俺達の日常ラブコメディーになれない理由 《ヒロインの二面性がすさまじいから》
今度からちゃんと整理して書こう。そうしよう。
ところどころ秋虎のファンらしき人の視線がつきささる。コイツと学校にいるといつもこれだ。そして、その視線を一番身に感じているのは雛菜だろう。
「苛立つ・・・」
雛菜は秋虎の背中にくっついたまま低い声でつぶやいた。
「乗り心地悪かったか?」
秋虎が的外れなことを心配そうに尋ねると、雛菜は慌てて声のトーンを変えて取り繕った
「ちがうよ!秋くんの背中の居心地はもうこれ以上ないほど最高なんだよ!」
秋虎は少しだけ口角をあげた
「何でちょっと満足そうなんだよお前は」
背中に雛菜がくっついてるのが日常になってるんだぞ?いいのか!?最近だと秋虎と雛菜が分裂してるとちょっと違和感を感じるぐらいになってるぞ?
心の中でツッコみまくっていると、秋虎は優し気な声でまた意味不明な事を話し始めた。
「いつか涼をこの背中で背負いたいと思ってな。豊峰が居心地が言うと言うなら良いんだろう。楽しみにしててくれ」
「気持ち悪い!!」
ちょっと心配して損した。
しかし、こんな気持ち悪い発言をしながらファンは一切コイツがホモだという事に気づいていないのだからすごいな。
個人的に「こいつはホモだ!」と学校の屋上で宣言したいぐらいだが、恐らく秋久は「そんなに俺のファンが憎かったのか!嫉妬か!安心しろ!俺にはお前だけだよ!」とかなんとか言いだしそうだし、そもそもコイツは何一つ損をしないのでやめておく。
「で、豊峰は何にいらだってたんだ?」
「秋くんのファン・・・なんでいつもボクの事目の敵にするんだろう・・・」
目をうるうるにしてつぶやく。たぶん打算的なものだろう。しかし、秋虎の背中にいるため表情は見えてないだろう。
「確かに不思議だな」
「そりゃお前らが一見いちゃいちゃしてるようにしか見えないからだろ」
二人は顔を見合わせてきょとんとした顔をした。
「いちゃいちゃ?豊峰とか?」
「こんなんでいちゃいちゃなの?」
「・・・お前らなぁ・・・」
コイツらの恋愛観は本当に常人とずれてるからな・・・
「雛菜。たとえばお前以外の女がコイツの背中に乗ってたらどうするよ」
雛菜は指を顎にあてて考える仕草をしてから言った。
「ぶちのめす」
「うーん思った以上に物騒な言葉が返ってきたなぁ」
「涼!俺をそんな背中軽男みたいにいうな!」
「なんだよ背中軽男って!尻軽女とかけたのか!全然うまくないわ!」
「雛菜。俺が背中に乗せるのはお前と涼だけだ。安心しろ」
「秋くん・・・!」
「俺をカウントするな。ほら、そういう事言うから雛菜が嫉妬されるんだよ」
第一校内までくっついている意味がわからない。嫉妬されない方がおかしい。
「ボク、これだったら嫉妬されてもいい・・・むしろ嫉妬されてほしい!」
「・・・お前なぁ・・・まぁ雛菜だったら心配ないけど」
「あぁ。お前だったら大丈夫だろ」
「ほれ、もう降りろよいつまで乗ってるんだよ」
雛菜はこくりとうなずいて秋虎から飛び降りた。
「ありがとう!!」
「こちらこそいい筋トレになってるんだ。いつもありがとな豊峰」
「・・・!」
「少女漫画してるところ悪いがお前筋トレ用と思われてるぞ。いいのか」
冷静に言ったがたぶん雛菜の耳には届いていないだろう。
「じゃあまた休み時間ね、秋くん!」
「あぁ。また後でな」
秋虎は大きい手を小さく振った。
「じゃあな」
俺も雛菜に続いて教室の方へ方向転換したら、またもや秋虎がよくわからない事を言い出した
「本当はお前を一秒たりとも視界から外していたくない。なんでこのクソ学校を俺達を隔てるんだろう。どうかまた会う時は笑顔で迎えてくれ」
「たった数十分だぞ!?そしてこの反応の差は何だ!雛菜がかわいそうだろ!!」
「さすが秋くん!崇高な考えをしてる・・・!」
