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UNKNOWN SOLDIER  作者: とび
6/8

度胸

グダグダ&ガタガタ。

最後めんどくさくなりましたww

カイ達三人が初任務から帰ってきた翌日、新しい依頼をミウが持ってきた。

「今回の任務は、この品をここから少し離れた所にあるルリの村へ届けることだ。」

そう言うとミウは小さな箱をイミルに渡した。

イミルはなぜ自分に箱が渡されたのか察しがついたようで顔が真っ青になっている。

「今回の任務はパールとイミルにいってもらう。」

イミルがチラッとパールを見ると、パールはギッとイミルを睨んだ。

「なんでこいつと行かなきゃなんねーんだよオ?」

「まあまあ、そう言わずに。初任務なんだから、頑張ってね。」

サラがパールの肩にポンと手を置いてそう言うと、パールは仕方がなさそうに屋敷の扉に向かって歩き出した。

イミルもそれを見て慌てて歩き出す。

「依頼品壊すんじゃないぞー。」

そう言うミウとカイ達に見送られて、二人は屋敷を出たのだった。


「えっと····パール、あれ西門じゃないかなあ···?」

「見りゃわかんだろオ?!分かりきったこといってんじゃねエ。」

イミルを怒鳴るパールの声が大きいため、周りの市民達の視線が二人に集中する。

パールは物事をハッキリさせる事を好む。

訓練中の1ヶ月、何を言っても曖昧な言葉しか返さないイミルに不満がが溜まっており、苛ついてしょうがないのだった。

「ご、ゴメン····。あ、あれマイじゃないかな?」

イミルが指を指した方向、つまり西門の前だが、そこにマイが立っていた。

「姿見りゃわかんだろオ。」

パールはイミルを睨むと速足でマイの所へ向かっていった。

イミルもそれに遅れないよう小走りで、でも間隔を縮めないように少し距離をあけながらついていくのだった。

マイが何故ここにいるのか尋ねると、やはり二人だと少し危険かもしれないから、と、マイをつけるとミウが決めたのだと話した。

「だったらこのウジ虫と替えてくれりゃいいのによオ。どっちもヒーラーなんだからなア。」

ウジ虫とはイミルのことだ。

いつもウジウジしたイミルを見てパールがつけたあだ名だった。

「ミウが言ったから来ただけ。あくまでも二人の任務だもん。援助しかしないから。」

そう言うとマイは少し不満そうな顔をして、先にシールドを出た。


マイは信頼している相手以外にはなかなか心を許そうとはしない。


彼女の中で信頼の頂点にいるのがミウだった。

パールも大きなため息をして、イミルも小さなため息をして、シールドの外に出た。

外に出ると、マイは既に離れた所まで進んでいた。

「あわわ···はやく追いつかなきゃ···。」

「アイツ、一緒に行く気アンのかよオ···。」

パールは舌打ちをすると、足の遅いイミルの腕を掴んで地面を蹴った。

パールは五人のなかでシノと並んで跳躍力が優れていた。

なので、一蹴りしただけでなんメートルも先へ行くことができるのだった。

運動神経の鈍いイミルは、当然の如く、突然の宙に浮かんだ状態にバランスを上手くとれなくて、手足をバタバタさせるのであった。

マイも身軽さは負けていない。

木から木へピョンピョン移っていく姿は、足に小さな羽がついているかのようだ。

「パ、パール!高すぎるよお!」

「うるせえエ!お前のナメクジみてえな速度に合わせてたら今日中におわんねえよオ!」

パールはイミルにまた怒鳴り付けながら、少し驚いていた。

イミルが余りにも軽いことに。


重さを感じないわけではないが、人としてここまで軽いのは少し異常に思えた。

(小食だとは思ってたけどよォ・・それだけでこんな軽くなんねーよなァ・・・?)


イミルを見ながらそう思っていると、涙目のイミルと目があったパールはやはりイラッとした。


(やっぱこいつうぜえェ!)


