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ピンキーヘッド与作

作者: 唐揚ちきん

これは私が大学のサークル誌に掲載した作品のプロトタイプの物語です。よろしければどうぞ。

 平日の午前七時三十分。地元ではそこそこ有名な公立霞ノ郷高校の校門前、正確には生活指導教員・小金井剛志の目の前に一人の生徒が立っていた。


「なあ。芯地しんじ。前から散々言ってるよな?」


 小金井は頬をひくひくと痙攣けいれんさせながら怒りを抑えるように静かに言う。


「いい加減、その髪を染め直って。それとも聞いてなかったのか?」


 芯地と呼ばれたその生徒は表情をまったく変えないまま、平然とした口調で答えた。


「先生。これは地毛です」


 その答えに小金井の堪忍袋のが切れた。生徒の頭を指差しなら、大きな声で怒鳴りつける。


「阿呆か! そんな『ピンク色』の髪の毛が地毛な訳ないだろうが! どこの国の人間だ、お前は!」


 怒鳴られた彼の髪は日本人、いや、人間ではまずありえないような濃い桃色をしていた。

 顔立ちは東洋人そのものだが、瞳が大きく、童顔でとても高校生には見えないほど幼い顔をしている。ボブカットの髪型と合わさり、一見可愛らしい女の子にも見える。

 もっとも、それは彼の首から上だけを見た場合のみだろう。


「でっかい図体してれば、先生がビビるとでも思ったのか? ええ!?」


 彼、芯地与作の身長は一メートル八十九センチ、体重は九十二キロ。引き締まったその身体は筋肉の鎧で覆われている。どこに出しても恥ずかしくない筋骨隆々の巨漢だ。


「……先生」


 ずいっと与作は顔を突き出して、目下に居る小金井に話しかけた。

 身長のさほど高くない小金井は与作の巨体ぶりを改めて感じさせられてしまい、思わず怯んだ。


「な、何だ? 俺を脅すつもりか? 暴力には、く、屈しないぞ」


 そう言いながらも、与作から溢れ出る圧倒的な雰囲気に気圧され、声が震える。

 少女のような可憐な顔で、与作は無表情に言い放った。


「僕は生まれも育ちも日本です」


「いや、それは知ってるが……」


「そして、この髪は地毛です」


「それは明らかにおかし……」


「地毛なのです」


 淡々とした声と人形染みた無表情が合わさり、異様な気迫を放っていた。


「そう、だな。うん、先生が悪かった……それは地毛だ」


 その気迫に押され、小金井はとうとう心が折れ、与作を校内へと入れた。

 与作はこくりと無言で頷くと、下駄箱の方へと歩き出す。その後ろで校門にもたれ掛かり、ぼろぼろと涙を流す小金井の姿があった。


 



 下駄箱で特注サイズの革靴からこれまた特注サイズの上履きに履き替え、与作は自分の教室へと向かう。

 途中、廊下にたむろっていた三人の柄の悪い生徒から、挨拶をされた。


「あ、与作さん。ちっす」


「今日もピンクの髪、決まってますね」


「また小金井の奴、りもせず与作さんに突っかかってましたね。そこの窓から見えてましたよ。ったく、ウゼーから黙ってろって思いません?」


 口々に話しかけるが、与作はそれに逐一対応する。


「ああ、おはよう。吉田」


「僕の髪はいつでも桃色だ。北村」


「まあ、あの人も仕事だからな。少し鬱陶しく感じる事もあるだろうが、僕らの将来を考えての事だ。好意的に見ろ、河内。それとここで溜まってると通行者の邪魔になるぞ」


 彼らは別に与作のクラスメイトという訳ではない。かつて、与作に喧嘩を売り、そして敗北の後に与作を慕うようになった者達だ。

 本人達は与作の舎弟を自称しているが、与作からは単なる知り合いとしか思われていない。


「そうっすね。じゃ、俺らは自分の教室に戻ります」


 彼らぺこりと頭を下げて、各々の教室へと帰って行った。それに軽く手を振りつつ、与作も自分の教室へと入室する。

 扉を開いて、頭を少し下げ、くぐるように入口に入る。長身の彼はそうしないと入口の上部に頭をぶつけそうになるのだ。というか、過去に一度思い切りぶつけて、入口の方が形状を変形させてしまったため気を付けている。

 中に入るとクラスメイトが一斉に与作を見る。一瞬にして喧騒が沈静化され、静寂がもたらされる。

 当然の事だろう。桃色の巨漢で、校内の不良も一目置くような男が教室に入ってきたのだ。毎度毎度の事ながら恐怖を感じずにはいられない。


「おはよう、与作。今日はいつもよりも遅い登校ね」


 そんな中、一人の少女が与作に声をかけた。

 銀色の髪を持ち、やや彫りの深い西洋人のような顔立ち。誰が見ても美しいと感じてしまうほど目鼻立ちの整った少女だった。

 そんな美少女に挨拶をさせた与作は表情を一つ変えないまま、平坦な挨拶を返しただけだった。


「おはよう、さゆり。小金井先生と話していてな。少し遅くなってしまった」


「髪の事で文句を言われたんでしょう。上から見てたわ」


「ふむ。どうも僕は周りの人達からかなり見られているようだな。僕はこんなにも平凡な男だというのに」


「あはは。その冗談は髪染めて、筋肉をもう少し落としてから言いなさい」


 華のように可憐に笑う彼女の名は乗松のりまつさゆり。西洋的な外見と名前が合っていないように思えるが、紛れもない本名だ。

 彼女はイギリス人の母と日本人の父を持つ、所謂いわゆるハーフだった。

 与作とは小学生の時からの幼馴染のため、唯一このクラスで彼を恐れない人間である。

 故にクラスメイトからはさゆりは『芯地与作の彼女』という認識をされており、彼女に言い寄ってくる男は入学してすぐに途絶えた。

 与作やさゆりが別に声高に周囲に触れ回った訳ではないが、お互いその事を否定していないのが原因だった。

 与作の風体を見てよってくる輩は、基本的にほとんどいないので必然的にさゆりと一緒に居る時間が長くなったのもある。


「むう。さゆりは手厳しいな。もっと媚びた態度でないと男に持てんぞ?」


 少女の如き童顔を無表情のまま膨らませて文句を言う与作だったが、さゆりはそれを鼻で笑っただけだった。


 午前の授業が終わり、昼休みに突入するとさゆりは与作の前の席に座り、彼の方を向いて話を始めた。


「与作。最近起きてる『連続行方不明事件』って知っているかしら?」


「知らんな。それより、食事を食べよう。僕は腹ペコだ」


 机の横に引っかけてあるバッグから大きめの弁当箱を取り出して、机の上に置いた。

 さゆりも手に持っていた女の子らしい小さめのサイズの弁当箱を乗せる。


「まあ、食べながら話しましょう。それで『連続行方不明事件』の事なのだけど……」


「言葉通り、連続して行方不明の人間が出ているという事件という事だろう? 事件の名前だけで大体分かるぞ」


 唐揚げを頬張りながら、興味なさそうに与作は答えた。


「そうなのだけど、それがこの町のあちこちで頻繁に起こっているのよ。不思議じゃないかしら?」

「よくあるよくある。誰だってたまにはどこかへ行ってしまいたい時がある」


 白米を箸で口に運び、ペットボトルのお茶のキャップを緩めて言う。


「何、そう気にする事はない。自分探し旅に飽きたら皆戻ってくるだろう」


「あのね、そういうレベルの話じゃないの。ある日突然、家から出て行ったきり戻って来ないの。テレビや新聞、雑誌、インターネットもここ最近はこの話題で持ちきりよ。今日だって貴方が登校してくるまではクラスでこの話をしていたぐらいなのよ?」


