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きみとなっとうは混ぜると美味しいぞ。

 コンコン。



「ん?夏峰か?」



 ………………



 ん?返事がない?

 おかしいな。

 基本的に僕の家族は相手の質問に必ず返答する。

 今のようなノックの場合もそうだ。

 中に入ってもいいという許可が部屋の中から聞こえれば入るという意思表示をしてから入るようにしている。

 でもそれがない……?

 来客の予定でもあったかな?

 とりあえずドアが開く気配がないので僕の方からドアを開ける。



「…………?」



 するとドアの外にはよく分からない塊が落ちていた。

 妙に大きく、形は歪。あえて言うなら長方形。

 その何かは白いシーツのようなものにくるまっている。

 これが何なのかはなんとなくの見当がついたが面倒なのでこのまま放っておくことにしよう。

 僕はそのままドアを閉める。



 コンコン



 ドアを閉めたとたんにまたノックが聞こえた。

 不振に思い、もう一度ドアを開けて外を確認してみるが、やはりそこには白いシーツにくるまった大きな塊があるだけだった。

 気味が悪いので今度はドアを閉めて鍵をかける。

 すると今度はガチャガチャガチャガチャ!

 と、ドアノブを思いっきりひねてきた。

 ……軽い恐怖だな。

 正体が分からなければ。



「……おい。そんなとこで何をやってるんだ?」



 僕はシーツにくるまった塊に話しかける。



「…………」



 しかし塊は何も答えない。



「無視してもいいか?」


「…………」



 やっぱり何も答えない。

 よし。見なかったことにしよう。

 僕が部屋の中に入ろうとすると突然右の足首をガシッと掴まれた。凄い力だ。

 足をブルブルさせて振り払おうとするが、中々離れない。

 全く……

 しょうがない奴だな。



「何がしたいんだ?夏峰」



 僕はシーツにくるまった塊……もとい妹に話しかける。



『……に……ゃん……け』



 今にも死にそうな声で返事が返ってくる。

 マジで大丈夫かこいつ?

 あまりにも普段と様子が違うのでシーツをひっぺがして中を確認してみる。



「あ」



 シーツをひっぺがしてみると、妹はタコのように真っ赤な顔で震えていた。

 恥ずかしいから真っ赤になっているわけではないよだ。

 これはあれだ。

 うん。



「風邪引いたのか?夏峰」



『お兄ちゃ……助け……』



 妹は本当に死にそうになっていた。



 ☆★☆★☆



「いつから熱が出たんだ?」


『多分昨日』


「夜か?」


『うん』


 低くしゃがれた消え入りそうな声で答える。

 喉もやられてるな。

 昨日の夜っていうと、丁度ゴキブリ退治が終わった頃か。

 少々はしゃぎ過ぎたのかな?