いやがるイミルを無視して、パールはさらにスピードを上げるのだった。




「おい、ついたぞォ。はやく立てよォ?置いてくぞォ。」


「う、・・・・・・・うん・・・・。」


空中で揺られたせいで、イミルは座り込んで口に手をあてている。


ルリの村は半日あれば簡単にまわれてしまうほどの、本当に小さな村だった。


どの家も木造で、農場が広がっている。


「依頼品を渡す家はここ。はやくして。」


マイはまた一人で先へ進んでいった。


イミルは何とか体調を戻して立ち上がると、ゆっくりとマイの後をついて行った。


(こいつゥ、やっぱ向いてねえだろォ。)


そう思いながら、パールもその後をついて行くのだった。




コンコン、とマイがドアをたたくと、中から子供の声だけがきこえてきた。


「だあれ?知らない人はお家にいれちゃダメって、ママとパパに言われてるの。」


パールもマイもそれに応答しようとしない。


二人は子供が苦手だった。


パールはむしろ、子供が嫌いだった。


少しの沈黙が流れて、イミルは二人の様子に気づいた。


「あのね、僕達は、君のお父さんからプレゼントを預かってるんだ。受け取ってくれる・・?」


「パパ?」


キイっと小さな音を立ててドアが開いた。


中から出てきたのは、7歳くらいの女の子だけだった。


家の中のベッド、机、椅子の数から、どうやら一人で暮らしているらしい事を三人は知った。


イミルが依頼品を女の子に渡すと、女の子はすぐに箱を開けた。


中に入っていたのは小さなオルゴールだった。


それを見てキラキラ目を輝かせると、女の子はイミル達に中に入るよう言った。


「はい、紅茶。あたし、ミミっていうの。今日はありがとう。」


座る椅子が一つしかないので、三人とも座らず机の周りにたって紅茶を飲んだ。


「ミミちゃんは、一人で暮らしてるの?」


「うん。パパはメイカーっていうお仕事で、おっきな街でオルゴール作ってるの。だからたまにこうやって送ってくれるの。ママは、ここを守るために教会に住んでるの。ヒーラーってお仕事なんだって。」