 能天気な与作に呆れた様子で、さゆりも弁当箱を開く。

 その時、会話中もずっと動かしていた箸をピタリと止めた。


「何故だ? 僕が来てから話を止めたとはどういう事だ?」


 ショックを受けたような声色なのだが、いかんせん無表情のままなのでいまいち落ち込んでいるのか分からなかった。


「いや、それは与作がクラスメイトに怖がられているから、大きな声で話していると目を付けられるとでも思っているんじゃないかしら? ……というより、今更そんな事に気付いたの? もう九月よ。入学してどれだけ経ってると……」


「つまり、この僕が級友にその行方不明事件の真犯人だと思われているという事か! だから避けられていたのか!?」


 さゆりの話をぶった切る様に与作は叫んだ。クラスに残って昼食を食べていた生徒達は突然の叫び出した与作に恐怖し、クモの子を散らしたように教室から逃げて行く。

 正面に座っていたさゆりは特に驚いた様子もなく、当然のように突っ込みを入れた。


「与作……ちゃんと私の話聞いていた? 誰も貴方の事を犯人だなんて思っていないわ。それと貴方が避けられているのはその筋肉質な巨体とピンク色の髪のせいで不良と思われているせいよ」


 しかし、与作はもう既にそんな事を聞いてはいなかった。頭にあるのは自分の無実を証明する事のみ。最初から自分がクラスメイトに距離を置かれているなど思考の片隅にも存在していない。


「こうしては居られない。僕が真犯人を捕まえて、己の無実を晴らしてみせる!」


 弁当の残りをかき込み、ペットボトルのお茶でそれを一気に嚥下えんげした。

 弁当箱をバッグにしまって、空になったペットボトルを自慢の握力で握り潰し、消しゴムほどの大きさにすると教室のゴミ箱に投げ込んだ。ゴミ箱はちょうど教室の後ろの扉側隅にあるので、窓側の最後尾の与作の席からは角度的に物を入れるのは難しいのだが、野球部もうらやむようなカーブを描き、ひしゃげたペットボトルだった物体は綺麗にゴミ箱へと吸い込まれるように入っていった。

 与作の無駄によいコントロールにさゆりは一瞬、目を奪われる。


「それではさゆり、僕は真犯人を捕まえるために早退する」


 その僅かな間に与作は教室の外まで出ていた。ちゃっかりバッグも片手に持っている。


「ちょっと、与作。本当に行くの!? 午後の授業はどうする気!?」


「無論、授業に真面目に参加できないのは心残りではある。しかし、それよりも己に掛けられた疑いを晴らす事の方が先決だ。先生方には申し訳ないと伝えてくれ」


 そう一方的に言うとそそくさと廊下を早歩きで進み、学校から出ていた。

 呆気に取られたさゆりだったが、仕方ないなと呟くと食事を再開した。





 学校から家に帰り、弁当箱を流しに出して、居間でお茶を飲んでいた母親に経緯を話した後、与作は制服から私服に着替えて町へと繰り出した。

 タートルネックの黒いシャツにモスグリーンのチノパンツ。紺色のジャンパーを羽織ったその格好はなかなかに決まっていた。もしも、彼が桃色の髪に童顔でなければの話だが。


「さて、勢いでここまで来てしまったが、何か当てがあるわけでもない。……どうするか」


 いきなり行き詰まり、交差点の横断道路の前で顎に手を当てて思案する。

 与作というこの少年は別に頭の回転が悪いという訳ではない。成績も学年で10位には必ず入るぐらいのものだ。

 だが、少々天然ボケのがあり、勢いだけで物事を推し進めてしまう傾向がある。そして、異常なほど高い身体能力のおかげで、勢いだけで大抵の事はどうにかなってしまうのでなおさら、性質たちが悪かった。


「よし、しらみ潰しで行こう。そして、目ぼしいところがあったらさらに重点的に調べるとしよう」


 町中を調べ上げるという、常人では選択しない方法を選んだ。情報は足で得るものという実に由緒正しい古典的な方法である。

 この情報社会の中でネット環境のない彼には、この手法以外頭になかった。携帯電話こそ、所持しているが何世代も前の機種でぎりぎりメール機能が付いているだけという素敵仕様のせいもあった。

 捜索を始め、最初は闇雲に道を走り回り、その近辺を歩いていた人に一人一人『行方不明事件』に関して話を聞いていく。

 しかし、彼の外見を一目見て、逃げて行く人が多いため、わざわざ走って捕まえるという作業繰り返され、しまいには警察まで呼ばれる始末。

 駆け付けた警察に事情を話すが、今度は学生という事で補導されかかり、結局逃げるはめになった。

 警察の目を避けるため人通りの多い駅前まで逃げて来た与作だったが、そこで数人がチラシを必死になって配っているのが目に入った。

 どこかのデパートか何かのチラシ配りかと思ったが、それにしては彼らの様子はあまりにも必死だった。さらに配っているのが三、四十代くらいの男女と中学生の少女だったのがさらに与作の興味を引いた。

