絶対の双子
今まで完全カイ視点で文章書いてたんですけど、前回書き方変えたらそっちの方が書きやすかったのでそのまま書きます。
文章はガタガタ
パール達が初任務が終わってからその後、5人は数件の依頼をランダムで組んでこなした。
任務にも慣れてきた彼らは、ひさびさに任務のない日を過ごしていた。
屋敷にある広々とした薔薇園で、白いアンティークの机を囲み、アニーが作ってくれたモンブランを食べながらだらだらした時間が流れていく。
カイは隣にいる二人を呆れ顔で見る。
イミルがパールに怒鳴る光景も日常になっていた。
カイの視界がだんだんと闇に包まれていく。
毎日のように任務をこなしていたため、疲労がたまっていたのだ。
そのままカイは、机にふして眠ってしまったのだった。
2時間ほどたっただろうか、カイは目をさまし、ゆっくり状態を起こした。
周りを見るとシノとパールとイミルの姿が見えない。
目の前に座っていたサラだけが、少し古びた本を読みながら横向きに座っていた。
「あれ・・・・3人はどこ行ったんだ?」
目をこすりながらカイはきく。
「パール達なら、訓練するからって、ミウの所にいったよ。イミルは嫌がってたけどね。」
視線を本から離さずサラはそう言った。
カイはそれをきいて少し焦りを感じた。
パールやシノはともかく、あのイミルも訓練をして、力をつけていく。
自分はこんな所でゆっくり眠って、2時間も無駄にしてしまったのだろうかと思ったのだ。
「サラは、行かないのか?」
動揺を消すため、半分残っていた自分のモンブランを食べながらカイはきいた。
「行かないよ。休む時は休んだ方がいいと思ってるし、正直僕は皆よりできるからね。」
微笑を浮かべながらそういうサラに、カイは苦笑いを返した。
確かにサラは今までの任務で失敗したことはなかったし、使者との戦闘も、今のところ余裕でこなしてるように見える。
とすると、訓練に行くべき人間で、行ってないのは自分だけ。
そう思ってはいるものの、訓練に行きたくない自分がカイを邪魔しているのだ。
任務をこなしても、使者との戦闘で恐怖を覚えないことはなかった。
その度に、サラに言われた言葉を思い出す。
「覚悟がない」
自分はいまだその状態から抜け出せていないのだと、毎夜考えた。
なら、他の皆は覚悟ができているのか?
頭の中でそんな考えがグルグル回っている。
「何か、思い出したのかい?」
サラの声に、カイは下を向いていた顔をハッとあげた。
「いや、何も・・。考え事してただだけだ。サラは何読んでるんだ。」
延々と続く考えを断ち切るため、カイはサラに話題を振った。
サラはしおりを読んでいたページにはさんで、本閉じ、カイの方に向きなおして表紙を見せた。
茶色いカバーの真ん中に、小さく報告書と書いてある。
「使者に関する報告と研究結果をまとめた本だよ。屋敷の図書室で見つけたんだ。」
カイは本をサラから受け取り、パラパラとめくった。
図を交えながら淡々とした文章がつづられている。
カイは本を読むのは好きな方で、図書室には何度か入っていた。
ただ、読むのはほとんど小説だったので、報告書を見たのは初めてだった。
最後のページをめくろうとしたとき、パラリと一枚の紙が下に落ちた。
拾って見ると、ミウが左端に、その横に大人の男性と女性が一人ずつ写っていた。
黒い長髪の少しきつい顔つきの女性と、ふんわりとした銀髪の天然パーマの、優しそうな男性だ。
数年前の写真なのだろう、ミウは今よりだいぶ幼い。
隣にいる2人は両親だろうか。
女性の姿が、まるで今のミウそっくりだ。
サラがそれは何かときくので、机の真ん中に置いて、一緒に見ることにした。
「へえ、ミウって、数年前までは結構色のある恰好してたんだね。」
サラがミウを指さしながらそう言う。
写真の中のミウは、シンプルな服装なのは今と変わらないが、全身真っ黒なわけではなかった。
顔つきは今と同じように凛々しいが。
「あれ、この写真切れてるね。」
サラが、女性の右横をなぞりながら言った。
カイは目をこらしてよく見ると、確かに切れていることが分かった。
一見気づかないが、普通の写真なら横も縦もまっすぐになっているはずなのに、そこだけ少し斜めになっているのだ。
「誰かいたのか・・・?」
カイは眉をひそめてそう言う。
「マイじゃない?」
一瞬カイもそう思ったが、マイがミウの姉妹なのか分からなかったため、それは違うんじゃないかとサラに話した。
サラも確かにそうだと頷く。
アニーからも、ミウは一人っ子だときいていたので、姉妹はありえないだろうとカイは思った。
「姉妹がいたら、ミウも教えてくれると思うしね。第一姿が見えないよ。」
「そうだな。」
結局分からずじまいに終わったが、正直たいして興味がわかなかったので、二人はその写真を本の中に戻した。
カイはその時、すでに別の事を考えていた。
サラとパールの事だ。
姉妹という言葉が出てきたとき、サラとパールも兄弟だと、ふと思った。
確かに外見はそっくりだ。
双子です、と言われても誰もが頷くだろう。
しかし、カイ達5人は洞窟で見つかる以前の記憶がない。
何故かそういう認識はあるとサラは言っていたが、見た目がそっくりの別人だったりしないのかとカイは思った。
ただの仮定だし、こんなに似てて双子じゃないと思う方が不自然だから、そんなことはありえないとは思っていたが。
ただ、軽く疑問に思っただけで、カイも深くは考えなかったが、サラに少し言ってみようと思った。
「なあ、俺達って、記憶がないだろ。サラがパールと兄弟じゃなかった、とかだったらどう・・」
バン!!
机の上にあった本が宙に浮き、机がブルブルと小刻みに震えた。
驚いてカイはサラを見ると、サラは立って手を両手につけ、冷めた目でカイを睨み付けていた。
サラの手には力ものすごい力が入っていて、机がギシギシと鈍い音を立てている。
カイは全身に緊張が走るのをおぼえた。
まったく身体が動かず、サラの目から視線をそらすことができない。
使者の時とはまた違う恐怖が、カイの中でいっぱいになった。
「パールが、僕と兄弟じゃないなんて事は、絶対にありえない。血のつながった、正真正銘の双子だ。それ以外の何物でも、ない。」
サラは淡々とそう言った。
カイはサラの言葉の中に、怒りや憎しみが込められているようにも感じた。
ただ、その感情はカイに向けられたものでなく、別の何かに向けられたもののように感じた。
「今度、そういうこと言ったら、喋れなくしてやるよ。」
洞窟でシノに小声でつぶやいた時と同じ口調でそういうと、サラはそのまま屋敷の中に戻っていった。
同時に身体の力が一気に抜ける。
どうやら地雷を踏んでしまったようだと、カイは後悔した。
机の上に置かれた本に、目をやると、とんだせいか、中の写真が半分はみ出ていた。
カイはそれを本の中に綺麗に戻した。
さっきのサラの顔を思い出して、少し体が震える。
サラの行為が、自分の中にあった軽い疑問を、軽い疑問ですませなくしてしまった。
どうして、あんなにハッキリと言えるのか。
サラが思っていた以上にパールに執着していることを、カイは知ったのだった。
次回からキャラ増やしていきま~す。