明日も採血
気が付くと、僕は自分の病室のベッドに寝かされていた。
既に日が昇り、完全な朝になっていた。
周りを見渡すと、金沢が僕を心配そうに見つめていた。
「大丈夫ですか?」
僕は金沢の顔を見たが、驚くことも恐怖することもなかった。むしろホッとしたくらいだった。
「えぇ、大丈夫です」
僕がそう返事をすると、金沢は嬉しそうに採血の道具を僕のベッドに置いた。
「それじゃあ、小田さん。採血しますねー」
金沢は、僕のベッド脇に来て採血の準備を始めた。前々日やその前の日と全く同じ様子で。
この日の金沢は、サックスブルーで、可愛らしい丸衿になっているワンピースのナースウエアを着ていた。前下がりのワンレングに軽くウェーブが掛かっていて歩く度にセクシーに揺れて、派手なグラビアアイドルのような顔立ちにガーリーな化粧を施し、男達を振り向かせる笑顔を振り撒いていた。
「はーい、採血してくださーい」
僕は、異様に明るい声で金沢を受け入れて、金沢のされるままに採血されていた。そして、僕は肝心なことを金沢に訊いたのだった。
「今夜も『あれ』をいただけますか?」
すると金沢は、にこやかに笑って答えた。
「えぇ、いいわよ。あんなものでよかったら」
そして、金沢も僕に訊いた。
「あたしにもいただけるかしら?」
僕はゆっくりうなづいた。
「えぇ、どうぞ」
金沢はポケットから更に採血管を二本、取り出した。そして、僕と金沢は顔を見合わせてほくそ笑んだのだった。
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※ この物語はSFであり、ホラーではありません。また、実在の人物、団体、事件等には一切関係ありません。