 そのチラシを一瞥すると、女の子のイラストと共に、『行方不明! 女の子を探しています!』が太い文字が書かれている。


「む……」


 これは事件の手がかりになるかと思い、与作はすぐに彼らに近づいて話しかけた。


「すみません。一つ、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」


「はい?……な、何ですか!? あなた」


 与作を見上げ、紙を声をかけられた中肉中背の男性は慌てふためく。二メートル近い桃色髪の大男がいきなり話しかけてきたのだ。当然の反応だと言えよう。


「いえ、ただ僕はそのチラシを見せてもらいたいだけなのですが」


「チラシ? ……ああ、そうでしたか。すみません。突然、話しかけられたものですから驚いてしまって……」


 間違いなく与作の体格と髪を見て驚いたのだが、流石にそれは口に出せなかったため、男性は苦笑いを浮かべて取り繕う。

 そして、手元にチラシがない事を気付くと近くに居る中学生くらいの少女に言う。


「おい、かおり。この人にもチラシを」


「あ、うん。どうぞ」


 かおりと呼ばれたベリーショートの少女は暗く沈んだ表情で与作の風貌を気にする事なく、抱えていたチラシの一枚を手渡す。

 今のやり取りから察するにこの男性は少女の父親なのだろう。そして、少し離れてチラシを配っている女性の方は恐らくは母親。つまりは家族でチラシを配っているようだった。


「ありがとう」 


 与作はそういうと受け取ったチラシをじっくりと見る。

 そこには藤堂まゆと呼ばれる小学五年生の少女が行方不明になり、見つけたらすぐに連絡してほしいという旨が明記されていた。

 丁寧なイラストが文字と一緒に付いていて、黄色いワンピースと赤いエナメルの靴の可愛らしい女の子がしっかりと描き込まれている。


「この女の子は……君の妹さんか?」


「……はい。ひょっとして、どこかで見かけたことが……」


 暗い顔にほんのわずかな期待を込めて、かおりは与作を見るが、与作は首を静かに振った。


「いや、すまないがない」


「そう、ですか」


 先ほどよりも、沈んだ表情に与作は申し訳ない気持ちになり、かおりに頭を下げた。


「力になれず、本当にすまない」


「いえ、こちらが勝手に期待だけで、あなたが謝るようなことじゃないです。こちらこそ、すみませんでした」


 謝罪をし合った二人を見かねて、かおりの父、敏行は与作とかおりの間に割って入ってきた。


「かおり、お前は一度休憩しなさい。まゆが居なくなってからずっと休んでいなかっただろう?」


「お父さん、私は……」


「学校を休ませたのは元々、お前が心労で倒れたからだ。まゆが心配なのは分かるがいい加減休みなさい」


「……はい」


 しぶしぶ納得したかおりは力なく頷いた。

 敏行はかおりにそういうと、今度は与作に向き直った。


「あの、もしよろしかったら良かったら娘の話相手にでもなってやってくれませんか?」


 最初こそ、与作の外見に圧倒されていた敏行だったが、かおりとの会話を見て、与作の人柄を買ってくれたようだった。

 基本的に親切な人間である与作はこれに二つ返事で応じた。

 与作とかおりは近くのベンチに座り、藤堂夫婦のチラシ配りを見ながら、会話を始めた。


「僕の名前は芯地与作だ。君は?」


「藤堂かおりです……」  


 かおりは目を伏せて答える。

 彼女の様子は傍から見ても憔悴しょうすいしていた。よく見れば目の下に薄らと隈もある。

 与作はそれを見て、口ごもりそうになったが、逆に会話をしない方が彼女にとってよくないだろうと思い、話を再開した。


「妹さんはいつから行方不明になったのか聞いてもいいか?」


「もう一週間も前になります。まゆは遊びに行ったきり、ずっと帰って来なくて……」


 下唇を噛みしめ、かおりは泣きそうな表情になる。よほど妹が心配なのかが与作に痛いほど伝わってきた。

 だが、それでも話を続けた。


「僕は行方不明事件について、調べている」


「……与作さんは探偵なんですか?」


「違うが、絶対に真犯人を見つけ出すつもりだ。だから、君の妹さんも僕が必ず探し出すと約束しよう」


 警察でも一向に捜査の進んでいない行方不明事件を個人で解決するなど戯言以外の何物でもない。しかし、与作の言葉は真剣そのものだった。

 彼の表情には伊達や酔狂で言っているのとは訳が違う、強い覚悟や信念というものが見て取れた。

 かおりの涙腺から、こぼれ落ちそうになった涙が引っ込む。


「本当、ですか? 本当にまゆを見つけてくれるんですか!?」


「ああ、任せてくれ」


 力強い言葉と共にぐっと拳を握ってみせた。

 


 その後、与作は藤堂一家に一礼をして、再び捜査へと繰り出した。

 もはや、彼の頭の中には掛けられた嫌疑を晴らすなどという事は残っていなかった。

 あるのは、何としても行方不明になった『藤堂ゆま』を見つけ出して、家族の元へ帰してあげる事のみ。

 前よりも一層真剣な表情で周囲を隈なく探す。路地裏のゴミ箱やマンホールの下の下水道まで至るところを隅々まで見る。

 しかし、そんな与作を嘲笑うかのように時間だけが無情にも過ぎていく。

 五時間が過ぎて、辺りもやや暗くなり、流石に一度休憩を挟もうかなどと考えていると、ふと塀と塀と間の細い小道が目に付いた。

 何故だかその小道が酷く気にかかり、そこへ誘われるように進んで行ってしまった。

 しばらく、その小道を歩いていると与作は不思議な感覚に囚われた。

 三十分ほど進んでいるのに、行けども行けども終わりが見えてこないのだ。

 最初の頃は随分と長い道だな程度にしか考えていなかったが、それにしてもこの長さは異常だった。

 住み慣れた町のために与作はだいたいは地形は把握している。本来であればこの辺りには大きな川があるはずだった。それにも関わらず、川は少しも見えてこない。

 痺れを切らした与作は全力疾走を試みる。

 彼の足の速さは最高時速の原動機付き自転車に余裕で追いつくほどのものだ。

 しかし、相変わらず左右のそれほど高くない薄汚れたブロック塀とアスファルトのでこぼこ道はどこまでも続いている。

 そして、与作はついに決定的な異常に気が付いた。


「景色がまったく変わっていない……いや、景色が『伸びている』!?」


 錯覚ではなく、足元のアスファルトやブロック塀、そして空の雲や塀の外の建物全てが引き伸ばされた写真のように横に伸びていた。

 あまりにも不自然な光景にも関わらず、与作は今までその事に気付く事ができなかった。いくら彼が天然ボケだといっても説明が付かない。


「一体どうなっているんだ……? そうだ。携帯は?」


 ズボンのポケットから傷だらけの古い機種の携帯を取り出す。

 電波は届いておらず、圏外のマークが小さなディスプレイに表示されていた。


「ふむ。これはなかなかに奇怪だな。だが、ひょっとするとこの小道に行方不明事件の真相が隠されているのかもしれん」


 そう呟くと、与作は自慢の脚力と身長を生かし、塀の上に登ろうとする。

 だが、塀の縁を掴もうとした手は何も掴めなかった。空を切るというよりはそもそも『本来であるなら塀の縁がある部分』が存在しなかった。


「何? これは……映像か?」


 まるでそれは写真の映像のようだった。塀のその向こうの建物もよく見れば立体感がなく写真を拡大して映しているように見える。

 後ろを振り返ると今まで歩いてきた道がいつの間にか塀になっていた。


「なるほどなるほど。否が応でも進むしかないようだな」


 彼はこんな状況にも関わらず、微塵も恐怖の色を表さずにクラウチングスタートの構えを取る。

 そのまま、内心で秒数を数えて、凄まじい瞬発力を発揮する。

 空気を切るような音を響かせて、両腕を振り、走り出した。

 その巨体からは想像もつかない速さで空間を振り切る。例えるなら、新幹線。重量を持った頑強な物体が速度を得た乗り物のよう。

 さらに与作はその異様な体力を存分に発揮し、十五分ほど速度をまったく落とさずに進むと、正面に小さく二つの何かが見えてきた。

 マサイ族並みの視力5.0のある彼にはその何かがはっきりと視認できた。

 手前側の何かは、白い色をしたたか。そして、その鷹と対峙する奥側の何かは一言では形容しづらい蜘蛛クモのような形状をした肌色の異形の生物だった。

 蜘蛛のよう、とはそれが与作が知っている蜘蛛とは天と地ほど差があったからだ。

 その肌色の異形は人間の身体の部位で構成されていた。胴体の部分は目と口を縫い付けた人間の顔を拡大して繋げたような見た目で、その脇から生える四つの脚は巨大な人間の腕だった。