グランドシティにも大きな教会がある。


そこにいるヒーラーは常にシールドを張り続け、街を守っているのだ。


ずっと力を使っているため、体力も精神も消費が激しい。


ルリの村も同じであった。


「ママは近くにいるのに、なかなか会えないの。すごく疲れるお仕事なんだって。」


ミミは少し下を向いて、悲しそうな顔をした。


親に甘えたい年頃に、一人で暮らさなければならないミミをとても不憫に思ったイミルはミミの頭をソッと撫でた。


「僕も、このお姉ちゃんも、ママと同じヒーラーのお仕事してるんだよ。ミミちゃんのママは、その中でもすごく大変なんだ。だから頑張れって思ってあげて。」


ミミはコクンとうなずいて、イミルの手に触れた。


「お兄ちゃんの手、すっごく優しいね。羽みたい。」


イミルはそういわれて嬉しかったのか、頬を少しピンクに染めて照れくさそうに笑った。




「優しいお兄ちゃんも、かわいいお姉ちゃんも、かっこいいお兄ちゃんも、ありがとう。頑張ってね。」


「うん、またね。」


言葉を返したのはイミルだけだったが、マイはかわいいと言われてミミにニコッと笑った。


普段からあまり接することがないゆえに、少し苦手だと思い込んでいるだけで、マイは子供が嫌いなわけではないのだ。


パールは当然という顔をして澄ましていた。


手を振りながら、イミルとマイが家を出ると、パールはミミに小声でささやいた。


「おい、あの優しい兄ちゃんの手は、本当に羽みたいな軽さだったのかァ・・・?」


「うん!」


パールは手を少し口に当てるようにして、少し難しそうな顔をすると、


「ありがとよォ。」


と言って二人の元へ歩いて行った。

「さてェ、任務完了だしィ、さっさと帰えんぞォ。」


パールはぐっと背伸びをした。


横目で見ると、イミルはニコニコして満足そうにしていた。


「お前ェ、ああいうガキが好きなのかァ?」


パールがそう言うとイミルは少しムッとした。


「ガキって言葉はよくないんじゃないかな・・・・。」


が、やはり強く、はっきりという事ができず控えめな言い方になってしまう。


パールはまたイラッとして舌打ちをした。




シールドを出ると、先に出たマイが待っていた。


マイがジッと自分を見ていることに気付いたイミルは、少し困ったように微笑を返したが、すぐにマイは目をそらしてしまった。


それを見てイミルはガッカリした。


マイは見た目がかわいいとグランドシティ内で有名だった。


そしてイミルも、そう思っている内の一人であった。


訓練中ずっとマイからヒーラーの訓練を受けてきたが、引っ込み思案な性格ゆえになかなかマイと話をすることができなかった。


マイもあまり口数が多いタイプではないし、サラが質問する事柄に応答するくらいだった。


訓練以外の時間は常にミウにピッタリで、なかなか近づけないのだ。


ただ純粋に、話がしてみたかった。


そうこうイミルが考えをグルグルさせている間に、マイはまたイミルを見ると、屋敷に戻ろうと話した。


「おォ?今度は勝手に一人で行かねえんだなァ。」


「のたれ死なれると困るだけ。そんなことでミウに怒られるのはいやだもん。」


マイはプイと後ろを向く。


「そんな事とはなんだよォ?!」


殴る手をつくって怒鳴るパールを無視して、マイは木に飛び移った。


パールも文句を言いながらまたイミルの腕をつかみ木に飛び移り、マイの後を追いかけ始めた。


「くっそ!むかつくヤツばっかだなァ!!」


「パール・・・!!振り回しすぎだよお・・・。」


パールが怒りにまかせてとぶため、揺れすぎでイミルは目が回り始めた。


「あ・・・この気配・・。」


突然マイがとぶのをやめて下に降りた。


パールはなぜそうしたのか分からずとりあえず下に降りる。


「おいィ、どうしたァ?」


マイは口に人差し指をあてて静かにするよう目でパールに訴えた。


パールとイミルももそれを見て、これから何が起こるのかを悟り、武器をだして身構えた。




ブブ・・・と音を立てて扉から使者が何体も出てくる。


マイはシールドを自分の周りに張り、姿が見えなくなった。


ヒーラーは基本、シールドの中からパートナーを回復させる。


シールドを張るのはその間に使者に攻撃されないためだ。


「おい!てめえはシールド張らずに戦えェ!回復はあの女がやってくれんだろォ!」


「う、うん・・。」


使者が叫びながら二人をを囲もうとするのを、パールはイミルを手で横にドンと押した。


イミルが使者の輪から離れたのを確認したパールは、そのまま木に飛び移った。


「さあてェ?お楽しみの時間だなァ!!」


「キイイイイイイ!!!!」


パールは剣を持った両手を横に広げると、そのまま向かってくる使者の方へ、勢いよく回転しながら落ちて行った。


刃が仮面に当たって次々に使者が消えていく。

パールはその秀でた戦闘能力をミウとアニーにとても評価されていた。

それに加えて本人は戦うことを最大の楽しみと考えているため、ゲーム感覚でどんどん実力を上げていった。

「よっとォ。」

パールは地面に足をつけると、剣を交錯させて使者にニヤリとした表情を見せた。

「お前らに血がありゃ剣についたのを舐めたりできんのによオ。もうちっと楽しませてくれても、いいんだぜェ!!!!」

パールはそのまま使者の群れの中に突っ込んで笑いながら戦い始めた。


イミルはその群れから外れてきた少数の使者と戦っていた。

