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UNKNOWN SOLDIER  作者: とび
5/8

初めての任務

続きです。

ガタガタ文章あしからず。

ミーンミンミンミンミンミーン・・・


「あぢー・・・・初任務がこれかよ・・・。」


「しかたがないね、季節が季節だから。」


「サラだけ何故か涼しそうだな・・。」


「そう?カイは死にそうだね。シノはもっとそうだけど。せっかく夏用の服をもらったのにね。」


今日は俺達の記念すべき初任務・・・だが最悪のタイミングで依頼を受けてしまったようだ。


あれから一ヶ月たって、それなりの戦闘能力を身につけ、能力も使えるようになった俺達は、正式に依頼を受けられるようになった。


だが5人一緒にいつも組むわけではなかったようで、依頼の内容や難易度に応じて、屋敷のメンバーでランダムに組んでいくことになった。


まあ屋敷のメンバーといっても、ミウとマイ、それと俺達5人だけだけど。


そして今日の任務は、俺とシノとサラで行くことになった。


今の季節が相当暑いとのことで、夏用のファイタ―の制服(制服はあるがあまりつかわれていないらしい)をもらったはいいが、正直あまり効き目があるように思えない。


いや、ここの夏が暑すぎるのか・・・。


「今回の依頼内容なんだか覚えてるやつ!俺に教えてくれえ!」


シノはガバッと両手を上にあげて言った。


「シノ、話きいてなかったのか・・・。」


「あ、暑さで忘れちまったんだよ!!」


少し呆れ顔になりつつ、サラは依頼内容を説明してくれた。シノのために。


「今回の依頼は、グランドシティの南門を出た先にあるフロラという花を採ってくること。薬の材料なんだってね。依頼主は薬屋をやってるアリア・ドネさんだよ。確かこの南街道に薬屋があるはずだね。」


「へっ?戦うんじゃねーのかよ。つまんねー。」


闘うことを期待していたシノはがっくりと肩を落としてしまった。


「いや、シールド外に出るんだから、いつ使者が現れてもおかしくない。戦闘になるかもしれないから用心はしておかないとな。」


そういうとシノの目が輝きを取り戻し、早歩きになって南門の前で立ち止まった。


手を振って早く来いとうるさい。


南門の前に来ると、少し心臓の鼓動が速くなった。


大丈夫、戦う術は身に着けたんだ。シノもサラもいる。


一人ではないんだ、そうわかってはいても、やはり使者の事を思い出すと怖くなるのは変わっていない。


「カイくん、怖いのかい?」


小声でサラが囁く。


見栄をはってもしょうがないのでそうだと伝えた。


「それが当たり前のリアクションだね。まあ、程々に緊張感は持っていた方がいい。恐怖に負けなければ、ね。」


そういうサラの、門前でニヤニヤしてるシノを見る目は冷めていた。


確かにシノには緊張感の欠片もない。


「うっしゃあ!行くぞ!」


シノはさっさと門を通り、シールドを抜けた。サラもそれに続く。


俺は胸をなでおろし、右手を前に出す。


シールドにふれると指先が見えなくなった。


この先が安全ではない別の世界につながっているようだ。


いや、つながっているが正しいのか。


俺は目をつぶり、思い切ってシールドを通り抜けた。




少し涼しい・・・・。


シールドを抜けた先は俺達が最初に洞窟を出たときに通ったような森と同じだった。


やはり木がたくさんあるところの方が涼しいな。


シノはずかずかと進んでいく。


だが俺はミウから渡された地図とシノが向かっている方向が違うことに気付いた。


シノの腕をガシっとつかんで正しい方向に連れ戻した。


シノは勝手に行動するから、ちゃんと見ておかないと・・・。


「この森を抜けた先に、フロラの花畑があるよ。そんなに距離ないし、意外と


 すぐ終わるかもね。」


「ああ、そうだといいな。本当に。」




シノを先頭に5分ほど歩いた。


「カイくん、あれから何か、思い出した?」


俺はハッとした。


そういえば、あれから一切何も思い出していないし、すっかり忘れていた。


「ああ、何も・・・ん?あれからって、俺記憶の事話したっけ?」

ニヤっとサラが笑った。


「何か思い出してるんだね?」


!!


