが?



「えへへ~女神みたいだって」


「ソウカヨカッタナ」



 助けてと言った割には嬉しそうだな。

 案外まんざらじゃないんじゃないか?

 普通にデレデレじゃないか。

 ……でも娯楽機械至上主義(アイラブゲーム)の妹に彼氏?



「一応聞かせてくれ。なんでこいつの彼氏に?」


「それは忘れもしない今日の放課後……私が下校しようと教室から出た時のことでした。普段は静かなはずの廊下から響き渡る騒音。その方向には何故か走るシーツ。私は驚きました。奇声を放ちながら全力ダッシュをするシーツを目撃して!」



 今日のことなのか!?

 そんなスピード恋愛あるわけ……

 あぁ、うん。そうだな。妹ならあり得るか。

 ならしょうがないと言えばしょうがないな。

 それにそんな機会に出くわせば流石に僕でも驚く。

 確かに忘れられそうにない1日だな。



「しかしそれ以上に驚いたのは、そのシーツの中から美しき女神が降臨したこと……!私はその時目を疑いました……これが本当にこの世のものなのかと!気づいたら私は妹さんと恋仲になっていました」



 おい待て。

 なんか大事な部分がかなり飛んだぞ。

 気づいたら恋仲になってたってどういうことだ。



「……夏峰?」


「だから!違うんだって湊くん!」


「何がです?」


「誤解なのっ!確かに湊くんはいい人だし優しくて背が高くて、顔もカッコよくて、声も素敵だし私の趣味になんでも合わせてくれてどんなお願いも聞いてくれるしゲームの相手もできるけど……」



 そこまで条件が揃っていて何故付き合わない。

 こんな高物件そうそう手に入らないぞ。

 安いうちに買っておけ。

 二度とこんな機会なんてないぞ。



「けど、なんです?あの時の言葉を撤回するつもりですか?」


「うぅ~……そうじゃないけど!そうじゃないけど!」



 てか……えぇと、名前なんだっけ?

 …………愛三かなえ?

 ………………。

 彼氏A。

 お前気がついたら付き合ってたんじゃないのか。

 なんか覚えてるっぽいじゃないか。



「結局何があったんだ?夏峰。説明してみろ」


「ええっとね―――――」



 ☆★☆★☆



 私は今日ね、化学の先生に頼まれて実験で使った機材とか薬品の片付けを手伝うように言われてたの。

 ほら、私級長だからさっ。

 それで化学実験室から化学準備室に物を運んでたんだけど、やっと片付け終わったー!

 って思ってた時にふと足がなんか痒かったから見てみたの。

 そしてたらね、ちっちゃいゴキ○リが私の足を伝って登ってこようとしてたの!

 もう私は大パニックになってなんとかして振り払おうなんとかして振り払おうと思ってワタワタしてたら棚にぶつかって、棚にかかってた埃防止のシーツが私の上に落ちてきて、更にパニックになっていつの間にか廊下に出てたの。

 それで誰かにぶつかって、もう誰でもいいから助けて欲しくて、



「あぅぅ……誰だか分かりませんけど助けてくださぃぃ……なんでもしますから、恋人にでもなんでもなりますからぁ……助けてぇぇ…… 」



 って。

 そしたらいつの間にか湊くんが私の彼氏になってて、家に遊びにきたの。



 ☆★☆★☆



「彼氏A……じゃなくて、湊くん」


「はい!」


「妹を頼んだぞ。幸せにしてくれることを祈ってる」


「お兄ちゃぁぁぁぁん!?なんで!?今の話聞いてた!?だから間違いなんだって!」


「はい!お義理兄(にいさん)!なにがあっても妹さんを幸せにすると誓います!」


「おう!任せたぞ!」


「お兄ちゃん!?」


「いや、だってそれは夏峰が悪いだろ。なんでもします。恋人にでもなんでもって。ちゃんと自分でそう言ったんだから責任を持たないと」


「だから!それは慌てていたから出てしまった言葉のあやで!実際はその……別に………………」


「嫌なのか?」


「嫌じゃない!嫌じゃない!けど……」


「けど?」


「この年で恋人なんて作ったら私がこれまで溜めてきた魔力が全部失われてしまうじゃない!」



 魔女かお前は。



「こんな二次元と三次元の区別がつかない妹だがいいのか?」


「はい!勿論です!妹さん程の素晴らしき女性ならそんなこと些細な問題です!」


「お兄ちゃん酷い!?」



 酷いものか。

 こんなにいい人他にはいないぞ。

 むしろこんないい人の誘いを断ろうとするお前な方が酷い。



「よし。どうやら僕はもう必要ないみたいだな。二人でイチャつくのは構わないが、ゲームの音量だけは下げてくれ。煩くて敵わないんだ」


「はい!分かりました!」


「それじゃあな」


「ちょ!お兄ちゃ―――」




 後々話を聞いてみたらなんやかんやで上手いことやっているらしい。

 元々妹もまんざらじゃなさそうだったしな。

 当たり前と言えば当たり前か。

 このままいい感じにゴールインすることを祈っている。



軽く暴走気味です……

更新が不定期で申し訳ありません!

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