 妹は別にそれぐらいで風邪を引くような病弱な体質ではないが、それが原因と考えていいだろう。

 あまり運動してないみたいだし。

 その反動だろう。



「熱は何度出たんだ?」


『103F』



 華氏で答えるな華氏で。

 パッと計算出来ないじゃないか。

 103Fなら5/9(103-32)で…………大体39℃ぐらいか。



「病院には行ったのか?」


『行ってない』


「学校は?」


『行ってない』


「母さんには言ったのか?」


『もう仕事に行ってた』



 ふぅん……

 この高熱でずっと家に居たのか。

 そりゃ助けを求めたくなるわけだ。



「病院に行くか?」


『行かない』


「薬は?」


『それっぽいの一応飲んだ』


「んじゃ後は寝て治すしかないな。ほら。僕の肩に掴まれ。部屋まで運んでやるから」


『嫌』


「は?いやいや。寝ないと治らないぞ。ずっとしんどい方が嫌だろう?文句を言わずにさっさと寝ろ」


『ヤダ。寝るのはいいけどお兄ちゃんと一緒に居たい』


「!」



 珍しいな。

 妹がそんなこと言うなんて。

 いつもならさっさと出て行け~近寄るな~の勢いで僕から離れる癖に。

 風邪の力って凄いんだなぁ。



「分かった分かった。それじゃお前が寝るまで側に居てやるから。それならいいだろう?」


『うん』



 妹に僕な肩を掴ませ、妹の部屋へと運ぶ…が。



「なぁ夏峰?」


『なに?』


「僕はどこを歩けばいいのかな?」



 例の魔方陣騒動の後、汚かった妹の部屋は僕の協力のもとに綺麗に整理整頓が成されていた。

 しかしその整理整頓の面影は今では一切なく、以前のようにコントローラや攻略法が散らかっている他、昨日まで着ていたであろう衣服までもが脱ぎ捨てられていた。

 妹のこんな部屋を見たら友達、特に男友達はドン引きだろうな。

 それぐらいには妹の部屋は散らかっていた。

 兄である僕でさえちょっと引くレベルに。



『歩かなくていい。空を飛んで』


「いや、無理だから。僕空飛べないから」


『ならルー○でベットまで瞬間移動して』


「○ーラも使えないから。てか部屋で使ったら頭天井にぶつけるから」


『…………なら私の代わりに部屋を片付けて』


「断る」



 なんで僕がそんな面倒なことをしなくちゃいけないんだ。



『酷い。私病人。お兄ちゃん、私労る』


「よし。僕は部屋に戻るとするかなっ」


『嘘。調子に乗った。ごめんなさい』



 僕が再度部屋に戻ろうとすると、ガシッと今度は体を抱き締めて呼び止められた。

 ……元気なんだか元気じゃないんだか分からないなこいつも。

 流石に妹を引きずってベッドまで無理矢理行こうとすると後が大変なので、妹をお姫様だっこの形でベットまで運んでやる。

 久しぶりに妹を抱き抱えたが思った以上に軽いな。



「もっと太ってもいいんじゃないか?」



 僕がそう言うとバシっと頭を叩かれた。

 しまった。

 うっかり本音(こころのこえ)を漏らしてしまったようだ。

 けれども叩かれた頭は大して痛くなく、むしろ叩いた本人の方がしんどそうだ。

 これは本当にまずいな。

 妹をベットに乗せると何か欲しい物がないか聞いてみる。



『お兄ちゃんの口づけ』


「分かった。精神薬だな。すぐに取り寄せてやるぞ」



 駄目だ。

 熱で頭がやられてしまったようだ。

 ななめ45°の角度でチョップしたら直るかな?

 試してみる価値はあるかもしれない。

 そう思って僕が試そうとすると、



『酷い。私お兄ちゃん大好きなのに。そんなこと言うんだ……』



 と、しおらしくしょげてしまった。

 いやいや。いくらなんでもそれは無いから。



『お兄ちゃんのこと、大好きだよ?お兄ちゃん、優しいもんね』



 マイシスターがブロークンした。

 どうしよう。



『私はお兄ちゃんのお嫁さんになるんだ。お兄ちゃんの妻。えへへへへ』



 マイシスターがデストロイした。

 どうしよう。



『お兄ちゃんとの子供の名前は、それぞれ一字ずつとって、夏冬(なっとう)なんてどうかな?』



 うん。

 キラキラした……ネバネバしたいい名前だね。

 きっとその子供はひねくれるに違いない。

 湖郷夏冬(こざとなっとう)

 …………考えただけでも笑いこけそうだ。



『あ、でもでも、希峰(きみ)なんて名前もいいかも?』



 その二人は相性がいいだろうな。

 納豆に卵を混ぜて食べると美味しいんだぞ。

 その後もしばらく妹の妄想ワールドは続いた。

 僕が何を言っても完全に無視で、自分の世界に入りきっていた。

 それが終わると流石に疲れたのか、コテンと眠りこけてしまった。



「やれやれ。ようやく寝たか」



 これで後は明日妹の熱が引いているのを祈っておくだけだ。

 ようやく休める。

 たった数時間の看病だったのに体が怠くてしょうがない…………




 ☆★☆★☆



「おっはよーお兄ちゃん!昨日はありがとねっ」



 後日、妹は昨日の弱り具合が嘘のように元気に、そして煩く回復力した。

 頭にガンガン響く程に。



「だから今日は私が看病してあげるねっ!ねぇねぇお兄ちゃん?何か食べたい物はある?必要な物は?あ!それともワ・タ・シ?キャーお兄ちゃんのエッチー!キャー!!!」



 結果僕は妹に風邪をうつされてしまった。

 ただでさえしんどいのに妹がいつにもましてハイテンションなので余計にしんどい。

 あぁ…………

 誰か助けてくれ……

 妹の不必要な看病は僕の風邪が完治する三日間の間続くことになった。






徐々にタイトルからかけ離れた物語になっている気がします。

どこかで修正しないとっ

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