イミルの武器は一見ただの腕輪にしか見えないが、戦闘時は腕から外れて一回り大きくなる。

そしてイミルの意思で形や大きさを変えることができるのだ。

基本は本人の回りに浮かんでいるため、防御にもなる。

「え、えっと····。」

イミルは心の中でリングの形状を刃物状に変えるよう唱えた。

周りに浮かんだ全てのリングの先が尖り、そのまま仮面を貫いていく。

たとえ攻撃が当たらなくても、イミルの意思で方向を変えることは容易であった。

「お、終わったかな···?」

キョロキョロ周りを見回して、使者がいないことを確認したイミルは、パールにに加勢しようとした。

瞬間、目の前をナイフがカスって前髪が少しハラリと落ちた。

イミルは驚きと恐怖で体から血の気が引いていくのを感じた。

ナイフは使者の仮面に当たっていた。

横から近づく使者に気づかないイミルを助けるため、とっさにマイが投げたのだ。

マイはフアイターとしての紋章は持っていないため、自分の武器というものを持っていない。

何かあったときの護身用にと、ナイフをミウに教えてもらっていたのだ。

「あ、ありがと···!!」

シールド内のマイの姿は見えないが、マイはコクンと頷いた。


ズク···と空間が歪んだ。

マイは何が起こったのかすぐに理解すると、二人に向かって叫んだ。

「はやく倒してえ!!その使者、ランク2に変わろうとしてる!!!」

パールとイミルは目を見開いた。

急いでパールがその使者の元へ向かおうとするが、かなり上空にいて間に合いそうになかった。

「くっそォ!!!」

使者が形状を少しずつ変え始め、パールが諦めかけた時だった。

ピタッ、と、使者の動きが止まった。

ランク2になろうとする使者だけでなく、全ての使者が動きを止めたのだ。

実際には、止められたが正しい。

「間に合った···!」

イミルが手を前にかざして息をあらげている。

これはイミルの力だったのだ。

イミルの能力は、特定の物の時間を止めることだった。

パールはそのまま上空の使者を仮面ごと切り裂いて、残った使者も全て倒した。

マイはシールドをとくと、イミルに駆け寄った。

イミルの呼吸のスピードは更に上がっていく。

「もう力を使うの止めて。意識なくしちゃう。」

イミルは手をゆっくり下ろすと、膝から崩れ落ちてしまった。

全身に冷や汗をかいている。

「こいつが力を使ったのかァ····?」

ヒーラーやフアイターが使う能力は、一度使うだけで精神の消費が激しい。

通常攻撃より強力なため、使いどころが肝心なのだ。

上手く能力をコントロール出来るようになったとしても、意識が保てるのはせいぜい5回が限度だろう。

まだ使うことに慣れていないイミル達にっとて、戦闘に障害となりうるものであった。

下手をすれば、命に関わる。

(こいつウ···意外と···。)

それにも関わらず能力を使ったイミルにパールは少し感心し、同時に呆れた。

フッとため息をつくとイミルを背中に乗せた。

「パ、パール!?いいよ、降ろして····。」

「立てねえウジ虫は黙ってろォ。本当にここに置いてくぞォ?!」

イミルはそれは嫌だというふうに黙った。

マイも、イミルがパールにおぶってもらうことに賛成した。

「グランドシテイは目の前だから、歩いていこ。」

マイはパールと一定の距離を保つように前を歩いた。

正直パールは、イミルの軽さからとんだ方が速いと思っていたが、風に当てると良くないだろうと、歩くことにしたのだ。

「パール···その、パールって結構優しいよね··?」

「ああ?何いってんだテメエェ。」

イミルはエヘヘと、少し笑う。

「その···普段怒鳴るし、怖いって思う面多いけど···部屋で訓練の様子きいてきて、さりげなく助言してくれたり、今日だって、僕を担いでとんでくれたし、さっきも、なるべく使者の群れから遠ざけようとしてくれたり···。今もこうやってくれてるし。」

パールの体温がどんどん上がっていくのを感じたイミルが、パールの顔を見ると、顔を真っ赤にしていた。

「見てんじゃねえェ!うぜえなァ。」

パールはフイろとそっぽを向いてしまった。

「僕···正直パールに凄く嫌われてるんだって、最初会ったときから思ってたんだ···。」

「···俺はァ、別に嫌いな訳じゃない。」

それをきいてイミルは嬉しくなった。

嫌われていると思っていたため、今日の任務では見捨てられるだろうと思っていたのだ。

「ただ、見ててイライラすんだよォ。」

「ええ、やっぱり嫌われてる···?」

「やっぱお前うぜえェ。もう喋んなァ。」

イミルは頭に鉛が落ちてくるような気分になった。

背中でため息をつくイミルをチラッと見て、パールは少し笑った。

イミルが能力を使ったとき、そんな度胸がこいつにあったのかと心底おどろいていた。

普段からビビりまくりのウジ虫には使えないと、ずっと思っていたからだ。

(そこまでウジ虫じゃなかったって事か····?)


安心したイミルは、急な眠気に誘われて眠ってしまっていた。

パールは背中から寝息が聞こえてくると、勝手に人の背中で寝ているイミルにまたイラッとするのだった。


(イミルにも度胸があった、かあ···。パールのイミルに対する感情が少し変わったね。)

マイは心の中でそっと呟くのだった。



























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