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収集4

同日午前八時三十二分 情報堂会議室


人が出払った会議室には、イチリとニータだけが残っていた。

二人は向かい合う形で座っている。

壁のほうを見やり、何か心配そうに一点を見つめ続けるイチリに対して、ニータはいつものような厳格な態度を捨て、古き良き友人として話しかけた。


「で、なにを心配してんだ。ボス。」

暫く続いた沈黙を破ったニータは、私に優しく問い掛けた。

「やっぱり、ニータにはばれてしまいますね。」

私は笑って答えるが、答えになっていないことは自分でもわかる。

私のその態度を、「答えたくない」と受けとったのか、ニータはデスクに頬杖をついて、拗ねたようにそっぽ向いた。

そして、そのままの体勢で言う。

「あいつらの事を心配してるなら、らしくねぇな。あいつらはそんなにヤワじゃねぇ。心配するだけ損だぞ。」

確かに私はいま心配している。

だが、それは情報堂のメンバーに対してではない。

ニータが言うように、彼らは心配されるほど弱くないし、なにより私は彼らを信じている。

私が心配しているのは、別の事だ。

「彼らの事は心配していませんよ。」

ニータにはそれだけ伝えるが、やはり何か隠している事はわかったようでまた拗ねてしまった。

「ごめんなさい、今は言えないの。」

フォローのつもりで言ったのだが、逆にカチンとさせてしまったようだ。

「今は、なら、いつか言えよ。」

そう言って拗ねる様子は、子供のようで、彼の容姿とは正反対だ。

「フフフ…」

それがなんだかおかしくて、笑ってしまった。


そのすぐ後に、静かな会議室に微かな振動音が聞こえてきた。

デスクに立てかけてある携帯をみやるが、なにも変化はない。

どうやら私の携帯ではないようだと思うと、ニータがジャケットの内ポケットから携帯を取り出した。

「おっと、サンヤからだ。」

そう呟いた後立ち上がって、部屋の隅に移動してから電話にでた。

「ああ、サンヤ、どうした。」

離れた私の場所からも微かに聞こえるほどの声が、電話口から聞こえてきた。

「おい、落ち着け、デカすぎて聞こえねぇよ。」

相当大きな声だったのか、ニータは電話を耳から少し離して会話を続けた。

サンヤが大きな声で電話してくるときは、危険な状況におかれている時か、何か面白い情報を入手した時だ。

ニータの様子から察するに、何か面白い情報を入手したのだと思われるが…

サンヤの『面白い』は、いつも厄介事なのだ。


「あぁ!?そりゃ本当か!」

突然上がったニータの大声に、ただならぬ予感を感じて思わず立ち上がってしまった。

「ああ…わかった、伝えておく。」

ニータは最後にそうとだけ言って電話を切った。

「どうしたの?」

携帯をしまいながら戻ってくるニータに、立ち上がったまま問うと、手で「座れ」と促された。

私が座ったのを確認し、自分も座ると真剣な眼差しで話し始めた。

「サンヤが空港で永地の車を見た。」


永地。

その言葉に、嫌な予感を感じた。

永地組とは、長谷川組と同じく暴力団の組織で、敵組にスパイを送り込むことで得た情報を使い利益を奪う、そちらでは珍しい頭脳派な組織だ。

「関係はないかも知れないが、ついこの間、長谷川の画商から莫大な売り上げ金が盗まれただろ。もしかしたらって考えると、こりゃ大抗争の予感だよな。長谷川佑乃と組の関係にも関わってたら面白いって、サンヤは言ってるが…。」

ニータはそこまで言って、一息つき、私の反応をうかがった。

「…」

私は特に言葉を返すでもなく、沈黙を押し通していたが内心では心配が膨らんでいた。

「…なるほどな。」

私の反応に、何かを感じたようで口元に笑みを浮かべたニータは確信したように言った。

「ボスが心配してたのは、長谷川佑乃だったか。」

表情を読まれた事にドキッとしてしまい、それが逆に証拠となってしまった。

ばれてしまった以上、隠す事もないと思い開き直って言った。

「さすがですね、ニータ。」

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