俺はうまくサラにのせられたのか・・・。


「・・・・まあ、記憶なのかは、よく分かんないけど。別に隠してたわけじゃない・・・。」


「へえ、5人もいればやっぱ一人くらいいるかとは思ってたけど。それで、その記憶みたいなのってどんな・・・・。」


ズシ・・とその場の空気が重くなった。


「おい!!来たぞ!」


周りから扉が現れ、使者が出てきた。


最初に襲ってきたやつと同じ姿をしている。


「話は後だ、サラ。やるぞ!」


「そうだね!」


手をバッと前にだし、現れた剣を握った。


シノもサラもそれぞれの武器を出して戦い始めた。


「どらあ!!」


シノは完全接近戦派の武器だ。


使者との距離をギリギリまでつめている。


あてずっぽうで必ず攻撃があたっているわけではないが、元からこぶしの勢いが良くて当たった時の相手のダメージは大きい。


それに、体重を感じさせないかのような軽やかな動きをしている。


「ひゃひゃひゃひゃあああ!!!!」


「くっ・・・!」


使者が突進してくるのを俺は剣で必死に受け止めた。


見た目はただの肉の塊、剣を通して感じられるほど柔らかいくせに、抑えるのに精一杯というほどの力だ。


俺は剣を握っている両手に力を込めた。


「なめんな!」


剣で力強く使者を突きはなし、使者の仮面に剣をさした。


パキパキ・・・・と音をたてて仮面にヒビが入り、使者は悲鳴を上げて消えた。


倒した、という安心感から身体の力が抜ける。


だが使者は一体だけではないのだ。


使者は一体倒せば終わりではない。


仮面を壊された使者は形を失うだけで、力の源は一定時間の間残ってしまうのだ。


そしてその残った力を他の使者が取り込むことで、使者は力をため込んでいく。


力が一定量溜まると、力も知能も発達した新たな姿に生まれ変わってしまうらしい。


だから、はやく他の使者も倒さないと・・・!!!


俺が振り向いた瞬間だった。


目の前に何の感情も感じ取ることのできない、薄気味悪い微笑を浮かべた顔が迫っていた。


「しまっ・・・!!!!」


はやく防御しなければならないのに、身体がかたまって剣を握った手が動かない。


怖い怖い怖い!死ぬ!


ザン!!!


「サラ・・・。」


「カイ君、大丈夫かい?」


目の前にいた仮面はサラの大鎌によって消えた。


助けてくれたお礼を言おうとしたが、まだ緊張が取りきれず、声がうまくでない。


「今は倒すことに集中して、ね?」


そういうとサラは他の使者を攻撃し始めえた。


サラはイミルとヒーラーメインの訓練を受けていたから、ファイタ―の訓練は俺より厳しくやっていないはずなのに、とてもそうは思えない戦い方をする。


なぜあんなにも、使者の動きに敏感に反応して動けるのだろうか。


シノもサラほどではないがさっきの俺のようなヘマはまだしていない。


「・・・・。」


頭をブンとふって、今は戦うことに集中しろと余計な考えを振り払った。


「シノ!加勢するぞ!」


サラより多く使者に囲まれて闘っているシノの方へ、俺は走って行った。






「だあー!!終わったああ!」


シノはドスンと手をついて座りこんだ。


シノの近くに俺とサラも集まる。


何とか全ての使者を倒すことができ、緊張していた身体の力が一気に抜けて俺も座り込んでしまいそうだ。


だがシノのように座ると土が服についてしまうので足の力は抜かないようにした。


せっかく新品をもらったのに汚したくはない。


「がー!あっちい上にすげえ動いたからさらにあちい!!」


シノは手でパタパタと顔を仰ぐ。


俺も汗だくだし、シノみたいにしゃべる気力もあまりない。


「お疲れ様だね。」


サラがにっこりしながら俺を見た。


サラの顔を見て、さっき助けてもらったお礼を言えなかったことを思い出した。


「あ、えっと、サラ。さっきは助けてくれて、ありがとな。」


「ああ、別にお礼言われるほどの事でもないよ。でも、言いたいことはあるね。」


サラの顔から笑顔が消え、少し目つきがするどくなった気がした。


「敵を一体倒したからって、安心しすぎじゃない?他にもまだいるって分かってるのに、まだ知性のほとんどないランクの使者に隙を突かれるなんて、戦ってるって自覚、あるの?」


「あ・・・・。」


何も言い返せなかった。


厳しい訓練を受けて今ここにいる俺は、戦闘力は上がっていても、使者に対する心の持ちようは初めて使者にあった時とあまり変わっていない・・・事は自覚していた。


いつも恐怖心が身体を制御してしまうことも、使者との戦闘を模した訓練で分かってはいた。


そのたびに、アニーに静かな怒りを向けられたし。


「もう訓練じゃないんだから、いつでも死と隣り合わせの戦いをする覚悟を持たないと。この先も、さっきみたいなことになるよ。」


サラは小さくため息をした。


「まあまあ!初戦だったんだからこーいう事もあるって!サラもきつくいいすぎじゃねー?」


シノは勢いよく立ち上がってそういうと、俺の肩に手をポンと置いた。


ニカッとしたシノの笑顔を見て、少し安心した。


「まあ、そうだね・・・。ごめん、ちょっといいすぎたよ。」


サラは俺に近づき手を差し出した。


俺はその手をゆっくり握り、握手をした。


和解の意味だったのだろうか。


「それじゃあ、フロラの花畑、もう目の前だし、さっさと採って帰ろうか。」


「ああ。」


「そーだな!」


そう言うとシノは俺の腕をガッシリつかんで花畑の方へ走り出した。


後ろにいたサラがその場で腕組みをして、


「ったく・・・覚悟もできねえガキが・・・。」


なんてつぶやいたことを、俺は知らない。


続く

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