 そして、頭部は髪の長い女性の顔の大粒の目玉がいくつも取り付けられていて、口元は絡み合うように握り締められた指が縦に生えている。

 まるで人体の部位で蜘蛛を模して造られたおぞましい芸術作品のようであった。

 それを見た与作は眩暈めまいと吐き気を覚えつつ、速度を落とした。

 否、落としそうになった。

 与作は、人体の部位で作られたその悍ましい『肉蜘蛛』の口の近くに、灰色の糸のようなもので張り付いている赤い小さな物体を見つけた。

 靴だった。赤いエナメルの小さな靴。

 かおりからもらったチラシに書かれたイラストの藤堂まゆの身に着けていた靴と同じ、赤いエナメルの靴。

 それを目視した瞬間、与作の中の恐怖は消滅した。代わりにいてきたのは激しい怒りだった。

 下がりかけた速度が与作の怒りを燃料にしたかのように急激に上がる。

 目の前の異形の正体や、行方不明事件の真相の事など彼の頭の中からは吹き飛んでいた。

 ただ、必死で探す姉の元に妹を帰してあげる事ができなくなったという後悔と、藤堂まゆの命を奪ったであろう肉蜘蛛への殺意があった。

 与作はまるでロケットミサイルのように、凄まじい速さで肉蜘蛛と白い鷹の元への距離を詰めて行く。


「ん……? だ、誰だ!? お主は!?」


 白い鷹が急速に接近してくる与作に気付いて、振り向いた。

 驚くべき事に白い鷹は人の言葉を発している。

 だが、それを好機とばかりに、肉蜘蛛の“人間の指で構成された口”が開き、薄汚れた灰色の糸が白い鷹を襲う。


「なっ……! しまった!!」


 粘性の糸は白い鷹に巻き付き、絡め取るように拘束する。

 糸のせいで翼を思うように動かせなくなった白い鷹は地面へ音を立てて墜落した。

 しかし、与作はその様子に一切の反応を示さなかった。

 彼には肉蜘蛛の姿だけしか見えていない。それどころか、白い鷹が喋っていた事にすら気が付いていなかった。

 距離がニメートルほど縮まった時、与作は両足を踏み込み、バネのように跳ねた。

 白い鷹が先ほどまで飛んでいた高さを悠々と飛び越して、空中で怒りを込めた右拳を振り上げ、無言のまま肉蜘蛛へと叩き込む。

 握り締めすぎて青白く鬱血した拳が、肉蜘蛛の頭部に直撃した。

 鈍い音が周囲に響く。

 与作は硬質なゴムのような感触と、べた付く灰色の細い糸を拳に感じた。

 耳障りな鳴き声を上げて、肉蜘蛛は頭部を激しく揺らした。

 氷柱のような鋭い目付きの無表情で与作をそれを見ながら、地面へ静かに降り立つ。その手にはいつの間にか赤い靴が握られていた。

 白い鷹はくちばしを開き、人間でいうところの唖然とした表情で硬直している。


「……少しは効いたか?」


 赤い靴をズボンのポケットにしまい、ドスを利かせた低い声で与作は肉蜘蛛を睨み付けた。


「ギチギチギチギチギチギチギチギチ――!!」


 肉蜘蛛は激昂したように口元の指を動かし、不快な鳴き声を吐いて、その巨大な人間の腕のような前脚を与作へ振り下ろした。


「あ、危ないっ! 離れよ!!」


 白い鷹の悲鳴に近い声を聞きながら、与作は肉蜘蛛の前脚を離れるどころか、さらに肉蜘蛛へと近付く。

 対象を見失った前脚は『引き伸ばされた画像のようなアスファルト』の地面に大きな手形を付ける。


「鳥? 人の言葉を喋るのか? まあ、いい……しかしな、鳥よ。こいつから離れたら――」


 与作はようやく人語を話す白い鷹の存在に気付いたが、特にそれほど驚く事もなく、言葉を返す。

 振り下ろされた丸太のように巨大な前脚を当然のように潜り抜け、ふところに入り込むと与作は身体をひねる。

 そこから、さらに力を込めて、渾身の回し蹴りを放つ。


「蹴り飛ばせないだろう……?」


 無表情で、静かにそう呟く。

 腹部の『顔』がその衝撃で僅かに形状を歪ませた。


「ごぼっ、ごぼぼっ!!」


 しかし、その『顔』の閉じられた目や口からどす黒い液体を飛ばしてきた。

 至近距離に居た与作は当然避ける事などできるはずもなく、正面から浴びてしまう。


「ぐっ、何だ……!? これは!?」


 辛うじて、顔を腕で覆うが、彼の服に付着した液体は煙を上げ、付いた箇所を溶かしていく。

 焼け付くような痛みが与作の皮膚を襲った。

 まるで身体中にできた傷口から熱湯を注ぎ込まれているかの如き苦痛。

 与作は激痛に耐えながら、咄嗟とっさに酸の液体がこびり付いた上着を脱ぎ捨てた。その際、溶けて皮膚と混ざり合ったジャンパーと共に与作の肌も削げ落ちる。

 絶叫を上げたくなるような痛みを感じつつも、泣き言一つ漏らさずに与作はすぐに肉蜘蛛の正面から離脱を試みる。

 だが、その致命的な隙に横薙ぎに振るわれた肉蜘蛛の前脚が与作を捉えた。

 脇を抉るように飛んでくるそれを押さえつけようと両腕を使い、掴みかかるが、さしもの巨躯きょくの与作と言えども、質量の差には勝てず、ブロック塀に叩きつけられた。


「うぐっ……」


 身体がくの字型に折れ曲がり、のどからうめき声が漏れた。

 ずるずると塀にもたれ掛かり、与作は座り込んでしまった。

 激しい衝撃音したが、『引き伸ばされた画像のようなブロック塀』は砕けておらず、立体映像のようにそこに鎮座している。


「ああ……わしが、儂がもっとしっかりしていれば、こんなことには……」


 灰色の糸に絡みつかれたまま、地面に横たわる白い鷹は与作に悲痛な瞳を向けた。

 肉蜘蛛は身動きの取れない白い鷹に近付き、身の毛もよだつ頭部を寄せると指の付いた冒涜的な口を開く。

 灰色の糸とは別に透明な唾液が糸を引いた。


「済まぬ、わらし。本当に済まぬ……儂が弱いばかりに」


 己の身の危機だというのに、白い鷹の最期の言葉は与作への謝罪だった。

 口を開き、今にも自分を食らわんとする肉蜘蛛には目も向けず、塀に背を預ける与作に心底申し訳なさそうに頭を曲げる。


「済まぬ……」


「よく分からないが、鳥……お前がそんなに謝る必要はないぞ」


「え?」


 与作はその身を起こし、首や肩を鳴らす。

 肉蜘蛛の一撃は普通の人間なら身体中の骨は砕け、内臓は潰れていてもおかしくないダメージだった。

 ――そう。普通の人間ならば。

 筋骨隆々のピンク髪のこの少年が普通であるはずがない。

 先ほどの溶解液により、腕の皮膚はただれ、真っ赤な内面がグロテスクなまでに露出している。肋骨も恐らく一、二本折れている事だろう。内臓はもちろん、ブロック塀に叩き付けれられたせいで脳の方にもダメージが届いている。

