表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

 


 働いて、働いて、働いて。

 日本人は働きすぎな民族だと俺は思う。

 だってよー、おかしいだろサービス残業って…。

 なにそれ、無駄働きジャン!ってみんな思わないわけ? 

 なんか周囲の仕方ないよ、みんな同じなんだからみたいな空気に流されてるよね絶対!

 

 というわけで俺は、サービス残業をおかしいといえる日本人であろうとしただけなんだ。

 そう、おかしいことをおかしいと言える人間でありたいもんね!

 でもよ…そういうやつは俺みたいになるんだよ…。


 「君今日から来なくていいよ。」…じゃねぇよ!!

 その禿げ過ぎてるのに私は禿ではありませんみたいに少ない髪を伸ばして、頭皮を覆うように隠したバーコード頭を扇風機で飛ばしてやんぞ!


 てな、わけでよ…俺はクビになったわけよ。聞いてくれてありがとセニョール。

 

 「クビになると色々吹っ切れちゃうよね!プファー!!うまい!うま過ぎる!失業保険で飲む酒!!

 うん、飲んだくれになっちゃうよね、だって俺悪くなくね?

 うん、悪くない!俺は悪くないんだ!」


 そんな事をカウンターでコップをキュッキュと音を立てて拭いてるマスターに言っていると、マスターは、「そういう時は飲んで忘れてしまえ!」なんて事を言った。

 

 いやーいい事言うねマスター!!

 俺はマスターの言葉通りに飲みまくった、今まで飲んだ事もないほどに大量に。


 そこから先の記憶はない。

 っで、俺は今酒場と銀行の受付が合体したようなカオスな建物内の机で目を覚ましたわけだが。


 ここどこだよ…。

 

 昨日俺が飲んでいたバーカウンターではない。

 謎である。

 とりあえず、席を立つ。

 すると怒声が飛んでくるではないか。

 

 「ジェイ!食い逃げは許さないからね!!」

  

 後ろからの声に振り返ると、肉付きの良いというか良過ぎる気の強そうなおばさんが目に入る。

 腕っ節も強そうである。

 なぜだかその強そうなおばちゃんは俺を見ている気がする。

 いや、俺ジェイじゃねぇし!俺は後ろを振り返る。

 うん、、、誰もいないぞ?

 まさかね、、。


 「なに後ろ見てんだい!あんただよ、あ・ん・た!」 


 「…はい?」


 まじか、俺なのか?

 俺はジェイなのか?

 ゲイに聞こえるから勘弁して欲しいんですけど…。

 

 「なにすっとぼけてんだい。ほら、それだよそれ、それの代金さっさと払いな」

 

 それそれ詐欺ですか?と思いながらもおばちゃんが指差す方に視線を向ける。

 それは俺の目の前。

 おばちゃんが指差す所には空の木でできた皿が置いてある。

 つまりは俺が今まで座っていたところにである。


 俺は今の状況を考える。

 ふむふむ。

 酔っ払って、バーを出た。

 小腹が減った俺はどこかの飲食店に入った。

 お腹が膨れると眠気が襲ってきて眠ってしまった。

 というところだろうか。

 

 うん、これは確かにこのままでは食い逃げになってしまうな。

 だがしかし。

 だがしかしだ!俺はジェイでもゲイでもない!!


 「人違いでは?」

 

 俺がそう言った直後、俺は意識を刈り取られた。



 目が覚めるほどに冷たいなにかを顔に浴びせられ、俺は飛び起きた。

 鼻やら口やらの器官に入り、軽く(むせ)る。

 

 「うっう…」

 

 器官に入った液体を吐きながら周囲に目を向ける。

 桶を持ったおばちゃんが目の前に仁王立ちしていた。

 そこで俺は悟る。

 おばちゃんに水かなにかをぶちまけられ無理やりに起こされたのだろうと。

 

 「起きたかい?」


 気を失う前のおばちゃんより少し元気がない。

 もしかすると心配してくれてるのかもしれない。


 好機!!

 俺は心の中で叫ぶ。

 気絶する前の状況をうやむやにできる好機(チャンス)到来である。

 

 「ぐわぁ!」


 俺は立ち上がるとよろめき、大丈夫ではない事をアピールする。

 息を荒げさせ、必死の形相を作る。

 俺は重症を装い、食い逃げの濡れ衣をあやふやにする予定である。

 だが、俺の予想とは違いおばちゃんはどうにも落ち着いていた。

 

 「ジェイ、その手には乗らないよ」


 冷たい表情を作り、俺を見つめてくる。

 なんだと…俺の策を見破っただと。

 驚愕の表情でおばちゃんを見つめる。


 「あんたはほんとに変わんないね。ほら、とっとと払いな」

 

 手の平を俺の目の前に持ってくる。

 仕方ない、作戦変更だな。

 俺はおばちゃんのその手を取った。

 そして、騎士の礼をするように片膝立ちになり、おばちゃんの手にキスをした。

 

 「な!??」


 その直後おばちゃんの拳が俺の頭部を直撃し、俺は床にキスをした。

 

 「いっつぅ…」

 

 頭を抱えながら涙目でおばちゃんを見て、策の成功を心の中で笑う。

 おばちゃんは顔を赤くし、俺がキスをした手を見てわなわなしていた。

 

 「あんたなにしてんだい!!」

 

 「いや、俺は…そう!俺はあんたに結婚を申し込む!」

 

 __!??

  

 おばちゃんだけでなく、周囲にいた人々も俺の言動に固まった。

 むむむ、やりすぎたか?

 俺の策ではどうにか食逃げの汚名を有耶無耶にするために、おばちゃんを混乱させ、さらにそれをインパクトのあるなにかできれいさっぱり忘れさせる。

 それが俺の思いついた作戦の全貌である。

 そして、インパクトのある事を考えた結果口から出たのがプロポーズだったのだが。


 なにやら、おばちゃんはまんざらでもない様子で顔を赤くしもじもじしている。

 や、やばい。。。


 俺は少し先の未来を、、、見た気がした。

 少し先の未来、俺がおばちゃんと結婚している未来を…。

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