「お前はそれでいいのか」
三人の中では秋虎だけ違うクラスなので、毎日こんな面倒くさい別れ方をしている。そしておそらく数十後の休み時間には秋虎のクラスに行くことになるんだろう。
「はぁ・・・今日も秋くんはかっこよかった。」
席に座ると雛菜が声のトーンを落としてうっとりとつぶやいた。
「まだ会って一時間しか経ってないぞ」
「まだ十時間以上秋くんと一緒だなんて幸せだなぁ」
本当に幸せそうな笑顔で言った。かわいいが、その秋虎が好きな奴が俺なわけなのは本当に申し訳なくなる。
「八草!豊峰さん!」
同じクラスの男子生徒が俺達に声をかけた。
明らかに雛菜メインだ。多分コイツ雛菜に気があるな。うん。騙されてるな外見に。
後ろから数人の男子が見守っているのとその後ろからヒソヒソと話す女子も同時に目に入る。
「・・・何」
秋虎の前では絶対発しないようなつまらなそうな声で返事をした。
「放課後予定ある?」
「秋くんに会いに行く」
わかりきった質問するなよと心の中で思いつつ一歩後ろへ下がった。
「じゃあその後でいいからさ、俺達とカラオケ行かねー?」
「え、いかない」
「あ、クラスでだぞ」
「いかない」
「なら秋虎クン?だっけ?アイツも一緒でいいから」
「いかない」
「・・・」
「いかない」
「・・・八草は?」
「いかない」
「何でお前が答えるんだよ」
これ以上後ろにいる女子の逆鱗にふれないように雛菜の口を手でふさいだ
「まぁ。でも俺も遠慮しとくわ」
「・・・そうか」
悪いな、クラスメイト。撃沈した男子生徒は肩を落としてユーターンをしていった。
「なんで口ふさぐのー」
「お前が冷たすぎるからいたたまれなくなったんだよ・・・」
「ボクははっきりノーと言える日本人だから」
「あのなぁ・・・多分アイツお前に気があるぞ」
「それがどうした。」
「さすがにかわいそうだと思う」
「秋くん以外の男に媚び売ってどうするの?変な気もたれても困るじゃん」
言ってる事は最もなんだろうがそれだと男子生徒はあんまりだろ。まぁ好きな相手がホモでしかも好きな相手が幼馴染という雛菜ほどではない思うが
「秋虎も面倒くさい女子相手にそれができればいいんだがな」
「女の子に興味がなさすぎるんだろうね・・・」
「・・・」
「秋くんの心は既に誰かさんのものなのにね・・・」
「・・・」
「おい聞いてるか八草涼」
「すいまっせんっ!!!」
突然の低い声はすごく怖いぞ!びっくりするぞ!秋虎の前では絶対そんな声ださないのに
「もーなんでこんなかわいい子がデレデレなのにあえて涼ちゃんに行っちゃうのかなぁ!」
「アハハ叩くな叩くな洒落にならないぐらい痛いぞ」
見た感じだとポコポコみたいなオノマトペがつきそうだが、コイツはかなりの怪力だ。あ、ほら、メリッって言った今絶対メリッって言った!!
「・・・ボクかわいいよね?」
「そういうの自分で言っちゃうのがダメなんじゃないか?」
「だ、だって童顔だったしちっちゃいし袖だって長いし一人称もボクだよ?めっちゃかわいくない?」
「それを本気で言ってるんだとしたら、お前の人格を疑うぞ。ぶりっ子め」
「それのなにが悪い!」
「開き直っただと!?」
大抵の女子はぶりっ子だなんだ言うと傷つくだろうが、相手は雛菜だ。腹の黒さが腹以外のところにもあらわれてる雛菜だ。
「ぶりっ子なんて化粧の一種だよ。」
「お、おお・・・」
「秋くんの心を奪うなら、猫なんてアクセサリー感覚でつけないと!」
なんかよくわからないし為になるとも思えないけどなんかすごいこと言ってるのはわかる!
そして、それが理由で女子に嫌われるんだろうなっていうのもよくわかったぞ!
「まぁボクが背中にくっついてるのをイチャイチャなんていうような甘ったるい連中よりはかわいいだろうなぁうん。」
「・・・すいません」
もうそれしか言葉が浮かばなかった。