 けれど、それだけである。

 理想的で高性能な筋肉と並外れた運動神経を持ちあわせている彼にとっては大した事ではない。


「何故なら僕はこの通り、無傷だ」


 無論、ダメージはある。少なくても普通ならば、痛みに悶え苦しむ事は確実だろう。打たれ弱い人間なら、激痛に耐えきれず気絶するかもしれない。

 しかし、桃色頭ピンキーヘッドは伊達ではない。芯地与作という少年は肉体だけでなく、その精神に至るまで強靭だった。

 肉蜘蛛は白い鷹から立ち上がった与作に視線を移すと、今度こそ止めを刺すために再び前脚を持ち上げる。先ほどの攻撃よりも速さも鋭さも上がっているようだった。

 ギチギチと響く不快な鳴き声は、どこか与作への罵倒のように感じられた。


「ワンパターンだな。……もう食らわん!」


 速度の上がった鋭敏な一撃だったが、軌道や間合いは前と大差はない。動体視力の優れた与作にとって、もはやこの前脚は障害にならなかった。

 とは言え、肉蜘蛛とて与作への油断は既に消滅していた。彼が避ける事を想定して反対側の前脚が間を空けずに飛んでくる。

 宙に躍り出た与作にそれを避ける術はなく、背中から叩き落され、地面を転がった。


「ぐっ……」


 どうにか受け身を取る事で落下によるダメージを減殺したものの、肉蜘蛛の振り下された前脚をもろに受けてしまったせいですぐには立ち上がる事ができなかった。もっとも、それを受けたのが彼以外の人間ならあの一撃で臓器が割れて、命を落としていただろう。

