番外編1・ゲームオタは侮れない!
「…………よし。ターゲットは熟睡しているね」
私の名前は湖郷夏峰。
あまり自分でいうものじゃないと思うけど…数々の武勇伝を持つ伝説の傭兵……もとい伝説の学生。
昔私は家族で海釣りをすることになり、船上で釣りを始めたことがあった。
その時運が悪かったのか私達の家族は誰一人として「魚」を釣ることができなかった。
勿論私も。
せめて折角だから何かを食べたい!
そんな願いのもと、私がひたすら釣りに奮闘していると奇跡が起きた。
大きなサザエが釣り針に引っ掛かって釣れたの。
それもとても大きなサザエが。
普通ならまずありえないことだけど、この奇跡のできごとを大きな貝が釣れたということで巨大貝釣りと呼び習わして今でも話題に上がることがある。
他にもある。
私とお兄ちゃん、そしてお兄ちゃんの友達と学校帰りに近くの喫茶店で寄り道をしていた時のこと。
これもまた運の悪いことに、その日は他校の不良の分類に入る人達がその喫茶店を意味のない集会の場所として利用し始めたの。
勿論私達は無視。
けれどもお兄ちゃんの友達がトイレに行こうとしたときにその不良の一人と肩をぶつけちゃって一触即発。
今にもお兄ちゃんの友達が殴られそうになっていた時に私が間に入ってその不良を仲裁したの。
あんまり表立って言えないんだけど、私はどうも他の人からみると美人の分類に入るみたいだからそれを利用させてもらった。
簡単に上目遣いで「お願いします。止めてあげてくれませんな?」って頼むとすぐに止めてくれた。
根はいい人だったのかもしれない。
そんな私と不良とのやりとりをお兄ちゃんが
「まるでマングースがヘビを軽くあしらうような感じにあっさりと片付いたな」
と言ってその友達が
「いやぁ頼りになる妹だね!本当に助かったよ!ありがとう」
って称賛して以来、その日のことは状況になぞらえて「妹不良を嗜なめる」としてやっぱり今でも話題に昇ることがある。
他にも数々の偉業を私はやり遂げてきたんだけど、それはまた今度話すことにしよっと。
今はそれどころじゃないからね。
そんな武勇伝を持つ私が今回狙っているのはお兄ちゃんの机に置いてある「プリン」だ。
いくらなんでも人の物を盗むのはよくない……
というのが一般論だけどこれに関しては状況が少々違うの。
元々プリンは二つあった。
私と、お兄ちゃんにそれぞれ一個ずつ。
私はプリンを後から食べようと冷蔵庫に保存しておいたんだけど、お兄ちゃんはその日のうちに食べちゃった。
それから一週間、私はちょっと甘いものに飢えてしまったので残しておいたプリンを食べようとしたら、冷蔵庫からプリンが無くなっていた。
誰かに食べられた!?
そう思ってお兄ちゃんに聞きに行ったら机の上にプリンがあるじゃないですか。
これはもう確信しましたよ。はい。
お兄ちゃん自分が自分のプリンを食べたって忘れちゃってます。
幸いにもその時にはお兄ちゃんがは既に寝ていたので一度帰還して再度プリン奪還の為に計画を練ったの。
そうして今に至るの。
「…………すぅ…………すぅ」
よし。
今なら行けるかな!?
忍び足でそろ、そろと部屋の中に入っていく。
ギィッ
「!!?」
「すぅ……すぅ……」
びっくりしたぁ……
ちょっと床が軋んでいたのかな?
心臓に悪いよっ
でもそれ以外に特に問題はなし。
無事に机までたどり着いて見事プリンを奪還!
けれどもこれだけだと後から盗ったな!?
って私が悪魔的所業の餌食になるのは目に見えている。
元々はお兄ちゃんが悪いのだけど、多分そこら辺の理屈はお得意の理不尽でねじ伏せられちゃうからねっ
だから私はプリンの代わりに大して甘くもないゼロカロリーのゼリーを代わりに置く。
幸いお兄ちゃんは寝てしまっている。
後から難癖つけられたとしても寝ぼけてたんじゃない?
の一言で解決できるはずだ。
私はそうしてお兄ちゃんの部屋を後にした。
☆★☆★☆
「んにゅ~……!甘くて美味しい~♪」
プリンを発明した人は人類栄誉賞をあげてもいいと思う。
柔らかくて誰にでも食べられて、甘くて、レパートリーが豊富で、なおかつ美味しい!
最高の食べ物だねっ!
コンコン。
お兄ちゃんかな?
そろそろかなとは思ったけど。
「どうぞー」
私はお兄ちゃんを招き入れる。
「どうしたの?」
「別に大したことじゃないんだけどな。夏峰、僕の部屋に入ったか?」
「ん?入ってないけど……どうかしたの?」
「いや、な?起きてから食べようとプリンを机に置いておいたんだがいつの間にかゼリーに変わっていたから」
「寝ぼけてたんじゃない?夢の中でそうやって変換されただけだと思うよ?第一お兄ちゃんプリンを買ったその日に食べてたじゃん」
「ん……?そう言われれば確かにそうだな。悪いな疑って。それじゃあな」
あっはははは♪
作戦成功!
やっぱりプリンの代わりにゼリーを置いておいたのが幸をそうしたみたいだね!
こうして無事に私のプリン奪還作戦は完遂された。
どうせなら……これにも名前をつけてみようかな?
狡猾なお兄ちゃんからちゃんとプリンを取り返せたのだから、これは立派な偉業だと思う。
そうだな……
外の世界(お兄ちゃんの部屋)から至高の存在を取り返したから……
「プリン奪還作戦」と命名しよう!
きっとこの偉業が私の家で語られることはないけど、私の成長が大きく躍進した出来事だった。
「お兄ちゃんをもっと出し抜けるようにこれからも精進しないとねっ」