 今度こそ、完全に息の根を止めるために肉蜘蛛はその両の前脚で与作を掴み上げた。

 人間の腕に酷似したその二本の前脚は与作を握り締め、彼の身体を捻じ曲げようとする。

 凄まじい握力で与作は雑巾のように絞り上げられる。


「っうあ…………」


 指を使ってがっちりと固定されたように握られる彼は身動みじろぎする事すらままならない。 

 太めの木の枝が折れるような音が数回ほどした。

 肉蜘蛛は片方の前脚だけ離し、足の方を握っていた前脚だけで与作を握り直すと、地面や塀に執拗しつように叩き付け始める。


「もう止めろ! 止めてくれ! その童から手を離してくれっ!!」


 糸の鎖に囚われ、文字通り手も足も出せない白い鷹は懇願するように叫ぶが、肉蜘蛛は与作を振り回し、傷付ける事を止めようとしない。むしろ、楽しむ様子さえ感じられる。

 おかしな方向に折れ曲がった両腕を力なく垂らし、頭から血を流しながら、与作は朦朧もうろうとした意識の中で考えていた。

 その内容は自分が死ぬかもしれない、という死に瀕している人間が思う当たり前のようなものではなく、家族や友人の事でもなかった。

 脳裏に浮かんでいるのは、かおりの顔。そして、彼女の両親の顔だった。

 ――あの一家は藤堂まゆが死んだ事も知らずに、ずっと彼女を探し続けるのだろうか。

 ――葬式も挙げられないまま、もしかしたらという期待を込めて自分が藤堂まゆを見つけてくれる事を信じ続けるのだろうか。

 ――ここで自分が死ねば、彼らはこれからも捨てられぬ希望を抱いて、もう決して戻りはしない家族のためにあそこでチラシを配り続けるのだろうか……。


「だ……めだ。死ね、ない……」


 血の混じった唾液を吐き出しながら、与作はそう呟いた。

 落ちそうになる意識を精神力だけで必死に繋ぎ止める。それに連れて鈍りかけてきた全身の痛みが鋭さを増した。

 だが、彼はうめき声一つ上げず、じっと機会を待つ。

 悶絶ものの痛みの嵐の中で全精神を集中させ、肉蜘蛛の拘束を緩める瞬間を狙い澄ませる。

 何度も何度も地面や塀に与作が叩きつけられ、周りを紅く染め上げていくが、それでも与作は歯を食いしばり、黙って耐え続ける。

 これが芯地与作の常人離れした強さだ。常人なら、この状況で諦め、死を受け入れてもおかしくはない。

 しかし、与作は絶対に諦めない。だから、勝機が回ってくるまで苦痛の海の中で耐え忍ぶ事ができる。

 自身が叩きつけられる音と白い鷹の叫びだけを聞きながら彼は待ち続ける。

 ちょうどその音が四十七回目に到達したその時、肉蜘蛛の拘束が緩んだ。

 それは何度も与作叩き付ける度に僅かにできていった手の平の隙間が一定の大きさになった事でしょうじたものだった。

 彼の根性と忍耐力の粘り勝ちである。


「今だぁっ!」


 折れた手足に力を込め、鍛え上げられた背筋を使い、自身を魚が跳ねるのように動かし、どうにか肉蜘蛛の前脚から脱出に成功した。

 血液が世界地図のように広がった地面に落ちた。

 満身創痍の肉体を気合と筋力だけで立ち上がると、へし折れた腕を構え、肉蜘蛛と相対する。

 血に塗れ、顔全体を真っ赤に染められながらも、与作の瞳だけは闘志を失っていない。


「童……生きておったのか!?」


「ああ、僕は頑丈だからな。このくらいじゃ死なない」


 白い鷹に強気に振る舞うも、肉体に蓄積された傷やダメージは生半可なものではなく、命に関わるほどの重傷だった。

 いつ死んでもおかしくない。いや、何故死んでいないのか医学的に理解する事ができない次元の話だ。


「だが、童。もうその身体では戦えまい。まして、こいつは物理的な攻撃はほとんど通用せぬ“隠し神”だ」


「隠し神? この肉の蜘蛛の事か」


「そうだ。そして、お主……生き残る気があるのなら、儂と契りを結んではくれぬか?」


 白い鷹と会話をしながらも、ひと時も肉蜘蛛から視線を逸らさなかった与作がその言葉で白い鷹の方に顔を向けた。


「……鳥よ、契りとは確か、男女が性交に及ぶという意味……」


「そちらではないわ、たわけぇ!! 契約の事に決まっておろうがっ!!」


「そうか。良かった。鳥に肉体関係を迫られているのかと思った」


 無表情ではあるが、与作は僅かほっとしたような顔になった。

 与作と白い鷹が漫才のようなやり取りをしている内に肉蜘蛛は前方の四本の脚を地面から離し、残りの四本の後ろ脚だけで巨体を支えていた。

 どうやら、与作の強靭さに本格的に警戒し、言葉通り、手数を増やす手段に出たようだった。

 頭部の眼がぎょろりとうごめき、与作をにらむ。


「ぐ、奴め、今度こそお主を仕留めるつもりだ。それで返答は!?」


 白い鷹が焦りながら与作に尋ねた。

 対する与作は瀕死の重傷のだというのに落ち着き払った様子で答えた。


「うむ。本来なら、捺印の押されている正式な契約書を見せてもらわなければ契約などしたくないが、緊急時なのでこの際譲歩しよう。良いぞ、その契約を結ぼう」


「お主……そんな状態でよくそんな態度で居られるな」


「僕はお主でも童でもない。僕の名は芯地与作だ。鳥よ、覚えておけ」


「儂の名も鳥ではなく、“かるら”だ。まあ良い……契約成立だ」


 肉蜘蛛が彼らを阻むように四本の前脚を振り下ろす。

 しかし、その前に白い鷹が姿を変えて、糸の拘束を引きちぎり、与作へと飛んでいく。

 白い鷹はいつの間にか白い猛禽類を模した仮面へと変わっていた。

 磁力に引かれる磁石のように仮面は与作の顔に張り付く。

 その瞬間、まばゆい光が与作から放たれ、至近距離に居た肉蜘蛛はその眼を光で焼かれた。


「ギチギチギチギチギチッ――――」


 相変わらずの耳障りな鳴き声を発しながら、振り下ろそうとしていた前脚を顔の前に持ってきて眼を覆う。

 肉蜘蛛の前の光が止むと、目の前に居た与作の姿は驚くべき変貌を遂げていた。

 長く伸びた大きな嘴を模した顔を隠す兜、頭から足先にかけて身体に纏っている鳥の羽根の意匠が要所でほどこされている東洋風の鎧。

 その姿はまるで鳥人のようだった。

 鋭く見るものを魅了するような流線型の仮面や、神秘的な雰囲気を醸し出す鎧はとても人の手では作り出せないほど整っている。

 ただ、それを台無しにするかのようにその全てがピンク色で彩られていた。

 粒子状に表面から放出されている光に至るまでピンク色に輝いている。

 与作は自分の手や身体を見て、たった一言だけ述べた。


「……前衛的なカラーだな」


 その言葉に今は姿なき、白い鷹、かるらの声が与作の脳内に響き渡る。


『それだけか!? もっと何かないのか!? 己の姿が変わっているのだぞ?』


「うん? 鳥よ、どこから話してかけているんだ? 姿が見えん」


『今、お主が纏っている桃色の鎧が儂だ。……何故桃色なのかは儂にも分からないが』


 かるらと与作は少し言葉を交わしている内に与作はある事に気が付いた。

 身体中を這い回るように感じていた激痛が綺麗さっぱりなくなっているのだ。その上、折れていたはずの腕も元通りになっていた。


「ほう。これがさっき、言っていた“契約”という奴か。非常に便利だな」


『儂の力を便利の一言で済まされるとは思ってもみなかったわ。本当に豪気な人間なのだな、与作は』


 溜め息まで与作の脳内に響いたが、かるらはすぐに真面目な声を出した。


『与作よ。よく聞け。今、儂とお主は一心同体となっている。だが、十分も経てばこの状態は解けてしまうだろう。故に早急に隠し神を倒さねばならぬという事だ。協力してくれ』


 与作はそれに間髪入れずに答える。


「わかった。なら取りあえず――この肉の蜘蛛を殺せば良いんだな?」


 顔を覆っていた四本の前脚を広げ、与作に突進してきた肉蜘蛛を見据え、声のトーンを落とした。

 前脚の先の手の平が拳状に握られる。

 垂直に振り抜かれたその拳は与作が立っていた場所を地面ごと抉った。


「ギチチッ」


 どこか笑い声に似た鳴き声を吐いた。遂に与作を仕留めたと確信に満ちた様子だった。

 嬉々として、前脚を退かし、与作の死体を確認しようとする。

 しかし、そこには彼の死体はなかった。


「僕はこちらだ」


 頭上から聞こえた与作の声に反応し、頭部を上向きに上げる。


「そう。それでいい」


 初動作すら見えない速さで肉蜘蛛の真上まで跳んでいた与作が引き絞っていた右の拳を解き放つ。

 与作を視認するためにこちらに向けられていた眼のほとんどが避けようもない迫り来る脅威を見た。

 それは質量をともなったピンク色の閃光。あまりの速さにそうとしか認識できなかった。


「グギャッ!!」


 肉蜘蛛の頭部に衝突と同時に肉蜘蛛の眼の大半は潰れ、口元に付いていた『指』は弾け飛んだ。

 与作の拳が接触した部分は削り取られたように砕かれ、青緑色の体液を音を立てて垂れ流す。

 ふわりと羽毛のように肉蜘蛛の脇へ緩やかに着地して与作は冷たく言い放った。


「痛いか? それはお前に命を奪われた幼き女の子の分だ」


 与作の方に頭部を向けると、肉蜘蛛は激昂したように口から灰色の糸を与作に向けた吐き出す。


『与作、あの糸に絡まると身動きが取れなくなるばかりか、生命力を吸い取られるぞ! 気を付けろ』


「そうか。それで鳥はぐったりと地べたに這いつくばっていたのか」


『むう、それはほじくり返さんでくれ……』


 鎧と化したかるらと仲良さげに会話をしながら、与作は避けようともせず、糸を真正面から受けた。


『なぁ!? 儂の忠告聞いていなかかったのか!?』


「そう騒ぐな、鳥よ。……何、ただ少し綱引きをしたくなっただけだ」


 身体に張り付いた糸をぐっと両手で掴み、肉蜘蛛が糸を吐き切るまでに力を込めて、手前に引く。

 与作が糸を浴びた事により、僅かに油断していた肉蜘蛛は口から吐いている糸ごと頭部を引っ張られ、つんのめる形になる。

 肉蜘蛛の頭部が与作のすぐ近くまで引き寄せられた時、与作は糸を腕で引っ張った姿勢で回し蹴りを浴びせかけた。


「これはお前が奪った女の子を今も探し続けている彼女の両親の分だ」


 強烈な蹴りにより肉蜘蛛の顎がとうとう完全に破壊され、ピンと張っていた糸が途中でちぎれて、だらりと力なく垂れ下がる。

 不快な鳴き声さえ上げられなくなった肉蜘蛛は、腹部を見せるようにその巨体を逸らす。

 腹部にある『顔』の目や口が開き、空洞のその部分からおびただしい量の溶解液を与作に降り注ぐ。


「これは……避けられんな」


『何故、お主はそんなに冷静なのだ……先の戦闘といい、儂は与作が本当に普通の人間なのか怪しく思えてきたぞ』 


 かるらの呆れ声に耳を貸さず、与作は掛かる溶解液を最小限に抑えるため、上へと飛び上がった。

 ピンクの鎧に溶解液が掛かり、付着した場所から黒い煙が上がる。

 幸いに鎧を溶かすほどの効果はないようで与作は安心したが、鎧になっているかるらは絶叫を与作の脳内で響かせた。


『あんぎゃーっ! 熱い! 痛い! 臭い!!』


 与作は冷静にその悲鳴を無視し、溶解液の降り注ぐ場所を難なく抜けた。

 視界が見えるようになった瞬間、指と指を絡ませた合掌がっしょうが与作の目の前に現れる。

 肉蜘蛛は与作が上に逃げる事を予測して、待ち構えていたのだ。


「ぐっ」


 振り下ろされたアームハンマーは与作を叩き落し、溶解液の水溜りへと落下させた。

 背中から落下し、受け身も取れず、溶解液に身体を浸けてしまう。


『熱いいぃぃぃ――!!』


「これが狙いだったのか。侮れんな」


『与作よ! 儂に対して何か言う事はないのか!?』


うるさい。もっと静かに叫んでくれ」


『あまりにも酷くはないか!?』


 起き上がろうとする与作に更なる四本の脚が追撃とばかりに迫ってくる。

 与作は右手を溶解液の水溜りに浸けて、その中の溶けかけている地面を軸にして、ハンドスプリングの要領で右に避けた。


『与作、あまりその液体に儂を浸け込まないでくれ……』


「鳥よ。僕は泣き言が大嫌いだ。分かったら、黙っててくれ」


『もうお主には何も望まぬよ。……何故、儂はこんな人間と契りを結んでしまったのだろう……』


 心なし、鎧のあちこちが溶けて装飾が変形しているようだったが、与作にはそれを確かめる術はない。そして、その事を気にするような人間でもなかった。

 物言わぬ鎧となったかるらに与作が尋ねる。


「奴に致命傷を負わせる事はできないのか。このままじゃジリ貧だぞ」


『……ようやく、そちら話しかけてくれたか。そうだな、時間も残り二分しかない。ここは“霊鳥翼れいちょうよく”を使うしかあるまい』


 肉蜘蛛から距離を取るように動きながら、与作は聞き返した。


「何だ、それは? 必殺技か何かか?」


『その認識で間違いはないな。ただし、これを使うには契約者の生命力が必要だ。お主の寿命は十数年は削れるだろう。……それでも良いか?』


「良いぞ。遠慮なく、さっさと使ってくれ。どの道、ここで死にかねないなら寿命など何の役にも立たないからな」


 あっけらかんとそう言う与作に、かるらはもう特に反応しない。

 ほんの少しの付き合いだが、与作がどういう人間なのかが嫌というほど理解してしまったからだ。


『それなら使うぞ。《オン・ガルダヤ・ソワカ オン・キシハ・ソワカ オン・ハキシャ・ソワカ》』


 与作を纏う桃色の鎧がさらに色濃く輝きを増していく。

 桃色の光る粒子が後ろへと集まり、溶解液に浸かった事で若干溶けていた鎧の背中側から、神々しい翼が生まれた。

 色はやはりというか、当然ながら桃色だった。

 与作は自分の身体から、大切な何かが抜けていくのを感じた。恐らくはそれが生命力というものなのだろう。


『与作よ。霊鳥翼が完成した。空を飛び、隠し神に突っ込め!』


「分かった」


 颯爽と与作が跳ねると、それに連動するように翼がはためき、空中を舞う。

 そのまま、距離を取っていた肉蜘蛛へと接近する。

 迎え撃とうと突進してくる肉蜘蛛。

 すると、翼が急激にその大きさを拡大させ、与作の身体を覆い尽くすように巻き付く。


「これは……」


『安心せよ、与作』


 身体に纏われた翼は、浮力を失わないどころか、高度を上げて肉蜘蛛へと突き進む。


『この翼は儂らの無敵の盾であり――』


 襲い来る肉蜘蛛の四本の前脚をいともたやすく、弾き返した。

 接触した脚は引きちぎれ、肉蜘蛛の後方へと吹き飛んでいく。


『そして、最強の矛でもある』


 勢いを少しも殺さず、肉蜘蛛の巨体に激突し、その腹部を貫通した。

 風穴を開け、そこから体液を流しながら肉蜘蛛はその身をぐずぐずと溶かしていった。

 翼を広げて、地面に降り立った与作はそれを見て、最後に呟いた。


「それはお前が奪った女の子の帰りを待つ、彼女の姉の分だ」



 その後、与作に付いたかるらは再び、鷹の姿に戻ると鎧は桃色の粒子となり、消えていった。

 先ほど受けた傷は鎧が消えても全て治ったままだったので与作は一安心する。


「何故だ!? 儂の白かった身体が……」


 しかし、白かったかるらの姿は何故か桃色に変わり果てていた。

 関心のなさそうに与作は言う。 


「色物と一緒に洗濯した無地のシャツみたいだな」


「明らかにお主の影響だろうが!」


「そんな事は知らないぞ。ん? 景色が」


 怒り出すかるらを余所に与作は周囲の景色が変わっていっている事に気が付いた。


「主である隠し神が消滅した事で奴が作った偽装空間が崩れていっているのだろう」


 与作の疑問に答えるようにかるらがそう言った。


「偽装空間?」


「隠し神が人を誘い込むために作る空間の事だ」


 そうか、と与作は小さく頷いた。

 きっと最近の行方不明者はここへ誘われ、あの肉蜘蛛に捕食されていたのだろう。

 そして、藤堂まゆもその例に漏れていなかった。

 与作はポケットに入れてあった赤いエナメルの靴を取り出した。

 ジャンパーは溶解液で溶かされ、シャツの袖も同じく溶けてなくなってしまったが、ズボンのポケットに入れていたこれだけは無事だった。

 それを数秒眺めた後、またポケットに入れ直した。


「それで鳥、お前は何者なんだ? それに隠し神というのは何なんだ?」


 真面目な雰囲気を纏い、変色したかるらに聞いた。


「儂は天狗だ。奴ら、隠し神という人をさらい、食らう化物からこの町を守護する……言わば守り神のようなものだ。もっとも、今では信仰するものも居なくなり、人と契約を結ばねば戦う事すらできなくなってしまったがな」


「天狗? 天狗というとあの真っ赤な顔面に直立した男性器のような鼻を持つ妖怪の事か?」


 真剣そうな口調でとても下品な事を言う与作にかるらはげんなりした。


「お主、最悪な表現をするな……まあ、あながち間違いでもないか」


「やはり男性器のような鼻を……」


「持っとらんわ!! 儂が間違いではないと言ったのは妖怪の方だ」


「だろうな」


 与作はかるらに対して冗談を言ったつもりだったが、本人は無表情のため、非常に分かりづらかった。

 話の腰を折られつつも、律義にかるらは続きを話していく。


「妖怪というのは、そもそも神がその神格を落としたものだ。天狗は元は山や土地の神だった。儂はここの土地の神だったが、誰もまつらなくなり、天狗へと成り下がった。隠し神もまた似たような存在だ。……今、儂らが倒したあの蜘蛛の隠し神も恐らくはどこかの神だったのだろうな」


「なら、天狗と隠し神の違いは何だ?」


「そうだな」


 そこでかるらは少し考える素振そぶりをしながら、ぽつり言った。


「己の存在理由を覚えているか、いないかの違いだ」


 かるらのその言葉には言い知れぬ哀愁が漂っていた。


「そうか」


 与作はかるらの存在理由が何なのかは聞こうとしなかった。それは生半可に聞いていいものだとは思わなかったからだ。


「契約者というのは?」


 話を急に変えた与作にかるらは内心感謝しながら、答えた。


「文字通り、儂のような天狗と契りを交わした人間の事だ。つまりはお主の事だな。契約者は天狗を鎧に変え、隠し神と戦う運命さだめにある。事後承諾のような形なってしまって済まぬが……与作よ。儂と共に隠し神と戦ってくれるか?」


 懇願するようなその問いに与作はやはりあっさりと返事をした。


「良いぞ」


 もう、藤堂まゆやその家族のような被害者は出したくない。

 それが与作の本心だった。


「ありがとう、与作」


 かるらの感謝の言葉の後、タイミングよく景色が変わり、あの引き伸ばされたブロック塀やアスファルトの道は影も形もなくなっていた。

 それを確認すると与作は駅へと向かう。


「どこへ向かうのだ?」


 与作は答えなかった。

 ただ、無言で与作はポケットの中の小さな靴をぎゅっと握りしめた。

 差し込んでいた夕日が徐々に姿を消していく頃、駅の広場に到着すると、彼は周囲を見渡す。

 かるらは与作の行為の意図が理解できなかったが、彼から離れて、空から見下ろしている。

 そして、与作は今もせっせとチラシを配っているかおりを見つけた。

 彼女は額に汗を浮かべながら、少しでも行方不明になった妹の手掛かりを探すべく、道行く人にチラシを手渡していた。

 時に無視され、時に渡したチラシを無下に捨てられようとも、彼女は懸命に一人でも多くの人に妹の事を聞いて回る。 

 その姿を見て、自分のしようとしている事がどうしようもなく残酷な行いだと与作は思った。

 このまま、自分は何も言わずに立ち去った方が良いのかもしれないとすら考えた。

 けれど、それは逃げだ。

 真実を知った人間はそれを伝える義務がある。

 でなければ、あの妹思いの優しい姉は道化に成り下がる。

 与作は覚悟を決めて、かおりに近付いた。


「……藤堂かおりさん」


 かおりは与作の姿を目にすると、チラシ配りを中断して話しかけてきた。


「芯地さん。どうしたんですか? ひょっとして、まゆの事何か分かったんですか!?」


 期待のこもった瞳を前に与作は黙ってエナメルの赤い靴を取り出して、彼女に渡す。


「これ……! まゆの、妹のものです!! お父さんにねだって買ってもらったのを覚えています! どこで……どこでこれを!?」


 与作はそれに答えず、代わりにかおりを地獄に叩き落す惨たらしい台詞を送った。


「妹さんはもうこの世には居ない。彼女は……化物に喰われた」


「え……? それは……それは、何の冗談ですか!?」


 一瞬、与作の発言の意味を理解できなかったかおりだが、脳がその言葉の意味を理解すると怒声を上げた。

 無理のない事だった。ようやく妹の手掛かりが掴めるかと思ったところで、化物に喰われたなど言われればからかわれたと取るのは自然な流れだ。


「嘘でも、冗談でもない。……必ず見つけ出すと約束したくせに僕は何もできなかった。本当に済まない」


 しかし、与作はどこまでも愚直で、正直で、呆れるくらい不器用だった。

 彼はかおりに頭を深く下げ、己にできる精一杯の謝罪をする。


「……えって下さい」


 小さな聞き取りずらい声に与作は聞き返そうと顔を少し上げて、かおりの顔を覗き込む。

 彼に見えたのはかおりの涙を瞳に溜めた顔だった。


「帰って下さい――!!」


 そう言って彼女は手に持っていたチラシの束を与作に投げ付けた。

 与作はそれを拾おうとしたが、自分にはその資格がない事に気付き、途中で手を引っ込めた。

 これ以上ここに居ても、かおりを傷付けるだけだと思った彼は最後にもう一度謝罪の言葉を言い、その場を去った。


「――嘘つき……」


 背を向けた与作に容赦のない言葉が突き刺さる。

 彼は甘んじてそのなじりを受け止めた。

 かるらは空から、その様子をじっと見つめていた。

  


 家へ帰ると与作は夕食も食べずに自分の部屋へと引きこもった。

 ベッドの上に大の字に寝転がり、天井をぼんやりと見つめた。

 かるらは与作に掛けてやる言葉が見つからないのか、それとも余計な事を言わない事が良いと思っているのか、与作の家に近い電柱の上に止まって窓の外から静かに彼を見守っている。

 しばらく、与作がベットで寝ていると、唐突に部屋のドアが開かれた。

 部屋につかつかと我が物顔で入ってきたのは、母親ではなくさゆりだった。


「おばさんから聞いたわ。与作、貴方帰ってくるなり、部屋に籠りだしたんですって? 一体、今日何があったの?」


 責めるような声にとは裏腹にさゆりの表情は心配そうなものだった。

 それに対して、与作は何も反応を示さない。 

 しかし、その無言で与作の事が分かったというようにさゆりは質問を止め、ベッドに寝転がる与作の手を優しく握った。

 両手で包み込まれる温かさと感触が与作は感じた。


「何か辛い事があったのね?」


 与作は答えない。けれど、さゆりは無理に聞こうとはしなかった。


「貴方、辛い事があった時はいつもそうやって一人で抱え込むわね。少しは話したっていいのよ? やせ我慢なんかしてたって何も解決しないわ」


 さゆりは諭すようにそう言うが、真一文字に引き結ばれた口は決して開こうとしなかった。

 だが、与作はさゆりの手を軽く握り返す。

 それだけで全てが通じ合ったようにさゆりは微笑を浮かべた。

 お互いに長い間、幼馴染をやっているおかげで言葉にしなくても何を思っているのかが伝わる。

 少しの時間、視線すら合わせないまま、与作とさゆりは手の平の感触を感じ合った。


「じゃあ、私はそろそろ行くわね。また来るわ」


 手を離して、さゆりが部屋を出て行こうとする。

 彼女が去る間際に与作はさゆりの方を向いた。


「……ありがとう、さゆり」


 さゆりが振り返ると、そこにはいつもの無表情の与作の顔があった。


「ふふ、何だか吹っ切れたようね」


「ああ、僕らしくなかった」


 ベッドから身を起こし、両手で自分の頬を引っ叩く。

 ぱしんっと良い音が響いた。


「もう大丈夫そうね。それじゃ、また明日、学校でね」


「ああ、そうだな」


 ドアの閉じる音を聞いた後、与作は改めて己に誓いを立てる。

 この町で起きようとする行方不明事件を絶対に阻止する、と。

 彼の桃色の髪が開いていた窓から入ってきた風にそよがれ、小さく揺れた。


この作品を書いた理由はできるだけアンバランスな主人公を描きたいというのが理由でした。

ピンク髪のヒロインが居るのなら、ピンク髪の主人公が居てもいいですよね?

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